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I.魔帝国領最終防衛ラインマッザにて その1

ファンタジーの投稿ははじめてです。よろしくおねがいします。どうか楽しんでいただけましたら。

 グレードラゴンが現れた。


史上最高と讃えられる勇者アレックスに率いられた勇者パーティーは魔王クリストフォラスを滅ぼすべく魔帝国の奥深く侵攻していた。


荒涼たる大地にそびえる巨大な黒ずんだ石造りの要塞の前には塹壕が掘られ、角の付いた兜を被った魔族の指揮官に率いられたゴブリンやオークが弓矢やりを構えてこそこそとこちらの様子を窺っている。塹壕から頭を出して勇者パーティーを挑発するように声を出すゴブリンがいて、指揮官に頭を叩かれて塹壕に引き戻されたりしていた。


 その遠方には禍々しいまでに岩肌を露出した世界最高峰、深奥山脈の巨大な岩塊がそびえ立っていた。


勇者たちが要塞に向かい歩を進めようとしたところ、深奥山脈の彼方からおびただしい数の咆哮と羽音が響いてきた。


するとこれまでに遭遇したことがない巨大な灰白色のドラゴンが4枚の羽を羽ばたかせて現れた。グレードラゴンである。


ブルードラゴンやレッドドラゴンなどの全ての竜種に君臨する龍の帝王、ダークドラゴンに次ぐ存在とされ、1頭で国を滅ぼすのも容易いと言われていた。魔帝国の最高戦力としてこれまで秘匿されてきたグレードラゴンがついに勇者たちの前に姿を表したのだ。

50mを超えようという巨大な体躯。真っ赤な目はルビーのように輝き、象でも一飲みにできそうな鋭い牙が生え揃った口からは黒い炎めいたものがチラチラと漏れ出ている。

一度牙を向けば黒い炎は漆黒の溢流となって全てを焼き尽くすのである。


空を覆い尽くさんばかりの一回り小柄なブルードラゴンの大軍を率いて飛来してきたのだ。グレードラゴンの背後には空を埋め尽くさんばかりの数千のブルードラゴンやレッドドラゴンなどが飛び交っている。

グレードラゴンの来着に要塞の魔族共は心強い援軍に沸き立ち、その奇怪な歓声めいた雄叫びが大地を震わすばかりに響き渡った。


 グレードラゴンの背には一人の男が立っていた。背にまたがるのではなく、腕を組んでスックと直立していたのである。その男は2mを超える巨体に多くの角のような飾りが付けられた禍々しい漆黒の鎧を着け、鎧の上からでも鍛え上げられた肉体を持つのが見て取れた。


グレードラゴンが勇者たちの方に近づいてきた。すると背に乗った男がドラゴンの背に直立したまま兜を外すと勇者パーティーに語りかけた。蒼白な整った顔は憂いを帯びている。肩まで垂らした金髪が風になびき、男はあおい目で勇者たちを眺めると、大音声を上げた。


「勇者よ!我は魔帝国四天王ラフルル。我らが魔帝国の軍勢を打ち破り、魔帝国首都、魔都シャングラの防衛線たる、ここマッザの地まで攻め寄ってきたのは敵ながら天晴である。しかしこれから先に通すわけにはいかぬ!滅びるがよい!」


 その言葉が終わるよりも早く、勇者パーティーの後列にいた大きな体躯に深くフードをかぶった大柄な漢、大賢者ランドが素早く詠唱を始めた。


「おお、大いなる風よ、大気の精よ、今こそその大いなる力を我が為に集め……」


 大賢者ランドの詠唱が始まるとすぐに、こちらは身長こそ高いが、ほっそりとした鋭い印象の白銀の鎧をつけた勇者アレックスがランドに声をかけて前に駆け出した。


「ランド!あのドラゴンの弱点は風か!シャル、行くぞ。」


 と隣にいた魔法戦士のシャルンに声をかける。アレックスは二人の返事も聞かずにグレードラゴンの方へ一直線に走っていく。


「もう、アレックスったらせっかちなんですから。」


 と文句を言いつつも、動きやすそうな優美な曲線を持つブルーの鎧をつけたシャルンはその長い金髪をたなびかせながらアレックスに一歩遅れて進みだす。


グレードラゴンに迷いなくまっすぐ突っ込んでくる勇者をみて魔将ラフルルは叫んだ。


「貴様ら!人の話は終わっておらん!いつもいつもすぐに突っ込んできおって…たまには最後まで聞け!」


 と魔将ラフルルは吠えるが、アレックスは構うことなく進んでいく。それをみてラフルルは


「ええい、是非もない!グレードラゴンよ!漆黒炎獄ダークインフェルノで奴らを焼き払え!」


 と命ずるとグレードラゴンの口から漆黒の炎のブレスが放たれた。それにつれて周囲のドラゴンの群れもブレスを一斉に勇者パーティーの方に放つ!するとシャルンが盾を前にかざして詠唱する。


完全空間防御壁コンプリートディフェンスウォール!」


 するとシャルンの前に巨大な光り輝く円盾が現れ、次の瞬間視野を埋め尽くさんばかりの大きさに広がった。輝く盾はドラゴン共のすべてのブレスを弾き返した。


弾き返されたブレスは、あるものは勇者パーティーの眼前の大地に撒き散らされ魔王軍の兵どもを焼き払い、あるものは上空を飛ぶドラゴンどもに直撃して撃ち落とした。


 光り輝く円盾に目がくらんだ魔族共がどうにか視野を取り戻したとき、勇者アレックスはシャルンの盾よりもはるか前方に進んでいた。


「馬鹿め!自ら盾の前に出てくるとは!集中してブレスを浴びせるのだ!」


 とラフルルが命じ、グレードラゴンの巨大な漆黒の柱のようなブレスと、周囲の無数のドラゴンたちの炎のブレスがアレックスに向かってまっすぐ飛んだ。


 ブレスはまさに収束したかのようにアレックス、ただ一人に直撃し、巨大な火球となって円盾の前で爆発する。


「勇者ともあろうものが迂闊なものよ!このグレードラゴンのブレス、他の龍のものとは威力が数千倍は違うのだ。マッザの要塞も一息で溶かし尽くす程にな!」


 と勝ち誇るラフルル。しかし爆発の硝煙が消え去ると、そこには何事もなかったかのように勇者アレックスが立っていた。

「当たらなければどうということはない!」

「どうみても当たっているだろ!ふざけるな!」


 と吠えるラフルル。アレックスは


「この程度の攻撃、そよ風のようなもの。ではこちらからも行くぞ!幻影翼オーラウィング!」


 と詠唱すると共にアレックスの背中に一対の光り輝く翼が出現し、アレックスは中に舞い上がった。その鋭い動きはまるで猛禽類のようである。


「者共、かかれ!かかれ!同時に勇者の仲間共にも飽和攻撃!奴らの後詰めは到着しておらぬ。数の上では数万対数人ぞ!」


 とラフルルが指示を出す。


グレードラゴンを中心とした一団は円形に陣を組み、その外側にブルードラゴンが中核となって陣を組んだ。中央の巨大な陣はアレックスと円盾を収納したシャルンを狙い、左右の陣は両翼に分かれて後列の大賢者ランドたちを狙って攻撃を始めた。


「グレードラゴンはアレックスに任せましたわ!ブルードラゴンの弱点は…炎でしたわね?なら炎獄インフェルノファイア!」


 とシャルンが前に手をかざしてと唱えた。するとシャルンの前方に数十個の数メートルはあろうかという炎の玉が浮かび上がり、ドラゴンの群れに突っ込んでいく。炎の玉の直撃を受けたドラゴンどもは次々と四散して燃え尽きていく。


「馬鹿な。人間も炎獄を使うだと。しかしまだ我の方が数は圧倒しているぞ!要塞前面の守備隊、突撃!勇者は無理そうなので他のメンバーを狙え!」


 とグレードラゴンの上で指揮するラフルル。要塞マッザの塹壕から魔将に率いられたオーク隊が飛び出てきて棍棒を振りかざし、その後方からゴブリン共が投石してくる。

 

 大賢者ランドは未だ後列で手を組み窮極古代魔法の詠唱を続けていたのである。

一日1回投稿続けて参ります。よろしくおねがいします

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