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第9話 コータ再び第11階層に挑み検証する

「よし、とりあえず見た目は置いといてやってみるか!」


コータは第11階層に戻ってきていた。

幾ら部屋から出れば回復するとはいえ、初日に2回挑戦する者なんてここ数十年居なかった。

だからこそ誰一人コータが一人で上に上がっているなんて思いもしなかった。

そんなコータが第5階層で購入した防具、それは壊れた鍋の蓋を2枚合わせた胴当てであった。

それを2つ銅貨12枚で購入し腹部と背中に固定する・・・

見た目は不格好、肩と胴回りに紐で繋いだだけのそれは少なくとも防具と言い切れるか微妙な物であった。


「よしっ!」


第11階層に転移してきた塔の中央の水晶から手を放してコータは適当に通路を進む・・・

ドアの中が透けている部屋は誰かが攻略を終えた部屋である、今日初めて塔に挑んだ者が多い為に空いた部屋が非常に多い。

攻略済みの部屋は半日ほどでモンスターが再配置され、再び挑戦できるようになるのだ。

その空き部屋を部屋を適当に通り過ぎながらコータは未攻略の一つの部屋の前に立った。


「絶対に生き延びてやる!」


そう独り言を言いながらコータは扉を押し開いた!

直ぐに景色は変わり、岩肌がむき出しのただっ広い場所に立っていた。

周囲に身を潜めるような場所は無く、低い岩の後ろに身を隠しても直ぐに見つかってしまうだろう。

だが逆に外に出る扉は直ぐに見つかった。

何もない場所にポツンとドアだけが立っているのだ。

それを見たコータは軽く息を吐いて安堵した。


「よし、無理な場合は直ぐに逃げられるな」


怪我を負ったとしても部屋から出てしまえば自然治癒が発動して回復する。

だから脱出する為のドアを最初に見付けられるかが生存確率を大きく上げる基本だと習った。

コータは大きく息を吐いてから意識を切り替える。

既にここは部屋の中、だからこの何処かに魔物が1匹存在する筈なのだ。


「何処だ・・・」


小さく口にしながら周囲に目を配る・・・

そして、そいつを見付けた。

小さな岩の前に同化するように両手を付いて伏せている猿。

『ブリガ』と呼ばれる猿の魔物である。


「ブリガか・・・ある意味ラッキーかもな」


ブリガは見た目通り猿の魔物である、身軽な身体能力を生かして立体的な攻防を繰り広げる。

だからこそ、木々の無い岩があるだけの平地だったのは非常にラッキーであった。

だが、一つだけ問題があるとするならば擬態能力であろう。

茶色の毛がまるで岩の様に擬態しているのである。

こっちを警戒しながら見ていた視線に気付けなかったら間違いなく不意打ちを受けていたに違いない。

コータは気付いた事を悟られないように周囲を探している振りをしながら小さく口にする・・・


「『ジャストアタック』」


スキルを発動し、実験がてらダメージを1に設定する。

前回のアルマジーニとの戦闘で決め手となった最後の一撃、あれでアルマジーニが即死したと考えれば辻褄が合うのである。

だとしたら、自分のスキルには隠された効果として即死効果があると考えたのだ。

それが、ダメージを1に設定したからなのか、MPが尽きた時に使用したからなのか、それとも確率なのか・・・

調べ無い事には分からない、だからコータは実験を開始したのだ!


「くらえっ!」


そう言って振り向きざまに拾った小さな石をブリガに向かって投げつけた!

完全に隙を窺っていた居たブリガはコータが気付いている事に驚き、頭部にその石がぶつかった!


「キキィー!!!」


ブリガの頭上に赤文字で1と表示されダメージを与えた事が分かった。

だが1ダメージで即死させる効果があるという可能性はこれで無くなった。

であれば次のMPが尽きた時にスキルを発動すれば・・・

そう考えコータは再びスキルを発動させる!


「よし、次だ!『ジャストアタック』」


そう口にしてスキルを発動し横に移動しながら石を再び拾った。

擬態が見破られていたブリガ、その表情を崩して笑みを浮かべながらコータに向かって動き出す。

石を投げて攻撃されたがダメージはたったの1、だからブリガは自分よりも遥かにコータは弱いと考えたのだ。

だが、その予測は次に投げられた石を受けて裏切られた。


「ギッギヒィッ!!」


同じく頭部にぶつけられた石、先程は全く痛くもなかったので避けずに受けたのだ。

結果、頭上に赤文字で表示されたダメージは100と自分のHPの5分の1ほども一気に持っていかれたのだ。

それに焦ったブリガは動きを変化させフェイントを混ぜながらコータに向かって攻撃を仕掛けてきた!

だが・・・


「アルマジーニに比べたら遅い!『ジャストアタック』」


そう言ってコータは再びスキルを発動させ横にブリガの攻撃を回避しつつ、左手に持っていた石を投げつけた!


「ギャッ?!」


背中に当てられた石、回避しながらの投石で勢いもほとんど無かった筈なのに赤文字で表示されたダメージは再び100。

ここまで来て初めてブリガはコータに恐怖を抱いた。

同じ攻撃を後3回も喰らえば瀕死になってしまう、知性がある魔物だった為にそれを理解したのだ。


だが、コータも頭の中に『?』が浮かんでいた。

それもそのはず、今のジャストアタックは3回目、自分のMPであれば3回目の発動はMPが不足していてダメージは1になっている筈である。


ブリガがコータを警戒し、距離を開けた事でコータは違和感の正体を探るべく、口にする・・・


「ステータス!」


そして、そこに表示されている内容に目を疑った・・・


HP:68

MP:14

BP:17








そして、その頃コータに第5層でカツアゲをしようとしていた男が目を覚ましていた。


「おいっ起きたか?」

「あっ・・・あぁ・・・」

「分かるか?お前アイツに何されたんだ?」

「わ・・・分からない・・・見えなかったんだ・・・」


コータ含む、本日初めて塔に挑んだ者の平均バトルポイントは9・・・

2倍近い強さを持つコータの攻撃に移った時の動きをあの時点で視認できたのは衛兵だけであった。

殺意も無かったために衛兵は塔を攻略する者と言う事で見逃していた。

衛兵は知らない、コータが今日初めて塔に挑戦したばかりのルーキーであったことを・・・


「お前あの一瞬で35もHPが減ってたんだぞ」

「なっ・・・」


男のHPは39、何をされたのか理解できないまま瀕死にされたコータに恐怖を抱くには充分であった。

過去に類を見ないコータの塔攻略が今始まる…

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