追憶 シオン
神託後の大樹の谷底に堕ちたシオンをメインにしたお話しです。
本編では無いのでCパートは有りません。
…起きろ 起きろシオン…
『グ、この…声は…』
…さっさと起きろシオン このままでは墜落死だ。それだけでは無い…
『…墜…落…死…?…はっ!!?』
ブオォォォォォ!!!
『く、暗い!!本当に落下しているのか?まるで飛行中の様な風当りだ』
…暗闇で感覚でも狂ったか?貴様は谷底に堕ちている最中だ…シオン…急げ、我では間に合わん…龍化しか術が無いぞ…それに貴様の体は…
『…っな!!右腕が…動かない…』
…右腕だけではない…我の加護だけでは持たぬ、つべこべ言わずに龍化をしろ…
『し、しかし龍化は!!』
…このまま仲間と共に墜落死する気か?助かる術が他にないと言っておるのだぞ…
『仲…間…ルークとマリアか!!』
…空を飛ぶのは貴様の仕事であろう。我と同化し、助けてやれ…
『まるで悪魔の囁きだな…だが、助けるのが俺の仕事』
…それでこそ我が認めた龍騎士だ。その魂、もらい受けるぞ…
『そこまで許すつもりは無いけどな!!…
行くぞッ!!漆黒龍ダークネスブラックデビルドラゴン!!』
…頼むからその名で呼ぶな…
『ハハ、偶には良いだろ?相棒』
キュィィィィィィン!!!!
バサァー!!!!!
―――――――――――――――――――――――――――
ブオォォォォォ!!!
「嫌ァァァァアアアアアァァァァァァアアアアアァァァァ!!!!!」
ブオォォォォォ!!!
「マリアァァァァァアアアア!!!!!」
ピカーン!!
「ルークぅぅぅぅううう!!」
「マリア!!!それはロザリオか?絶対に離すなよ!!手を伸ばすんだ!!!」
「んぐぅ!!!」ガチ
谷底へ堕ちるルークとマリア。暗闇を照らすロザリオの光が二人の手を繋ぎとめる。
「ルーク…私達このまま…」
「マリア…最後に君とこうして居られて良かったよ…君と出会えて良かった」
「ルーク…こんな時に…でも私もよ…」
「もしお互いが生きて帰れたら…結婚しよう」
「アンタ馬鹿なの?こんな時に…それに私達は聖職者よ?」
「こんな時だからね。僕達は死んだ事になり、国から解放され、普通の人として幸せに暮らすのさ」
「フフ!!何処までも馬鹿なのねッルークは!!でも…もし本当に生きて帰れたら…そのプロポーズ…受けて…あげるわ//」
「マリアッ!!」ニギッ!!
「ルーク…」ニギッ!!
(( 「神の御加護が…有らん事を…」 ))
バサァー!!!!!バサァー!!!!!
シューン!!ガチッ!!
「な、何!?」
「何かに…掴まれた!!」
『神で無くてすまないな、バカップルよ』
「そ、その声はシオンなのか!!」
「嘘!!私達を庇って斬られ…」
「このまま三人で墜落死なのか…」
『そんな訳無いさ』
バサァー!!!!!
「翼の音!?」
『今頃気が付いたか、マリア、ロザリオに魔力をもっと込めてくれ。視野を確保するんだ』
「わ、分かったわ!!」
キュイーーーン!!ピカー!!
『よし!!これなら地面に対応出来る!!このまま着陸する』
バサァー!!!!!シューン!!バサァー!!バサァー!!シュトン!!
「し、死ぬかと思ったわ…」
「まるで奈落の底か?…何て深さだ…シオン、僕達を地上まで運べるかい?」
『すまんルーク、今すぐには無理だ…傷の修復が…』
ピカァー!!
「なッ!!…シオン様…その身体は!!?」
「まさかお前、龍化を!?」
『生きる為、お前達を救う為に…な』
「シオン様…」
「取りあえず、暫く此処で治療するよ。少しでも早くシオンを治す。マリア、ストレージから食料とポーションを渡してあげなさい」
「分かったわ!!」
「僕も詠唱に入る、マナポーションも用意しておいてくれ。それにしても…凄いね。良く即死しなかったね」
『それは俺も思う。意識は飛んだ様だが相棒の御かげでこの通りだ』
「この通りって…身体半分が真っ黒じゃないですか…これが龍化なの?」
『まぁそうだな…本来は一時的な強化手段だがこれからはそうも行かなくなる』
「何か悪い事が?」
「そうさマリア、龍化の代償として身体を龍に蝕まれる。そして魂までも喰らい尽くし何時しか人で無くなる。呪いの様なモノだ」
『皮肉なもんさ。だがどの道死ぬ運命だった。お前達を助けられただけで俺は十分さ』
「どこまでお人よしなんだか…さぁ、蓄えて身体を癒そう」
「そうね!!はいコレ!!しっかり食べなさいね!!」
『おいこれ!!』
「マリア…王宮料理をストレージにぶち込んだな…何処までガメツイんだ…」
「美味しい物は娯楽の一つなのよ!!元気もでるしね!!」
『まさか谷底で王宮料理を食べるとはな…』
「なんだかなぁ…」
己を犠牲としたシオンの御かげでルーク達は命拾いをする。そして彼等は地上へ上がる為に深い谷底で数日間の治療に励んだ。シオンの活性化が順調に行き彼等が谷底から飛び立つ日がやって来る。
「シオン、身体の調子は」
『大丈夫だ、問題無い』
「そうか、なら僕達を地上まで頼むよ。マリア、暴れないでね」
「わ、分かってるわよ!!子供じゃないんだから!!」
『明かりは頼んだぞ』
「えぇ、任せて」
ピカーン!!
『では行くぞ!!しっかり掴ってくれ!!…ハアァ!!』バサァー!!バサァー!!
「嫌ァァァァアアアアアァァァァァァアアアアアァァァァ!!!!!」
「ま、マリアぁぁあ!?」
『グ八!!耳が!!!』
堕ちる時同様にマリアが急激な宙への上昇に悲鳴を上げたまま、大樹の麓まで昇りつめたシオン達は地上へと降り立った。
「はぁ…はぁ…とんだ目に遭ったわ…もうこんな事は御免よ!!」
(( 「『それはコッチの台詞だッ!!!』」 ))
「えぇ!!?」
暴れては居ないものの、耳元で叫き続けたマリアにカインとルークが声を合わせていた。
そんな迷惑な事を微塵も感じて居なかったマリアは気が抜けた声で疑問で返すだけであった。
「もういい…これからどうするかだよ」
『そうだな、無事に助かった訳だしな。これからする事は決まっているだろ?』
「シオン様はもうする事を決めているんですか!?」
『何を言っている。決まっているのはお前達バカップルだろ…』
(( 「えぇ!?」「バ、バカップ…」 ))
『とぼけているのか?俺が来た時は【もし本当に生きて帰れたら…そのプロポーズ…受けて…あげるわ//】と大声で話していたのを聞いたぞ?』
「っな!!そそそ、それは!!!あの場での流れよ!!!」
「まま、マリアァァァァアアアア!!!!!!」
「ちょ、ルーク離しなさいよ!!なんで泣きじゃくってしがみ付くのよ!!!」
「そんな事言うからだよぉぉおおお!!!!」
『何処まで馬鹿なんだか…俺が生きている内に…式に呼んでくれよな…』
「シ、シオン…」「シオン…様…」
「マリア…」
「…分かったわよ…命の恩人ですものね」
『ハハ、まるで俺が無理矢理結ばせた見たいだな!!』
「む、無理矢理なんかじゃ…ないわよ//」
「まっマリアァァァァアアアア!!!!!」
「んちょ!!離しなさいよ!!!!なんでまた泣いてんのよ!!!意味わからないでしょうが!!」
『ハハ…やっぱりバカップルだな…』ボソ
『で?やる事は?』
「僕達は此処で死んだ事にし、この国を離れる」
『それで?』
「新しい土地で…結婚し…幸せに暮らすのよ//」
『ヒュー!!!』
「えへへ//」
「アンタね!!」
『さて、この翼は必要か?』
「おい、それって…」
『俺は同化の呪いを解く為の旅に出なくちゃならない。どの道この国から去る』
「心あたりが有るのかい?」
『いいや、無いね!!だが相棒がその望なら有るかも知れんとな。龍化は俺その物だから治せば死ぬが、蝕む呪いなら…とね』
「そう!!だったら一緒に探しましょうか!!良いでしょ?ルーク」
『お、おい!!お前達は先ほど結婚して幸せに暮らすって!!』
「甘いわねシオン様!!私達は聖職者よ!!いつでも式は挙げられるのよ!!」
「ま、マリア…無茶苦茶な…そもそも聖職者は結婚は…」
「結婚すると同時に聖職者を辞めれば良いのよ!!」
『これは酷い話しだな!!!!良いのか?』
「良いでしょ!?結婚してあげないわよ?」
「マリア…君のそういう所も…好きだよ」
「バッカじゃないの!!でも決まりね!!」
『はぁ…この先ずっとこのバカップルを見せられる訳か…。良し、良いだろう。俺達は此処で死に別の誰かとして誕生する。そして俺達は何者にも縛られず生きる。同意のバカ共は俺に掴まり空の旅へと案内しよう』
「なによそれ!!酷いわね!!でも…」ガチ!!
「掴る他ないよね!!」ガチ!!
『そうだろうな!!向かうは中立地帯、魔族大陸と暗黒大陸に囲まれた冒険者の国【アストラルランド】』
「自由の国へ!!」
「いざ行かん!!」
バサァー!!!!!バサァー!!!!!
「嫌ァァァァアアアアアァァァァァァアアアアアァァァァ!!!!!」
(( 「『 いい加減にしろっ!!!!! 』」 ))
ラキュア達がハーバルへ付く頃、シオン達は冒険者の国へと飛び立って行った。




