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#2

「あれは、一体何だ?」



太陽の光で視界が霞む。嫌な揺らぎが見える。目の前で火を燃やしているようにも見える。


その奥、陽炎のように、何かが俺の目に入ってきた。黒い影。何かがある。しかし、旅に出て


極まれにそうして目に入るのは幻が大半だった。だから今回もそれだろう。


そう思い砂を掬い上げるようにして前へと進む。しかし、それは消えることが無かった。


うっすらとしかし確実に俺の目の前にそれは存在した。テントだ。所々破け、熱と風の所為だろうが古く見える。


触れてみると意外に新しいようだ。しかし誰が何のためにこんな砂漠の中にテントを張ったのだろう。


何年も経っていないのが分かった以上、この地に俺以外の誰かが存在している。


それがはっきりとした。少なくとも人だ。どんなに世界が変わろうとも、獣にはテントは張れない。


暫しその場で考え込む。落ち着く、と言った方がいいかも知れない。残り僅かな水を口へと運ぶ。


ほんの一口分の水。それだけでも死に掛けている脳みそを起こすには十分だった。気を集中し、耳を澄ませる。声は聞こえない。気配すらない。ゆっくりと歩を進め、入り口へと回り、


音を立てないようその中を覗き込む。外は明るいが、テントの中は薄暗い。それ自体が黒、いや濃い群青色とでもいうのか、余計に影が濃く見える。そして何と言っても蒸し暑い。久しぶりの感覚だ。


不思議なにおいもする。テントの匂いと中にある何かの匂いだろう。その中で食べ物の匂いもした。


誰かがまだ利用している可能性が大だ。人影は無い。今はどこかへ出ているのだろうか、それとも定期的にここに来て、何かをしているのだろうか。分からない。だが取り合えず留守中だと分かった以上は食料と水の確保がまず第一だった。テント内は狭く、大きさの異なる箱が無造作に置かれていた。


足元を見ると、砂だった。覆うだけのテントなのか、それとも強風で中に砂が攻めてきて床の布が隠れてしまったのか、それは不明だが砂だ。直射日光でない分、外よりはましだった。


真ん中に台があり、それを囲むように一片を抜かして箱が転がっていた。そこは通り道やここを使う者が座るためのスペースのようだ。台の上も物が散乱している。よく見えないが、俺にはあまり関係ない物の様だ。


口に出来ないものは今は用が無い。そこだけでなく、隣にも小さくスペースが設けられていた。


そこも箱だらけだったが、食料があった。乾パンの様な物。干飯。乾物が主だった。


それでも無いよりましだ。箱も開き、中を覗く。俺から見ればガラクタに過ぎない物が沢山あった。


元の場所に戻り、台の周りの箱を漁る。その影に砂埃を被った見慣れたものがあった。中のものは揺れ、光る。


水だった。全体を探して見つかったのは乾物が3袋。水は2リットルボトルが二本。それと飲みかけがあった。


勿体無かったが、それで水の容器の汚れを流し、自分の喉を潤した。二口、三口と飲むのはとても


久しぶりで、生き返った感じがした。固まり始めていた身体も、頭も再起動を始める。まるでオイルの切れたロボットのようだ。空になったボトルを地面に落とした。その時、後方で風が吹いた。



『貴様、何者だ!』


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