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14.それぞれの変化

「レオ!久しぶり!真っ黒だねー!」

こいつは相変わらずまあるい、まるで大きな赤ん坊だ。

「やぁ、パズ!久しぶり!相変わらず…元気そうだね!」

こいつ…一度、腹を見て見ぬふりをしやがった…。

パズと呼ばれた少年は、見事な太鼓腹をしていた。

「いやー、夏に南方に旅行にいったんだけどね…。」

その南方の飯が美味くて肥えたらしい。羨ましい事だ。

「それにしても夏休みの王都は大変だったみたいだね。無事で良かったよ。」

「うん…。まぁ、ね!」

パズが話題にしているのは小鬼(ゴブリン)の王都…いや、この学園襲撃の事だろう。他の生徒達に要らぬ動揺を与えないようにと、あの事件に関わった人間には箝口令が敷かれているはずなのだが…。

「まさがこの学園が襲われるなんてねぇ…。世の中何が起こるか分からないね!」

…まったく意味をなしてないようだ。人の口に戸は立てられずというが…。

見ればレオナードは引き攣った笑みを浮かべている。まぁ他言無用と厳命されているのだし、当事者だし…。なんと答えてよいのやら…。という所だろう。

「それにしてもレオ、本当に真っ黒に日焼けしたね。草むしり、やっぱり大変だった?それに少し痩せたんじゃない?」

「そうかな?まぁ草むしりは確かに大変だったけどね。」

夏休みの間も鍛錬は欠かさず行っていたため、レオナードはかなり日焼けをしていた。確かに初めて会った頃よりは少し痩せたかもしれない。

「それに…クロもちょっと大きくなったよね。もう子猫…とは呼べないかな?」

鞄からちょこっと顔を出した俺の頭をパズが指先で撫でてくる。相変わらずぷにっとした柔らかい指先だ。

そう、成長したのはレオナードだけではなかった。俺の体も少し大きくなった。まぁ猫は普通、一年くらいで体が大きくなるからなぁ。逆にここからあまり変わらないだろうな…。ちょっと憂鬱だ…。


「そうそう!来週の合宿だけどさ、僕と同じ部屋にならない?2人で相部屋みたいなんだよね!」

夏休み明け一つ目の学校行事は校外合宿らしい。朝食時のレオナードとアーノルドの会話もその事で持ちきりだった。学科ごとに週を分けての合宿らしく、魔法科のレオナードと騎士科のアーノルドは別日程だ。


「我が、我が、と皆うるさいんだよ。俺が相部屋相手に欲しいのは召使いとか家来じゃなくて友達なのだが…。いっそ学校の方で勝手に決めてくれないかな…。」

井戸より深いため息をつきながらアーノルドが嘆いていた。大貴族、西方公ラングラン家のアーノルドにはこの手の悩みが尽きない。家が大き過ぎて友達を作るのを邪魔しているのだ。レオナードはそんなアーノルドの唯一、心を許せる友達だった。


「パズとなら喜んで!俺もお願いするよ!」

「馬車もうちから出すから乗るといいよ!学校の乗り合い馬車は窮屈で最悪らしいし。」

「え?いいの?」

「いいよいいよ!どうせ行き先一緒だし!一人じゃ退屈しちゃうし!」

「じゃお言葉に甘えて…。」

確かパズは王都でもかなり大きい商家の跡取り息子だったはずだ。実は商人で魔法を習う者は結構多い。野盗から商品を守る為にもそうだが、冷気魔法で食品を保存したり、金庫や高価な商品を守る結界魔法を使ったりと商売上で利点が多いのだ。


何を持って行こうか?なんて二人で会話をしながら教室へと向かう。まるで遠足にでも行くような雰囲気だな。


こうしてレオナードの王立高等学校一年生の後期が幕を開けたのだった。


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