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60.お前にだけは
やけに心臓の音が大きく聞こえる。周りの音が遠くに聞こえた。
僕は胸に手を当てて、一度息を吐くと、ゆっくりと時間をかけて吸い込む。
体一杯に空気が満たされた所で息を止めた。
そのまま暫く息を止めていると、色んなことが思い返される。
一番出てくる場面は、クロと親友と、そして短かったが、父と兄と過ごした、朝の鍛錬の景色だ…。
それから僕はゆっくりと息を吐く。
不思議と気持ちは落ち着いていた。
目を開くと少し先にマルコがいた。ニヤニヤと笑っているが気にならなかった。
ようレオナード。よくマグレでここまで来れたな。どうやら避けるのだけはうまいらしいが、ここまでだ…。
声が遠くから聞こえてくるようだ。
そこで言葉を区切り、口の端を大きく吊り上げて笑うマルコ。
俺の魔法は絶対避けられないから楽しみにしてろよぉ…。
蛇みたいだな…。と思うが口にしなかった。無言でマルコと向かい合う。
お前にだけは、絶対負けない。
今まで感じたことが無い、生々しい感情が僕の中に芽生えた。
僕はキッと強くマルコを睨みつける。
両者構え…始め!!
そして僕の戦いが始まった。




