不思議なお茶会2
「環は本当に美野ちゃんに似とる」
ポツリと零された言葉。
キヨには常々、「きっと環は占いに向いてない」と言われ続けてきた。自分でもそう思っていたからか、特別キヨに対して反発心が起きるとか、悔しさを抱えるとかはなかったけれど、占いで幸せになっていく、相一郎や光香のお客さんを見ていると、どこか焦れたような感覚が湧いてくるのも確かだった。
「何者にならなくても、幸せにできる者がいる」
キヨが呟いたのと同時に、腕の中からも言葉が重なった。
頬を離し見下ろすと、白花がジッとこちらを見ていた。
「美野ちゃんの言葉だよ」
白花の声は聞こえなかったのかと安堵する。
「そう言って、相一郎さんにプロポーズしたんだわ」
「ばぁちゃんがプロポーズしたの⁈」
本日、何度目かの衝撃だ。
「なんだ、環は聞いとらんかったか」
驚きにコクコクと音がしそうなほど頷く環にキヨは楽しそうに笑う。
「稲荷神社の神様の前でな。そう言って、茶屋は私が守るから。美味しい食事でたくさん幸せになってもらうから。その最初で最高の人になってくださいってな言ったんだわ」
「すっげー! ばぁちゃん、カッケェっ」
――何者にならなくても、幸せにできる者がいる。
祖母の言葉がじわじわと、環の奥底で広がっていく。
「ホットサンドの作り方から覚えよう。で、少しでもラッキーを引き寄せて、元気になれる店にしよう」
自身の占いが当たる、当たらないよりも、誰かが幸せになってくれる方が嬉しい。
今、ようやく気が付いた。気が付けた。
おそらく、相一郎や光香に対して焦れたような感覚になったのは、たくさんの人を幸せにできるのが羨ましかったからだ。
「環、おまえさんには向いとらんと言い続けてきたがな、決意ができれば向きは変わるんだよ。相一郎さんに美野ちゃんがそう話してたよ」
キヨが言っているのは『環の占い』のことだ。
環は静かに頷いて、腕の中のふにふにとカリカリを抱き締めた。