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65.跳躍

いよいよゴーレムがその形を整え、一歩を踏み出した。

レオナードが右方向へと回り込むように移動を開始するがゴーレムはそのまま直進したままだ。


「…ん?ゴーレムの動きがおかしいな…。」

ガンドルフも気づいたようだ。


その時、穴からイネスが小さく手を出す。その手に何か握られていた。そしてゴーレムがその向きをレオナードへと変える。


「…あれって…鏡?あ、そうか!あのゴーレムを操っているのはイネスさん自身だからレオが見えないと攻撃出来ないのか!」

パズがポンと手を叩いた。


どうやらレオナードもそれに気づいたようだ。小さな火球をイネスのかざす鏡に向かって放つ。イネスは慌てて手を引っ込めた。その頭上を火球が通り過ぎる。

その間にレオナードはゴーレムと距離を取る。イネスが再び手を伸ばして鏡をかざす。


「これはレオナードはかなり分が悪いな…。」

王子殿が呟く。陣地制のおかげでレオナードはイネスに近づく事が出来ないがイネスは着実にゴーレムをレオナードへと近づけている。

ゴーレムの攻撃をかわすことは容易いだろうがそれではジリ貧だ。イネスを巣穴から引っ張り出す必要がある。


レオナードは一度足を止めると再び火球をイネスの鏡に向かって放つ。鏡を引っ込めるイネス。

その間にレオナードは左回り周りに旋回しゴーレムの進路から外れると、水球を一つ両の掌で左右から叩き潰す。そのまま、合わせた手の指先をじっとイネスが隠れている穴の方向へと向けて構えている。

三たび、イネスが穴の中から鏡を翳した。ゴーレムの進路方向にレオナードが映っていないのに驚いたのか、一瞬ゴーレムの動きが止まる。反対に鏡がせわしなく動き出した。だが時はすでに遅かった。


ひゅう


あの強い隙間風のような音がして次の瞬間


パリン


イネスのかざす手鏡が、レオナードの手から放たれた何かによって砕かれ弾き飛ばされた。観客からは驚き混じりの歓声が上がる。


「速すぎて見えない攻撃か…。脅威だな…。察するに水による攻撃だとは思うのだが、どう考える、ガンドルフ?」

王子殿に問いかけられたガンドルフは肩をすくめた。

「私は魔法には疎いのでさっぱりです。レオナード君の情報開示を待つ方が早いかと。彼は嘘をついたり、秘密にし、独占するような輩ではないかと存じます。」

そんなガンドルフの言葉に王子殿はニヤリと笑った。

「それもそうだな。おいおい…凄い事になってきたぞ…。」

王子殿の言葉通り競技場ではとんでもない事が起きていた。

ゴーレムが無茶苦茶に腕を振り回して暴れているのだ。

それをレオナードが掻い潜り、躱し続けている。観客席は大盛り上がりだ。


「イネスさん、凄い魔力量だけど…もつのかな…?」

イネスは額に大汗をかきながら、シャベルを通してゴーレムに魔力を送り続けている。

あれだけの大きさのゴーレムを作成し、操るだけでも学生の域を超えているが、今やそのゴーレムが縦横無尽に暴れ回っている。まるで暴風だ。あれは一発でも当たれば骨くらいは折れるかもな。


俺がそう思った直後、ティアの短い悲鳴が上がり、すぐに歓声にかき消された。

避けきれなかった一撃がレオに命中する。派手な砂煙を上げながら地面に転がるレオナード。

当たる瞬間に後ろに飛んで勢いを殺したのか、魔法障壁が破壊されるには至らなかったが、損害は大きい。あと一撃は持たないだろう。

幸いだったのは状況が見えていないイネスからの追撃が無かったことだ。

レオナードは素早く起き上がり、次の一撃に備えている。


「ティア、レオナードなら大丈夫だよ。」

両手で顔を覆うティアに優しく声をかける王子殿。

一撃は貰ったものの、レオナードは意外に冷静に回避を続けている。

このひと月の間、あのアーノルドの剣の稽古の相手をしてきたのだ。それが多少なりとも活きているのだろう。

だが体力にも限界は存在する。それはイネスの魔力にしても同じ。

「これは…持久戦だな。まてよ…もし、決着がつかなかった場合はどうなるのだ?イネスがあの穴の中に隠れて続けている場合、例え魔力切れでゴーレムが動かなくなってもレオナードは攻撃出来ないんじゃないか?」

王子殿の疑問はごもっともだ。その場合…

「その場合は魔力障壁の損傷が少ない方が勝ちとなります。ですので…。」

「レオナードは現状、圧倒的に不利…か。」

王子殿の言葉にパズが重々しく頷いた。

さて、この状況、レオナードはどう打開するのか…。

もう一撃、軽くでももらったら負けという状況で、それでもレオナードの目は死んでいない。何かを狙っているような雰囲気だ。

魔力切れが近いのか、ゴーレムの動きに鈍りが見えてきた。その右手が振り下ろされた瞬間、レオナードが両手を合わせて水球を一つ叩き潰すと、一気に加速して駆け出した。脚周りに魔力が流れ込んでいる。

「何をする気だ?」

ガンドルフの訝しげな声が歓声にかき消される。

レオナードはゴーレムの腕の前で地面を蹴ると、その腕に飛び乗った。そのまま腕を伝ってゴーレムの肩へと目指して駆け登る。

「あの足場の悪さで!お見事!」

王子殿の驚嘆の声とともに室内外から大歓声が巻き起こる。


駆け上がったレオナードはそのままゴーレムの肩を強く蹴り、空中へ舞い上がった。両の掌をしっかり合わせて狙いを定めている。

空中に現れた影にイネスがハッとなって顔を上げる。だが逆光になっているのか、眩しそうに顔をしかめた。そして、


ひゅう


例の強い隙間風のような音が聞こえ、


パリィィイン!


イネスを守る魔法障壁が鋭い音を立てて割れた。

呆然とした顔のイネス。会場揺らす大歓声。


しかし…


あいつどうやって着地するつもりだ?



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