31.選抜試験
とうとう魔法科の選抜試験がやってきた。俺はアーノルド、パズ、ティアと共に観客席から見守っている。まずは魔法射撃の試験からだった。
「…なんか、ますます迫力を増してないかい…?」
アーノルドの一言にティアが苦笑しながら頷く。
「鍛治関係の産業系魔法の授業で習った、ふいごの理論の応用らしいです。それにしても恐ろしいですけどね…。」
「…てことは風属性の魔法も混ざってるってこと?それ、凄くない?」
ティアの言葉にパズがゴクリと息を呑む。確かにあの歳で二属性同時行使は凄い。相変わらず規格外だ。
「あ〜、こりゃ今年もエレンが優勝だな。」
パズの言葉通りに恐らくなるだろう。エレンはあっという間に選抜試験合格を勝ち取るとこちらに向かって大きく手を振っている。
魔法射撃の試験がもうすぐ終わる。ということは次はレオナードの出番だ。きっと大丈夫だと思うが…。
俺は少し心配になって席の上で伸び上がって演習場を覗き込む。
「クロもやっぱりレオが心配か?」
アーノルドがそう言って俺を抱きかかえると肩に乗せてくれた。これはいい景色だ。隣のアスール(パズの使い魔)と目があったので軽く挨拶しておく。
「あ!出てきたわ!」
ティアの言葉通り、演習場に生徒達が出てくる。
「…レオの奴、ガッチガチだな…。」
アーノルドの言葉通りだった。レオナードの奴、歩き方がぎこちない。同じ側の手と足が出てるんじゃないか?
「魔法戦闘の試験は総当たり戦?」
アーノルドの質問にパズが頷く。
「騎士科みたいに人が多くないからね。全員と一度は当たるよ。」
昨日見た騎士科の試験も総当たりだったが、剣術、無差別武術、合同だったため混合で二組に分けての総当たり戦だった。結果、アーノルドは無差別武術部門に選抜されている。
「あ、早速レオの出番みたい!レオ!頑張れー!」
パズが大声を張り上げる。肝心のレオは胸に手を当てて深呼吸していた。
『大丈夫だ!お前ならやれる!』
俺は目一杯の魔力を込めて念話を送る。レオがこちらを振り返って大きく頷いた。どうやら声は届いたようだ。
「開始と同時に近づく?」
『そうだ。初戦は一撃で決めるぞ。一気に距離を詰めたら後は練習通りだ。』
前日の夜、俺とレオナードは自室で最後の作戦会議を行っていた。
『明日は俺は付いてやらないからな。後は自分を信じるだけだ。』
レオナードはまだ硬い顔をしている。
『…今からでも棄権する事は可能だぞ?』
俺はあえてそう聞いてみた。レオナードは一瞬考える素振りを見せたが、すぐに首を横にふる。
「…ここで逃げてしまったら、きっとこれからも色んな事から逃げる人生になると思うんだ。だから、頑張るよ。」
『…そうか。』
こいつなりの覚悟というやつか…。俺はじっとレオナードを見つめた。
『…緊張した時はな、胸に手を当てて深呼吸するんだよ。五数えて吸って、五数えながら止める。そして五数えながら吐いたらまた五数えなが止める。それを繰り返してみろ。』
俺は最後のアドバイスをレオナードに送る。奴が小さく頷いた。
「相手は…うわ…よりによってマルコじゃないか…。」
パズがしかめっ面をしている。そう、演習場でレオナードと向かい合っているのはマルコだった。
「おーい、レオナード。俺は言ったよな?さっさと棄権しろって。怪我しても知らないぞ。」
あからさまにバカにした態度をとるマルコ。それを何も言わずにきっと睨み返すレオナード。
「…んだよ、気に入らないな…。雑魚のくせに。また泣いてもしらねぇぞ、泣き虫レオナード。」
マルコがイライラした表情を見せる。対してレオナードはなんだか少し落ち着いたようだ。
「それでは試験を始めます。両者用意。」
試験官らしき男が一歩進みでる。身構えるレオナードとマルコ。
「始めっ!!!」
掛け声とともにマルコが呪文の詠唱に入った。
「我、マルゴワールの名の下…えっ!?」
マルコは詠唱を終わらせる事が出来なかった。開始と同時に地面を蹴ったレオナードが既に目の前にいる。
「…はっ!」
そのまま流れるようにレオナードの両の掌が突き出された。マルコの首飾りが反応し、魔法障壁を即座に展開、レオナードの両手とぶつかり
パリィィィィィィィイン
ガラスが割れるような甲高い音が響いて障壁が砕けた。両手を突き出したままのレオナード。驚愕に目を見開いているマルコ。ひと時の間、場内は静寂に包まれた。
そして…
「し、勝負あり!勝者レオナード!」
あっさりと勝敗が決した。




