攻略対象だと思わずに接していたら実は隠しキャラだった
初投稿です。
誤字脱字などで読みにくい部分があるかもしれませんが、息抜きになれば幸いです。
『セント・ミネス学園』
乙女ゲーム「愛と魔法と剣と」の舞台であり、
魔術師を目指すための魔法科と、騎士を目指す人のための騎士科と、
2つの科が存在している。
文字通り、魔術師は魔法を、騎士は剣を持ち、魔物などの敵から国を守護する役目もつ。
主人公は幼い頃、魔物に両親を殺されたことにより、
自分と同じ悲しい思いをしてほしくないという信念から騎士を志すようになる。
だが、ある事がきっかけで魔力も持っていることが分かり、
魔術師にもなれる可能性があることが判明するのだ。
ゲームの物語序盤で魔法科か、騎士科どちらに入るかの選択でき、シナリオも少し異なってくる。
どちらを選んでも攻略対象者は同じだが、
イベントが選んだ科によって少し変わってくる。
主人公は在学中の2年間
魔法または剣を学び、学園生活を送りながら攻略対象の彼と愛を深め、
そして彼とともに魔術師か騎士になる道を歩んでいく…
そんな物語である。
……で、なぜ今こんな説明をしているかというと、たったいま前世の記憶を思い出したからだ。
何を言っているんだと思うが、実際そうなのだから仕方がない。
今日は入学式の日。
学園の校門をみて「なんだか見覚えあるな~」などとのんきに思っていたら、
突如思い出したのだ。
―前世の記憶を。
やばい。どうしよう。
本当に乙女ゲームの世界に転生するなんて思っていなかった。
しかも乙女ゲームの主人公であり、ヒロインでもある
『シエラ・リンディス』
に転生したという超特大のおまけつきだ。
「はは、そんなまさか転生なんて」
と前世で言っていたからなのか。フラグを立てていたからか。
神様め、粋なことをしてくれるじゃないか。
…しかし、正直言って、あまりこの学園に入りたくなかった。
なぜかというとこの学園は大半、魔術師または騎士を目指すことになるからである。
魔術師、騎士というものは、国の守護を目的として、
どちらも魔物の討伐にいく必要が出てくる。
スライムとかだったら可愛いものだが、
ウルフやオーク、最悪ドラゴンを相手にすることもある。
ヘタをしたらヒロインの両親のように命を落とす可能性だってある。
殉職する可能性が高い職業なのだ。
正直言っていやだ。
前世でぬくぬくと平凡で平和な日々を送っていた私では無理な話だし、
はっきりと前世を思い出した今、死ぬ瞬間のトラックが迫ってくる感覚まで思い出してしまった。
あんな思いをするのは嫌だ。
なぜ、入学式の日に前世を思い出すんだ!!もう少し前に思い出したかった!
前世では、一から街を作ったり、牧場やお店を経営するゲームが好きだったし、
そういったことに興味がある。
どうせなら、実家に戻り、後継ぎとして立派に成長した兄様の補助とかで
領地経営に励む方がよっぽどいい。というかそれをしたい。
ヒロインの実家は辺境にある伯爵家だ。
実家の詳細は乙女ゲームにちょろっとしか書かれていなかったから、今初めて知ったが、
治める領地は辺境というところもあってか、作物を育てるのにあまり適していない土地だ
まだしっかり整備されていない道や土地もまだたくさんある。
まだまだ改善の余地ありで、見直すこともたくさんある。
だからヒロインよ、仮にも伯爵家の令嬢だし、
魔物を退治するのも大事だけど、
まず領民のためにも自分のとこの領地を整えることが重要ではないだろうか。
…と思うわけですよ。
しかも今年は天候がよろしくなくて、作物が不作だという。
かなり厳しいはずなのだ。
騎士とか目指している場合じゃないよ。
兄様も
「頑張っておいで」
とか笑顔で送りだしてるんじゃないよ。
対策とかでかなり忙しいはずだよ!お願いもう少し引き留めて!
――よし。
ヒロイン(自分だが)には悪いが、魔術師・騎士になる道はあきらめ、
実家に戻る方法で考えよう。
幸いにも自分は魔力を持っているから魔法が使える。
これを使って領地を助けられるのではないか。
この学園は卒業後全員が全員、魔術師・騎士になれるわけではない。
中には自分には向いていないとあきらめて、別の道を目ざす人だっている。
自分も同じように
「あこがれで学園に入学したけどやっぱ無理でした~実家のお手伝いしに戻ります!」
っといった感じでいこう。うん、そうしよう。
できれば、今すぐにでもとんぼ返りしたいところだが、もう入学が決まってしまっている。
そうしたら中退扱いになってしまう。
この世界も学校を中退してしまうとあまりいい方向に見られない。
(兄が死んで急遽家を継ぐ必要になったとなれば別だが)
あまりおすすめできない。無事に卒業するのがベストだ。
もちろん攻略対象者にも近づかない。
なぜかって?
全員のエンディングではヒロインが、
騎士(または魔術師)になって、働いている様子が書かれていたからだ。
お近づきになったら最後、ゲームの強制力かなんかで、
『一緒に騎士を目指そう!』
とかになってしまったら断れるかよくわからない。
私は押しに弱いのだ。
さらにルートによっては、魔物が学園を襲うなんてのもあったり、
ほとんどのキャラのバッドエンドは、ヒロインが死んでいた。
念には念を入れて近づかないでおこう。安全が一番だ。
あ、でも遠くから眺めることぐらいならいいかも。
そこは、乙女ゲームの世界に転生したんだし、せっかくならキャラを見てみたい。
そういえば、この乙女ゲームには悪役令嬢のようなライバルとなる女性キャラがいない。
というか、ヒロインがいじめられる展開がない。
だから攻略対象にさえ近づかなければ、平穏だと思われる。
そう思えば、なんだか楽勝な気がしてきた。
なんだかんだで、もう一度学生時代を送れるわけだ。こんな貴重な体験はない。楽しみだ。
ヒロインということで、顔がやっぱかわいいし、
前世ではできなった結婚も夢ではないかもしれない。
(攻略対象とはお断りだが)
前世より華やかな学生時代を送れるのではないだろうか!
……よしいけるいけるぞ!私!
「よっしゃ!いっちょやったる…「おい、何入り口で突っ立ってるんだよ、そこどけ。」
さっそくガッツを入れようとしていたところに、横やりを入れられてしまった。
(そういえば記憶思い出してから、校門でずっと、一人であれこれしていたり)
何奴!?と思い、
うしろを振り返ると…
そこには、イケメンがいらっしゃった。
銀髪、緑目の、それはもう見目麗しいイケメンさんが。
「おい、聞いているのか。」
「はいぃ!どきます、どきましゅ!」
しまった最後噛んでしまった。
前世では男性などあまり関わらなかったものだから
いきなりすごいイケメンさんにしゃべりかけられて、ビックリして噛んでしまった。
しかも、道をお譲りする際、変な体の動きをしたかもしれない。
怪しいものではないよ。断じて。
「フッ…なんだその動き。」
普通に変な動きだったようだ…。笑われてしまった。
恥ずかしい…!
しかし…笑った顔も素敵ですね、イケメンはやはり得ですねこの野郎!
前世を思い出したりと、さっきからビックリしかしていない。
この先、人生楽勝と思っていた矢先にこれだよチクショウ。
これから大丈夫だよね!?
しかし、これだけイケメンだと攻略対象か?
と一瞬思ったが、記憶にないし多分違うだろう。
謎のイケメンさんは笑った後そのまま先に行かれたようだ。
もう会う事もないだろう。
うん、気を取り直して頑張ろう。
……などと思っていたら
なんとイケメンさん同じクラスでしたよ。しかも後ろの席。
結構クラス数あるのになぁ。
まもなく、教室に担任となる先生が入ってきて、自己紹介をすることになった。
イケメンさんのお名前は「セネル・レイ」というらしい。
セネル様ね。うんやっぱり名前も聞いた覚えがないや。
なんと隣国から魔法を学ぶため来たとのこと。
魔術師とかになりたくないとか言っている私と違って偉い。
あ、ちなみに、科は魔法科を選びましたよ。
そんな剣とか持って戦ったりできませんて。
本より重いものなんて持てませんわオホホ…
自己紹介では、地味にいこうとはりきりすぎて逆に噛んでしまった。
もうやだ。
「お前さっきから噛みすぎだろ…!」
イケメンさん、もといセネル様にまた笑われてしまった…。
というか顔を覚えられてた。
こっちは笑わかす気はないんだよ!これでも一生懸命やってるんだよ!
ああ前世でも、人前で喋るのは苦手だった。もっと喋る練習しておけばよかった…!
―最悪な自己紹介の後は授業の説明もあった。
前世には無かった魔法は新鮮だ。
そして数日が経っていた。
とりあえず攻略対象はできるだけ避けるようにした。
もし話しかけられたりしても
「はい」
「わかりました」
と一言で済むようにした。
そのため、今はただのクラスメイトといった感じで落ち着いている。
よしよし。
しかし、校門の件と、自己紹介の件が災いし、
さらに前の席ということもあってか
なぜかセネル様によく話しかけられるようになってしまった。
なんでだ。
あるとき、
話す言葉の訛りを、セネル様が他の男子から揶揄されていた場面に遭遇してしまった。
私だって前世は英語はできなかった。
っていうか気にするほど訛っていないのに、おそらく彼は美形だし、頭もいいので、
それをやっかんだ男子が難癖をつけてきたのだろう。
ついついセネル様をかばってしまった。
外国の言葉を話せるだけでもすごいと思うし、そんな気にならないぜ
みたいなフォロー?を入れた後、
さらに話しかけてくるようになった。
嬉しかったらしい。
まじでか、あんなフォローになりもしなさそうな言葉がか。
攻略対象ではないにしても、
イケメンだからか女性の人気がすごく高い。
そのせいか話しかけらえると、周りの目線が痛い。
ううむ…
彼と過ごすことが多くなり、最初は自己紹介の時のように笑われることがよくあったが、
最近は、優し気に微笑みをくれることも多くなった。というか優しくなった気がする。
どうしたんだお前。
聞いてみると、私と一緒にいるのがすごく楽しいらしく
一緒にいると安心感があるらしい。
彼が笑うとそのせいで周りの女子から、きゃあ~!
と黄色い声が上がったりもする。
イケメン効果すごい。
しかも、話し上手でもあり、聞き上手だ。
付け入る隙がない。
女子の間でこっそり行われる。
『付き合いたい男性ランキング』では堂々の一位だ。
私の言うこと嫌な顔せずに聞いてくれるし、
なんだ、こいつパーフェクトじゃないか。
攻略対象よりキャラが立ってないか?
彼と話していると彼の住む国のことを知れて結構楽しい。
隣の国なのに結構文化がちがうんだなあ。
興味出てきた。
ある時、セネルの国の料理を食べてみたいなといったら、
「俺のとこに来ればいいじゃないか、そうすればずっと食べ放題だぞ。」
とお誘いもいただいた。
何日国に滞在させる気だろうか。さすがにずっと食べていたら飽きそうだ。
あと、意外と私といない時はそんな笑顔じゃないことに気づいた。
男子と女子で分かれて行う授業なんかは、意外と澄ました顔して受けているし、
このまえ女性に告白されているところを見たことがあるが、
かなり冷たい表情で断っているのを見たことがある。
そんなに、私の存在は面白いのだろうか。
朝ごはんで食べているノイ(前世の海苔みたいな食べ物)が歯に付いていたとか?
また、一日数量限定のスイーツを買い損ねたことを話していたら、
後日、再販されることになった際、彼からの提案で、お菓子屋に一緒に買いに行くことになったことがある。
二人なので二個買うことができ、なんとまるごと二個くれるというではないか!
しかも「持ってやるよ」と、荷物を代わりに持ってくれるというオプションまで。
他にも、転びそうになったら咄嗟に手を伸ばして助けてもらったり、
柄の悪そうな男の人に絡まれた際、守ってもらったり、
少し、いやかなり頼りになる男だということが判明した。
(ヒロインは一応戦える設定だが、中身が戦闘経験のない私のため役立たずである。)
ちなみに、彼には将来魔術師になりたくない
ということを相談している。
そうしたら
「それでいいんじゃねえの、仕事なんかされたら困るし。」
と、何が困るのかは知らないが、私の心情をくみ取ってくれたりもする。
さらにさらに、ただでさえ作物が実りにくい実家の領地が天災に見舞われた際、
食べ物や水を支援してくれたりもした。
もうセネル様様である。
ってか支援て、君の家結構お金持ちだね。
セネル(最初は様付けして呼んでいたが、呼び捨てにしてほしいと言われたのでそうしている。)
に支援のお礼を言うと
「お前じゃなきゃ、ここまでしないけどな」
と言われた。
ほんの少し顔が赤かったが、照れているのか?かわいいやつめ。
ここまで友情に熱い男だったとは。感動したよ。
学園でも攻略対象に話しかけられた際には、睨んで引き離してくれたりする。
しかし、彼には攻略対象たちと、あまり接したくないとは言ってなかった気がするが、
どうやって分かったのだろうか…?
まあ、攻略対象には悪いが、助かるからいいけども。
というか、攻略対象ではない男でもそうだったような…?
――そうやって、彼との不思議な友情?を深めつつ2年間、
男友達はなぜか彼しかできなかったが、
攻略対象ともただのクラスメイトという状態をキープしたまま、無事卒業式まで迎えることができた。
なんだかんだ女性の友達はできたので、楽しい学園生活を送ることができた。
しかもなんとですね、私のもつ魔法が植物の成長を助けることが判明したのだ!
これで、故郷の作物が実りにくい土地で作物を育てることができる。
不作を解消できるようになるかもしれない。
何より、これを理由として故郷に帰ることができる。
やったぜ。ミッションコンプリート!
セネルに実家に帰ることを伝えると
「もうしばらく待っていてほしい。また迎えに来るから」
と、セリフを残して、セネルも故郷の隣国に帰ってしまった。
いつか言っていた、私がセネルの国に遊びにいく約束だろうか。
覚えていてくれたのか。
寂しいな。彼とならもっと仲良くできそうなのに。
領地が落ち着いたらいつか彼の国にも遊びに行ってみたい。
―――
――
―
このときは私は知らなかった。
実は彼が隣国の王子で、後に王太子となることも。
数年後、彼が私を王太子妃に迎えたいと求婚しに戻ってくることも…
シエラ・リンディス
→ヒロイン。辺境伯のご令嬢。
本人は自覚していないがかなりの美少女。
前世を思い出したまではいいが、攻略サイトを見ない主義や、
周りに誰もゲームをしていた人がいないことが影響して
乙女ゲーム「愛と魔法と剣と」はクリアしていると思っていたし、
隠しキャラ(セネル)がいることを知らなかった。
また、楽観的な考えの持ち主で、少し抜けている部分があり、そして鈍感。だけどセネルと一緒にいて楽しいとも思っていた。
ちなみに、セネルと話しているとき、周りの視線が痛いと感じていたのは、本人の勘違いで、
シエラと話しているときのみセネルの笑顔が見れるため、それを見たさに集まってきてといった状態。
セネルとの仲を嫉妬されているわけではなく、(シエラも美少女なので)お似合いのカップルとして温かい目で見守られていた。
実は、攻略対象をはじめ、他、男子にも何度か声をかけられそうなところを、
セネルが邪魔をしていたことは知るよしもない。
セネル・レイ
→隣国の第二王子。乙女ゲーム「愛と魔法と剣と」の隠しキャラ。
シエラの国の魔法の技術を学ぶため入学してきた。
大事になるのを避けるため、名前と身分を隠している。
少し俺様気質。
本名は「セネリオ・レイシス・ラドフォリア」
奇怪な行動・言動が多い(シエラ本人に自覚は無い)シエラに興味を持ちだんだん気になる存在になっていった。
攻略できるようにするまでの条件がまず難しく、
しかも条件をクリアしても、最初の出会いイベントが低確率で発生するため、
運が悪いとなかなか出会えないという鬼畜仕様。
普通にプレイするだけではまずお目にかかれない。
存在自体が幻なのでは?といった情報が出回るほど。
なお、うまく会うことができると、彼ルートに強制的に固定され、
他のキャラが攻略できなくなるという謎仕様。
卒業した後は、悪徳と名高い第一王子を廃し、王太子となる。
好きな人は外堀から埋めていくタイプ。
迎えに来る事前には、シエラの兄にちゃんと許可を取っていたりする。




