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24.輝光石

「あった、あった。ここだ。」

「結構大きいね。」

僕の目当ての店は大通に面した一角にあった。周りと比べても一回りは大きな店構えで、看板には大きくアクセルマン商会と書かれていた。表に面したガラス張りの飾り棚には、それだけでも商会の財力が伺えるのだが、宝石の類や、金銀細工、何かよく分からないが高そうな物が並んでいる。普段なら絶対に来ないようなお店だ。そんな高級店の扉を僕は恐る恐る押し開けた。

「いらっしゃいませ。本日はどの様な御用件でしょうか?」

市場の喧騒とは違った静かな空間だ。飾りっ気はないが高い生地を使っていそうな服を着た男が声を掛けてくる。

「あの…、僕…いえ私、レオナード・ブランシェと申します。パズール君の友人で商品をお願いしていたのですが…。」

「あぁ!パズール様のお友達ですね!お伺いしております!こちらで少々お待ち下さい。

そう言って男は僕らを大きなソファへと案内して、二階へと消えていった。

店内が煌びやかで実に落ち着かない。僕はキョロキョロと周りを伺ってしまう。隣を見れば、こういう雰囲気の店は好まないはずのアルは、泰然と腰掛けていた。どうやら好まないのと、慣れているかどうかは別の話らしい。

「お待たせレオ!こっちだよ!上がってきて!」

そう時間もかからずパスが二階の踊り場に姿を見せる。僕とアルは立ち上がって階段を上っていく。

「えーと、こちらはアーノルド・ラングラン君。でこちらがパズール・アクセルマン君。」

パズと合流したところで二人をそれぞれに紹介する。

「話は聞いてるよ。パズって呼んでね!」

「こちらもよくレオから話を聞かせてもらってるよ。俺もアルと呼んでくれ。」

二人は慣れた手つきでしっかりと握手を交わす。これが上流階級の息子の所作なのだな、きっと。

「しかしレオ、話し方変だぞ?」

そ、そう?とどもる僕とうんうん頷いているパズ。こちらだって緊張くらいするわい…。

パズに連れられて入ったのは二階の奥の小部屋だった。応接室なのか柔らかい絨毯が敷き詰められ、大型のソファがコの字に配置されている。室内の調度品に派手さはないが、簡素な感じも受けなかった。全てが品の良い感じがする。

「遅かったわね。待ちくたびれたわ。」

ただし、そこには予想を覆す先客が居た。鮮やかな赤い髪の少女

「エレン!」

そう、エレンがソファに座って優雅にお茶を楽しんでいる。向かいにもう一つティーカップがある所を見ると、パズとお喋りでもしてたのか…?

「どうしてこんな所に?」

「あら?私が貴金属店に来たらまずいかしら?」

「いやいや、そういうわけじゃないけど…。ここにいるのはさすがに予想外だったから…。」

ふふふ…と悪戯な笑みを浮かべているエレン。見るとパズも同じように悪戯っ子の顔で笑っている。

「実はもうすぐティアが誕生日なのよ。それでプレゼントを探していたのだけれども聞けばパズの家で宝石や金銀細工を扱ってるっていうじゃない?それで見に来てみたの。そしたらこれからあなたが来るって言うから驚かせてやりましょう!ってね!ところでその隣の人が…。」

「あ、ごめんごめん!アーノルド・ラングラン君。アル、こちらはエレンフィール…。」

「エレンフィール・ルメールと申します。エレンと呼んでくださるかしら?」

そう言ってエレンは立ち上がり、片足を引いて優雅にお辞儀をする。そういえばエレンもれっきとしたお嬢様だった。

「アーノルド・ラングランだ。私のこともアルと呼んでいただけるかな。」

アルはアルで片手を胸下、片手を背中に回した略式の騎士の挨拶だ。パズの時とは纏っている空気が全く違う。あれ?僕、舞踏会に来たんだっけ?

一瞬の微妙な空気のあと、アルがこほんと咳払いを一つした。

「あー…、エレンでいんだよね?堅苦しいのは無しにしないか?どうも苦手でね。」

「私も賛成。アルが話の分かる人で良かったわ。」

「…これが上流貴族の嗜みか…。」

一気にいつもの雰囲気に戻る二人に僕は毒気を抜かれた気分だ。ちなみにパズは呑気に四人分のお茶をメイドにお願いしていた。図太いというか何というか…。


「ところでレオの注文の品はこちらでよろしいかな?」

四人分のお茶が届いて、一息ついたところでパズが横にあった箱を開いて皮袋を取り出した。中から出てきたのは半透明の石で形も大きさもバラバラだった。

「これは…輝光石かしら…?」

「さすがエレン。その通りだよ。うちは魔石の類も扱うからね。これくらい手に入れるのはそんなに難しくないよ。原石だしね。」

「輝光石?なんだそれは?」

エレンとは対照的に疑問顔のアル。

「そっか、騎士科のアルには縁の無いものだもんね。これは魔力に反応して光る石なんだ。まぁ光るだけなんだけどね。」

僕は一つ石を手のひらに乗せて持ち上げてみた。そっとその石に意識を向ける。すると内側から石が輝き始める。おお!とアルから感嘆の声が漏れた。

「俺にも出来るのか?」

「うーん…、どうだろう?試してみたら?」

そう言ってパズがアルに石を一つ手渡す。

「その石に意識を集中して。」

「意識を…集中…?」

よく分からないといった顔でアルはじっと石を見つめ続ける。すると本当に微かに小さな光が灯った。

「お!できた!」

「魔力は基本誰でも持ってるから。光らせられない方が珍しいわよ。貸してみて。」

喜ぶアルを尻目にエレンが石を受け取る。すると石全体が光り出した。

「なんでこんなに違うんだ?」

不満げな顔のアルと得意げな顔のエレンが並んでいる。

「えーとね、それは魔力量だったり、魔力を操作する能力の問題なんだ。」

僕はクロの受け売りの説明を始めた。

「エレンの言う通り、誰でも多少の魔力は持ってるものなんだ。持っている量に個人差はあるけど。」

「あれか?生まれた時から決まってるってやつか?」

「…まぁそれは諸説あるみたいだけどね。」

アルの言葉に僕は濁して答える。幸いここには突っ込んでくる人間は居なかった。

「だから輝光石を光らせる事は出来る。でも明かりを大きくするには魔力を操作する能力が必要なんだ。」

僕は気をとりなおして説明を再開する。

「そうか、俺は魔力操作は下手って事か。」

アルがちょっと落ち込んでいる。私が上手いだけよ。と威張っているエレンを無視して僕は説明を続けた。

「向き不向き、得意不得意は誰でもあるさ。足が速いやつもいれは、手先が器用なやつもいるだろ?それと一緒さ。魔力操作ではエレンに勝てなくても剣術なら負けないだろ?」

そうだな!と一転嬉しそうな顔のアルと不満顔のエレン。

「その性質を利用して、魔法科の入試に使われたりもするんだよ。エレンくらい光らせられたらまず間違いなく一発合格だね。」

そんなことないわよぉ!といって一気に破顔するエレン。これでアルとエレン、二人とも機嫌が直った。この二人が並んでると忙しいな…。

「ところでどうして輝光石が必要なんだい?何に使うの?授業でも今のところ使う予定は無いよね?」

パズが疑問を口にする。

「じ、実家で使うものでね。ほら、暗い所とかにもっていくと便利だろ?」

僕は用意していた言い訳を使った。実際、冒険者などは洞窟などに輝光石を持っていくことも多い。煙も熱も出ないから重宝するのだ。そのせいか誰も疑うものは無かった。



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