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59.準決勝

そしてあっと言う間に大会も八日目を迎えた。今日は魔法射撃と魔法戦闘の準決勝戦が執り行われる。


ちなみに六日目はレオナードとアーノルドは休養を取っていた。アーノルドは翌日に準決勝を控えていることもあったし、パズ、エレン、ティアの三人は東方公家のお屋敷にお呼ばれしていたらしく、レオナードは一緒に競技大会観戦に行く仲間が居なかったようだ。


七日目の剣術、無差別武術の準決勝戦ではアーノルド、バルトロメオが共に決勝戦進出を果たしていた。聞こえてきた噂では、今年は、有力な剣士たちはアーノルドを避けて無差別武術ではなく、剣術の方に出場しているらしい。

「まぁ戦略は人それぞれさ。」

それを聞いたアーノルドはそう言って小さく肩を竦めた。




「…想像以上に凄いな…。」

王子殿が感嘆の声を漏らす。彼から、是非に、と言われ、昨日からレオナードたちは王族用の貴賓室で競技大会の観戦をしていた。


昨夜など、帰宅したレオナードはベットに突っ伏して、試合より疲れた…と零していた。


そんなレオナードとエレンは今日の主役としてこの場に居ない。俺は何故が王子殿の膝の上で、エレンの使い魔のペルシャ猫のルビィは弟君の膝の上で、撫でられつつ試合を観戦している。この兄弟、本当に無類の猫好きらしい…。


《勝負あり!勝者、エレンフィール!》

会場から割れんばかりの大歓声が沸き起こった。エレンが誇らしげに手を振っている。それはそうだろう。恐ろしいことに相手に一点も取られていない、いわゆる完封試合だ。

「…大会が終わったらエレンフィールを招集してあの火球の魔法を伝授してもらえ。魔法士部隊の戦力が跳ね上がるぞ。もちろん、たっぷりと褒美を弾んでくれ。」

近衛の魔法士を呼び寄せて物騒な事を耳打ちしている。この王子殿も中々に強か(したたか)だ。


ふと隣を見るとルビィを撫でながら弟君とアーノルドがお互い気恥ずかしげに会話をしている。それはそうだろうな、この前の話からすると、この二人は幼少の頃に仲良くそれぞれの兄を一緒に追っかけていたのだから。時々話が盛り上がり、笑いあっているのは古い記憶が蘇っているのか…?


『可愛らしいお二人さんよ。私も子猫の頃が懐かしいわ。』

そう言ってルビィが器用に片目を瞑ってウインクしてくる。そういえばこのビロードのような美しい毛並みの猫はいったい幾つになるのだろうか…。

俺は考えるのをやめた。


「あ!レオくんの試合が始まるみたい!」

そう言ってティアが椅子から立ち上がり急いでテラスへと向かう。やはり両手は祈るように組まれている。

続いて一同は椅子から立ち上がると競技場がよく見えるテラスへと移動した。

それに気づいた観客席から喝采が巻き起こる。王子殿と弟君はそんな観衆に向かってにこやかに手を振って応えている。


競技場には相変わらず緊張で青い顔をしたレオナードと、なぜか得意満面のマルコが観客に応えていた。

レオナードのやつ、胸に手を当てて俺が教えたおまじないの深呼吸をしてやがる…。


「…レオくん、お願いだから怪我だけはしないでね…。」

きつく目を瞑り祈るティアの様子に、一同は顔を見合わせる。

「…レオも片隅に置けないなぁ…。」

パズが苦笑しつつ小さく呟いた。王子殿の腕の中の俺も同感だ。あれのどこが良いのやら…?


《両者構え…始め!》


若干、裏返り気味の拡声魔法の合図が響いた。


そして、その年の魔法戦闘準決勝戦が開始された。




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