表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/142

1.クロ

第一章あらすじ

中身が元魔王とは知らずに使い魔として召喚を果たしてしまう王立学園、魔法科一年生の少年、レオナード。この出会いが少年にもたらすものは…!?


………えよ……


我は………を…


(うるさいなぁ。人が折角ゆっくり寝てるのに。)


…汝……なり…


……応えたまえ


(だがらなんだよ!何の用だよ!?)


その途端、それまで真っ暗だった視界に光が差していった。




ゆっくりと目を開くと、そこには呆然とした顔の男のガキが一人。癖のある柔らかそうな栗色の髪と同じ色合いの瞳を大きく見開き、ポカンと口を開けている。

「やった…、やっと、やっとできたー!!」

呆然とした顔から一転、歓喜を爆発させる。

「にゃあ!(うるせぇ!)」

あれ?今、猫の声がしなかったか?

そこで自分の体の感覚がおかしい事に気づく。なんというか、まず全体的に小さい。そして手がふさふさと黒い柔らかい毛に覆われていて手の平には柔らかいピンク色の肉球が…

(…肉球!?)

今度はこちらが呆然とする番だった。

「おお!レオナード君、やりましたねぇ!」

男のガキ…レオナードという名前らしい…の後ろから小さな眼鏡を掛けた初老の男が声を掛けてくる。

「ハウゼル先生!やりました!出来ましたよ!」

「居残り補習した甲斐がありましたね。さて、どれどれ?」

そう言っておっさん…ハウゼルは眼鏡を掛け直して覗き込んでくる。

「ん、これはシャ・ノワールですね。」

「シャ・ノワール??」

(シャ・ノワール!!)

おっさんの言葉に俺は体を硬直させ、レオナードは首を傾げる。

「ええ。()()使い魔です。」

おっさんがにこやかに答えた。





(まさか、まさか、まさか、俺は猫になってしまったのか!?確か先程まで勇者うんたらどもと戦って、それから自爆魔法を使って…それから…)

頭が混乱してくる。

いや、まんま猫ですね。猫ですねー。あははは。

なんてガキとじいさんは笑っていたりする。

(待て待て待て、さっき使()()()と言ってなかったか?)

俺は自分が複雑な文字や記号の書かれた地面の上にいる事に気がついた。

(これは…召喚用の魔法陣か…。使い魔の召喚を行なっていたということか…。)

目覚める前に聞こえたのはレナードが使い魔を召喚する声だったのだろう。それに俺が()()()しまったのだ。

俺は魔法陣からそっと足を出してみようとするがピシッと見えない壁に弾かれる。

(やはり、召喚物を拘束する魔法が組み込まれている!)

「おやおや?レオナード君、最終契約の名付けはまだかな?ちゃんとしておかないとせっかくの呼び出せたのに逃げられてしまいますよ?」

(やばいっ!!!)


使い魔を召喚した場合、名前を付ける事によって最終契約がなされる。そうなれば俺はこのレオナードとかいうガキから逃れる事が出来なくなってしまう。

必死で見えない壁を引っ掻いてみるが用をなさない。 (くそっ!この体、魔力が少な過ぎる!)

元の体であれば一瞬で破壊出来そうなちゃちな魔力障壁も、猫の体では小さな穴一つ開けることすら叶わない。

「わわっ!えーと、君の名前は…ええい!」

俺の必死な様子を見てレオナードが慌てふためく。

(やめろ!俺にはれっきとした名前が…)

「クロだ!君の名前はクロだよ!」

(ヤメローーーーー!!!)


その瞬間、俺の中の何かがスッと抜け、逆に見知らぬ何かが入り込む感覚が生まれる。こうして、俺のもともとの名前は永遠に失われてしまったのだった…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ