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三人の視察・続

「槍・・あれが僕の武器?」


ふと、泉から呟きが聞こえた。おさながすっかり温まった泉に浸かり、呆けた頭を回転させている。


あれだけの惨事を経験した訳だからまさか自分が、その手に武器を持ち、戦いに赴くとは思えなかっただろう。


それだけは、俺だって分からないわけではない。


「僕らは、どうしてこんな思いをしなければいけないのでしょう、兄さん」


小さな声で呟きながら、幼の手の中には先ほどとは違う光が生じている。火だ。


炎があるのだ。水の中ですら揺らぐ炎。相当な能力で持ってでもないとあり得ない。


火は水で消える物だ。それが、あんなにもはっきりと、燃えている。幻想的な感じだ。


「成る程、大地の力、って事は風やら水やらもある訳か、じゃあこの泉は、まさか幼が作ったのか?」


地下水が減るたびに幼が水を足しているのだろうか。だとしたら相当な能力になる。


覚醒をしていないのに、あれだけの炎を持ち、大地の能力を操るとなると、かなり凄い事になる。


だが、本当に幼は優しい。シグマの者とは思えない程だ。覚醒をしたら、もっと戦闘能力が高まって、目つきも変わるのだろうか。


なりは、元から悪いようなイメージがあるが、あいつだって優しかった事があるって

事は、もう少し穏やかな顔をしていたのかも知れないな。


「とにかく、帰って来てもそんなに怒っては駄目よ?幼にとって貴方はまだ優しい兄っていうのがあるんだし、あの事件を、あの子なりに考えてると思うわ、でも、あの子にとってはそれまでの楽しかった記憶の方が強いのよ」


「だが、起こってしまった物はどうしようもない、あいつにもそれを理解させ、自分の立場を確信させないと」


「ふふ、成は損をする性格ね、私や幼しかもう仲間は居ないのよ?私達の前で位は、気を抜いたら良いのに、あまりカリカリするといつか倒れるわよ?じゃあまた明日ね」


家の方では砂希羅さきらが二人の家を後にした。そして直ぐ隣にある家に入っていく。


そこが砂希羅の家なのだろう。何故一緒に住まないのだろうか、なんて思うが、それも何か理由があるんだろうな。


砂希羅去った後、成はまた渋い顔をしていた。分かっているのだろう。


だが、どうしようもない今の現状を考えれば、優しさなど、何の役にも立たないと、成は分かっているのだ。


そしてそれは幼の為にもならない。だから、その厳しさに繋がっているのだろうと解釈をした。


「村を滅ぼした連中と、同じ事をしようとしているのではないのかな、僕はそんなの嫌だ」


水中の炎を手のひらで包むと、それは消える。泉に静けさが蘇る。


この三人からしたら、それ以外は敵になる。それでも幼は刃を向ける事を嫌がる。


優しさからだけではないのだろう。ただ無意味に繰り返されるそれを終わりにしたい。


自分達がそれを起こさなければ、何も無いと思っているのかも知れない。


崩壊を迎えたその時だって、何もしなくても起こってしまった争いだと、分かって居ないのか?


弱肉強食な世の中で、これだけ有力な能力を持って居る者が苦しめられて居ようとは、意外だった。


全ての能力を解き放てば、この辺りを一掃出切る程の能力を持っているのに、それに気が付いていないのが、果たして良いのか悪いのか。


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