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忍び寄る影

暫く寝顔を見た後、あの三人の所に飛んだ。外は真っ暗で、何処までも続きそうな闇に、少しの恐怖すら感じ取った。


空にはまだ星や月が輝いていて、それが救いだった。そして地上には何とか保っている、という感じの二件の家から見える光。


それも俺を此処へと戻らせる物だった。両方に明かりが灯っている所を見ると、それぞれの家に帰っているようだ。


「こんなに冷たくなるまで外を歩き回って、この馬鹿が」


そういうなりの前には、既に床に着いているおさなが居る。


その寝顔はとても穏やかな物で、そしてそれを見る成の表情も落ち着いている。


分かっているのだ。成だって幼の気持ちを誰より分かっている。だからこそ歯がゆいのだろう。


きちんと幼に布団を掛け、ため息を付いているのが、肩の動きで分かる。


こんなご時世に生きているのがやっとな状況で、何かを護る為に生きている。


こんなにも幼い連中がそれを背負わされているのだ。そう思えば、俺だってそれを見ているのは辛い。


「両親は、お前の方が力が強いと言っていた、俺だってそれは分かる、だからこそ早く覚醒をして欲しいんだ、砂希羅さきらを護る為に三人で生きていく為に、必要な力なんだ」


寝て居る幼に話しかけるかのように独り言を呟く成。その言葉に、とても大きな物を感じ取れたし、どれだけその日を待ちわびているか、それも良く分かった。


しかし困った物だ。覚醒なんて本当に人それぞれで、絶対この年って言うのはないのだ。


だからこそ成も煮え立っているのだろう。強制で出て来る物でもない。こればかりは、どうしようもないのだ。


「本当に参った、これではぜんの寿命では足りないかも知れないな、三人とも確実に覚醒を終えさせ、更には能力の応用を極め、武器とも馴染ませなければならない、と」


単純に考えても、年単位で必要になる。だが膳は長く見ても一年。


それだけ生きる事が出来れば十分なんだ。このままいくとなると間違いなく足りない。


こちらが攻め入る前に、また『都市とし』に襲われて、滅んでしまう。


だが、これだけの能力ちからを持っているものを易々と殺されるわけにはいかない。


奴らは癒しの者を、そして俺は膳とあの三人を護る。それが役割。


「どうすればいい、これから一体」


頭を抱えてしまいたくなる。問題が大きすぎて、重すぎる。空にてそんな事を考えている内に兄弟の家の明かりは消える。


砂希羅の家はまだ明るい。何をしているのだろう。砂希羅も覚醒済みとはいえ、まだ肝心なものが目覚めていない。


癒しの者として、一番肝心なものが、まだ眠ったままだ。ふと、三人以外の気を感じ取る。


とはいえ生者の物ではない。油のような、オイルのようなこの鼻に突く匂いは忘れるはずが無い。


『都市』の者が近付いてきている。真っ黒な衣類で闇に紛れて近付く。早速捕らえに来たのか。


俺は意識を集中する。どうやら奴らは砂希羅の家の後方から来ている様だ。


「やっぱりいやしの者か、狙うとしては正しいな」


静寂の中、家の窓を割り連中は侵入する。物が落ちる音。


「なにをする!」と叫ぶ砂希羅の声。俺が助けに行こうとしたとの時、連中と砂希羅が玄関から出てくる。


連中は三人。砂希羅を捕らえている者達と闇に潜んでもう一人。外に出て砂希羅の声は闇に響く。


「離しなさい!こんな事をして何になると言うの!」


その声に対して『都市』の者達は何も反応をしない。やはり、俺が昔倒した奴と同じなのだ。


俺は連中に手を翳す。と。その時、兄弟の家から物音がした。目をそちらにやると、幼が家から出てきた。



「砂希羅、どうかしましたか?」


ゆっくりと砂希羅の方に歩む。どうやら寝ぼけているようだ。


『都市』の者達が幼に反応する。捕らえるつもりなのだろうか。


「幼逃げて!成を起こすのよ!早く!」


砂希羅の悲痛の叫びを前に、幼は歩みを止める。そして少し立ち止まり、回れ右をして家へと向かう。


だがその時、闇に紛れていたもう一人の『都市』の者が幼の後頭部を強打する。幼はその場に倒れこみ、意識を失った。


「幼!何て事を・・・!あなた達、子どもにまで手を挙げるなんて」


『我等の務めはお前を捕らえる事・・』


そう言うと三人で砂希羅を捕らえ、布を口へと当てる。どうやら睡眠作用の薬が染み込ませてあったらしく、砂希羅の身体から力が抜けた。幼をそのままに、去っていく。



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