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32.振動

「うぉぉぉぉぉぉおおおお!!レオ!やった!」

アーノルドが立ち上がって絶叫している。遅れてパズもティアも立ち上がった。観客席についたばかりのエレンが何事かと顔をしかめている。しかし他の観客は何が起こったのか分からずに呆然としているものがほとんどだ。

「…な、何だ?今の…?反則じゃないか!?物理攻撃だろう!!おかしいぞ審判!!」

マルコが騒ぎ出した。レオナードは自分の両手を見て放心している。

「何がおかしいのかなマルゴワール?」

のそりと現れたのはハウゼル先生だ。

「せ、先生!だってレオナードは素手で障壁を破ったんですよ!魔法攻撃じゃない!」

「あれは立派な魔法じゃったと思うぞ。」

「は…?」

マルコの目が点になっている。

「のう、レオナード、あれは()()()()の一種かね?」

「は、はい!おっしゃる通りです!」

ハウゼル先生の登場に現実に引き戻されるレオナード。

「そんな馬鹿な!生活魔法如きであんな事ができるばすがない!絶対なにかのイカサマがあるに決まっている!」

「ふむ、さてどうやったのかね?レオナード?」

ハウゼル先生が説明を求めてくる。

「ええと、生活応用魔法の中に振動魔法というものがあります。」

「…振動魔法…?」

「ふむ、振動魔法か。」

マルコの頭の上に疑問符が浮かびまくっている。対するハウゼル先生の方は察しがついたようだ。

振動魔法とは読んで字の如く、物体を揺らす魔法だ。

「振動魔法は魔素、魔力の最小単位を揺らしぶつけ合う事で振動を起こします。普段は肩揉みや、パンの生地をこねる事に使われる事が多いです。」

レオナードは俺の解説した通りに説明を並べていく。

「は…?肩揉み?パン?」

マルコがポカンと口を開けている。

「それをできるだけ、早い振動に瞬間的に高めたのが

今の攻撃です。」

「なるほどのぉ。つまり、超高振動の魔力の塊をぶつけた。という事だな。」

力強く頷くレオナード。お見事と言いたげなハウゼル先生の横で、マルコがまだ理解不能といった顔をしていた。

「…どーいう事だ!?なんで肩揉みやパン屋が使う魔法で防御用の魔法障壁が破れるんだ!?そうだ!魔法障壁自体が弱かったに違いない!この首飾りが不良品だったんだ!」

「ほう…、その首飾りには我々教師陣がしっかりと魔法をかけておる。相互に確認も行ってな。それが信用できないというのだな?」

ギロリと睨みつけるハウゼル先生。マルコの顔が青ざめる。だが納得はいっていないようだ。

「…まぁ良い。それでは実際の威力を見てみればよいのではないかな?」

そう言ってハウゼル先生がぶつぶつと何かを呟く。すると足元の土が盛り上がり、次いで大人より一回り大きな人型になる。表面はゴツゴツとかなり固そうだ。

「これは岩人形(ゴーレム)の雛形じゃ。まだ核となる精霊や魂を宿してないからただの人形じゃがな。」

そうか、ハウゼル先生は確か召喚魔法の使い手だったな。

召喚魔法を得意とする魔法士の典型的な攻撃手段として、このように人形を作り出し、呼び出した精霊や魂を憑依させて使役するものがある。

「ではまずマルコ、これに攻撃魔法を打ってみなさい。」

そういってハウゼル先生はレオナードを連れてゴーレムから離れる。マルコはきっとゴーレムを睨みつけると、大きめの火球を打ち込んだ。火球はゴーレムに直撃する。おぉ…!と場内からどよめきが起こる。なかなかの魔法だった。マルコも決して能力が低いわけではないのだ。

得意げな顔をするマルコだったが次の瞬間、表情が愕然としたものに変わる。魔法の炎が消えた後にはまったく無傷のゴーレムが立っていた。

「ふむ。ではレオナード、先程の振動魔法をあれに打ち込んでご覧なさい。」

「先生、あれは近づかないと打てないのですがよいでしょうか?」

「ああ、怪我をしないように気をつけて。」

レオナードはゆっくりとゴーレムに近づく。遠目から見ていると悠然としているように見えるだろうが…

(ありゃ…おっかなびっくりだな…。)

恐らくゴーレムが動き出さないか心配なのだろう。誰かがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

そうしてゆっくりゴーレムに近づいたレオナードは一度ぐっと両手を握ると大きく息を吸い

「…せいっ!」

気合いと共に両の掌を突き出した。その手がゴーレムに触れるやいなや


どっごぉぉぉぉぉぉおん!!!!


突き出した手とは反対方向へゴーレムが粉砕、四散した。


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