第3話 第4階層の町
「っ?!………また…あの日の夢…」
窓から朝の光が部屋の闇を薄くする室内。
ベッドに上体を起こした美女の背中が露になる。
前はシーツで押さえているが、それが逆に色気を浮かび上がらせる。
「もう…ずっとずっと昔の事なのに…」
頭を垂れれば長い黒髪が表情を隠す。
見た目は20程の絶景の美女である、だが彼女こそ世界が滅びたあの日から生き残っている最後の一人なのである。
「はぁ…」
吐息が漏れると同時に彼女は傍らに置かれたグラスを銀の板に乗せる。
それと共に板に魔方陣が浮かび上がりグラスの中へ透明の液体が注がれていく。
一定量まで入った所で自然に補充が止まったそれを手に取り、彼女は喉を潤す。
現代の日本人が見れば歯医者にあるアレを想像させるその魔法具は、何処の家庭にも在るありふれたものである。
スッと立ち上がった彼女は漆黒のローブに袖を通し窓際へ移動してカーテンを開ける。
朝日が彼女を照らし、窓の外の町がその視界に映り込んだ。
「良い天気…今日は何かあると良いわね」
その言葉はまるでこれからを予言するかのように呟かれた…
第4階層
そこは生物が暮らすに適した気温と気候の階層。
生き残った人類が主に生活をする階層であり、唯一の町が作られた階層であった。
中世のヨーロッパを彷彿させるような町並みが広がり、町の中央には巨大な噴水が設置されている。
神の用意した試練の塔、そこはまるで世界が詰め込まれた空間であった。