#14
遠くの方からこちらに近付いてくる複数の足音と気を感じ取った。
咄嗟に膳の後方に回る。
「どうした?ガート」
振り返り、じっとしている俺に膳が問いかけた。その時、工場奥の扉が開いた。
「あ、おはよう」膳が挨拶をした。
「よう」と続けて相手が返事をした。そこから三人の男がこちらに向かい歩いてくる。
「何だ?膳後ろに居るチマイのは?」
「ああ、この子はガート、迷い人だよ、ほらガート、挨拶は?」
膳はその三人と会話をしつつ、俺に優しく声を掛ける。
そして少し身体をずらして俺の頭を撫でる。
人にそうされるのは正直好きではないが、膳の手は嫌いではない。
息を呑み、膳の隣に並ぶ。目の前には、背の大きなガタイのいい男が、こちらを興味津々な目で見て居る。今にも手を伸ばされそうな、嫌な予感だ。
「・・・おはよう、初めまして」
膳にしがみ付いたまま、それだけ言えた。男三人は、顔を見合わせる。そして瞬間、笑った。
「チマイなあ、可愛いじゃねえか、何時来たんだ?」
「一昨日の晩だよ、僕の家で食料を漁ってた」
「はは、この世界だからなあ、仕方ない、他に生きてる村があるかも疑問だしなぁ」
「とりあえず、自己紹介をしようか、私は灼庵慄、よろしくな」
笑って俺の頭を叩く。他の二人も、続けて名乗る。
「俺は・・・腔撓・・・よろしく」
「はいはい!俺はね、壊臥肘っつうんだ、よろしく!」
代わる代わるで俺の頭やら肩やらを叩く。その勢いは膳が言った通りだった。
俺の予想を軽く超えていた。一気に疲れてしまった。