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64.それぞれの一手

《…勝負あり!勝者、アーノルド!》


会場が地響きのような大歓声に包まれた。

砂煙の向こうではアーノルドとバルトロメオ、二人の影が重なっている。

アーノルドの剣はバルトロメオの胴を捉え、バルトロメオの銛はアーノルドの背中の向こうの地面に突き刺さっていた。


二人は一息つくと一歩離れ、固く握手を交わす。その後、声援を送り続ける観衆に手を振りながら控え室へと戻っていった。


「…いやぁ、凄かった。でも最後の一瞬は何が起きたのかよく分からなかったや。」

アーノルドとバルトロメオが控え室に戻り、室内の拍手が収まるとパズが誰に言うともなくこう言った。

「この距離なので私も自信は無いが、最後にアーノルドは後退したふりをして屈み込み、その後に地面を蹴って低い位置から一気に加速、バルトロメオの銛を掻い潜って一撃を決めた。と言うところだろうな。」

ガンドルフが顎に手を当てて考えつつそう言う。実際にそれで間違いは無い。


「それにしても凄い脚力だな。単に足で地面を蹴っただけでああもなるものか…?」

王子殿が競技場を見ながら呟く。係員達がアーノルドが蹴った後の地面をならしていた。

王子殿の疑問はもっともだ。最後にアーノルドが使ったのは魔法とは呼べない程度だが、魔力操作の一種だからだ。


アーノルドは夏休みからレオナードと共に輝光石を使った魔力操作の鍛錬を続けている。進捗は遅いがとにかく足に魔力を集める事だけを徹底的に行なっている。

そしてそれと並行して瞬発的に地面を蹴って加速する鍛錬を追加した。これはレオナードの父、ベルナードと相談した結果だ。

ラファガ(突風)の基礎だな…。」

『なんだそりゃ?俺が知っている名前は縮地法だぞ?』

ベルナードと俺は顔を見合わせた。その後、お互いラファガと縮地法の理論を交換し合う。理論的には似ているが、相違点を突き詰めればお互いより良い物が生まれそうだ。

その前にベルナードが森に入った為に頓挫しているのだが…。


アーノルドが最後に使った技はその縮地法だ。まぁラファガでも変わらないけど…。

足裏に溜めた魔力を瞬間的に放出して推進力に変え、相手との距離を一気に詰める。求められるものは魔力操作と瞬間的加速に負けない足腰の強さ、平衡感覚だ。

その魔力操作の範囲を少しずつ足首、脹脛、太腿へと広げていければ更に瞬発力と移動距離が伸びるのでは?と言うのが俺とベルナードの見解だ。

アーノルドにはまだまだ強くなってもらおう。


「最後のアレも、もし何か秘密があったら聞いといてくれないか?」

と王子殿がガンドルフに耳打ちしている。聞かれた場合、アーノルドは素直に話すだろ。今までのレオナードのように。

先日の準決勝の件も、学園長のウラリーが勝手に判断しただけで、レオナードは隠し立てするつもりは無かったはずだ。

だからこそ大会が終わったら公表する予定になっているのだ。レオナードにとっては、勝手に、隠さなければならなくなっただけ、なのだ。

ただしそれらが公表された所ですぐに同じ水準で実行できる人間はそう多くはないだろう。

あれらの魔法や技術は、エレンも含めて、あいつらの資質によるところが大きい。


小さな事をコツコツと毎日積み重ねる事の出来る、忍耐と努力という資質だ。


気づけば無差別武術、三年生の部も試合を終えていた。パズの予想通り客席の盛り上がりはいまいちだったが致し方ない。

たが客席から人が減った様子もなかった。何せこの次の試合も観客にとっては注目のカードなのだから…。


魔法戦闘部門

イネス 対 レオナード


ゴーレムを使ったド派手な攻撃が売りのイネスと、かたや正体不明の魔法を使うレオナード。


「…魔法戦闘の試合とは思えないな…。」

苦笑混じりにガンドルフがそうもらす。

イネスはいつもと同じ、坑夫のような上下繋ぎの作業着にブーツ、目元を覆うゴーグル、そしてショベルという出で立ち。

レオナードは飾り気のない、動きやすそうな、パズ風に言う所のシンプルな、なめした皮の軽鎧とブーツ。これで弓矢でも持たせたら魔法士というよりは

猟兵か狩人だ。


《…両者構え…始め!》


拡声魔法の合図と同時に詠唱に入る二人。レオナードの周りにはふわりと水の球が数個浮かび上がり、イネスはシャベルを地面に突き刺した。


「!!…なるほど…簡易的な塹壕というわけか。」

ガンドルフが感嘆の声を漏らす。シャベルを刺した場所を中心に半径1ヤードほどの地面が陥没し、逆に穴の縁は盛り上がる。

上から観ている俺たちにはその穴の中で片膝をついて屈むイネスの姿が見えるが、レオナードには全く彼女の姿が見えないだろう。

「あれでは射撃系の魔法は通らないな。よく考えたものだ。」

王子殿も感心している。さて、レオナードはこれをどう対処するのやら。


イネスは地面に突き刺したままのシャベルの柄を握り、まるで祈りを捧げるように詠唱をしている。

俺の目にはシャベルを通して地中へイネスの魔力が流れ込んでいるのが見えた。

イネスの隠れている穴の前方の土が盛り上がり始め、やがて人の形を取り出す。

レオナードに慌てた様子は見られない。だが頭の中は大回転のはずだ。ゴーレムに火球やマルコに使った魔法は恐らく意味を成さない。ゴーレム自体は選抜試験で使った振動魔法で破壊出来るかもしれないが、それだけでは結局イタチごっこだ。


さぁどうするレオナード?ここからが正念場だぞ…。


俺は貴賓室から皆と共に競技場を見守り続けた。



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