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29話:潜入の兆し


ラキュア達は午後の大鎌店の準備に取り掛かる事にした。と言っても殆どラキュアだけの確認作業だけで、全く分からないメイビス達はただ傍に居るだけである。


『全く役に立ちませんね!!なんですかこの案山子達は!!』

≪仕方ないであろう、私達は護衛なのだから。それに好き勝手弄られても困るだろ?≫

「アタシは不器用だから何か壊しちゃうかもだにゃ」

「僕はまぁ…何となく…」


…なんだよカインその何となくって!!流れですか?空気読んでみました見たいな感じですか!!…

…そんな無用な空気読むくらいなら手伝って下さいよね!!私の空気を読んでください!!…


ラキュアが一人で奮闘しているとヘイソンが後ろから声を掛けて来た。


「やぁお嬢ちゃん、頑張ってるね…うん…」

『あ!ヘイソンさん!!珍しいですね開店前に来るなんて』

「あぁちょっと今のうちに少し改良しようかと思ってね。今アゴンとデンクを連れてテラスの椅子とテーブルを持ってきて貰ってる最中なんだよ。」

『まぁ確かにスペース空いてますもんね…でもお店被せちゃって良いんですか?何か開くって事ですよね』

「そうだね。そろそろ人が減ってくるのかなと思ってね」

『成る程、それに合わせて前の内装に戻してるんですか』

「ん~ちょっと違うかな。多分普通の客とお嬢ちゃん目当ての客に分かれてくるから、君目当てのお客様達にその場で食事や飲み物でも楽しみながらお嬢ちゃんを見物させてあげようと思ってね」

『え…』


…なんですかそれ…猫カフェか何かですか?私、お店の愛玩商品になってるんですかね!!?…


「まぁどうせなのでお連れのメイビスさん達にも手伝って貰おうと思いまして。ただの荷物運びなので出来るでしょう」

『それなら出来ます!!呼んできます!!』


ラキュアは3人に事情を話し二つ返事で受けてくれたので大鎌カフェ店があっという間に出来上がった。

カフェと言ってもビルビンの食堂から購入した物を持って下のテラスで食べるだけである。そんな改装が済お店も開店する時間となったのだが


『やっぱり日に日に人が減っていますね…行列なんてもうないです』

「みんな白状モノだにゃ」

「そんなものですよ一度やったら大半の人は用が無くなるんですから」

《だが物好きな客はやはり来るものなんだな》


ヘイソンの言う様に物を定期的に切断したい人とラキュアに会いに来る人が居るのだ。


「ラーちゃんのお店にテラス出来たって言うからチケットで貰った飲み物を持ってコッチ来ちゃったわよ」

「あたしもよ。良いわねこうして頑張ってる姿見てるの」

「この前食堂にラーちゃんが居たっていうから来たのに、その日だけだったって言うからガッカリしてたのよね」


テラスに主婦達が集まり食べ物をツマミながら楽しくおしゃべりをしていたのである。


『別にテラス必要無い様なって思ったけどそういう事ですか…』

「えぇ、そういう事です。食堂で働かせる訳には行きませんからね」

『それでヘイソンさんとデンクで追加注文の受け取りして上から下まで配達してると…』

「直接お話しが聞けますのでね。他に割く人員も居ないですし」

「はいラーちゃん、あのテーブルにこれ持って行ってあげてね」


…こんな方法で主婦から情報を得るなんて…でも確かに私でも出来るお手軽な方法だわ…

…お手軽?いえ違うわ!!こんなのはお手軽じゃない!!こんな地雷原に突っ込んで行くなんて…


ラキュアはお店の番をしながらも、客が来ない間はテラスの主婦に絡まれに行き、おしゃべりに付き合っていた。


「にゃぁ、まるで縫いぐるみの取り合い見たいだにゃ」

《あぁ確かに…腕がとれちゃうんじゃないかな》

「見てないでそろそろ助けに行きましょうよ!!」


…カインその通りだよ!!と言うかね、この状況はそこの二人も私にしていた事だからね!!…


お店を両立し、揉みくちゃにされながらも主婦の話題を取り込んで行くラキュア達。大鎌店の方も人が来ない訳では無く、定期的にお客が訪れ、切断する者や大鎌に挑む者は未だに来るので、商売としては小さく儲かっていた。しかしそれはこの大鎌店に関してであり、他のお店の影響には絶大的でシナジー効果を生んでいた。


「ふぅ…ラキュアさんお疲れ様です。片づけましょうか…」

『もっと楽な仕事がしたいですよ~』

「まさか護衛のアタシ等も上から下まで運ぶお手伝いをするとはにゃ」

『それくらい良いじゃ無いですか!!』

《それで情報は何か得られたか?》

『そうですね…ご飯食べてからにしましょうか…』

《ほほう…》

「それもそうだにゃ」

「ソマリさんは早く食べたいって事だけは分かりますよ…」


ラキュア達はお店を閉め、お店の皆といつもの様に晩飯に有りつき、お部屋へと戻った。


「むにゅぁ~食べたら眠気が…」

「駄目ですよソマリさん!!これから情報の整理とこれからを話すんですから」

《それで何か聞けたんだろ?あの場で話さなかったのだからな》

『中々の噂話が…まずですね、兵士の妻たちの噂ですと今日から聖騎士との合同訓練が始まるとかで、やけに張り切ってたわ~見たいな事をですね、共感する様に主婦達が話していました』

《ほほう…どうなんだカイン》

「一般兵士と聖騎士の合同ですか…多分聖騎士達が教官の様に振る舞ってシゴク訓練でしょうね…」

「にゃにゃ…それは可哀想にゃ…」

《やはりそうか…》

『えぇ…なにそれ…』


…張り切ってたんじゃなくて絶望にのたうち回ってたのかな…うわー!とか言ってる所を奥さんにでも見られたんだね。そりゃある意味勘違いしますよ…


《それだけかい?》

『いえまだ有ります。貴族様の奥方から聞いた話ですが、明日の夕方から晩餐会の様な仮装パーティが開かれるそうなんですよ。場所が領主の館らしくて招かれて居るファミリーなら誰でも参加出来るとかで。ファミリーってのが良く分からないんですがね…』

「それは凄い情報ですね…ファミリーとは要するに関係者達の事ですね。貴族関係者だけでなく、護衛の兵士の家族や招待された人々も振るって参加できるんですよ」

『随分オープンですね』

《領主が主催するのは珍しい程の規模だな…だが、もしかしたら私達も参加できるかもな…》

「参加してどうするにゃ」

《アルカードの関係者が領館に捕まっているのだぞ。忍び込むにはうってつけだ。それにこれは仮装パーティだ。変装してもなんら問題が無い》

「な、成る程…流石メイビス様です」

「にゃにゃぁ!!」

『え、私達招待されてないなら忍び込むって事ですよねそれ…危険すぎませんかね…』

《何を言っている。忍び込むならこの機会しかないだろう。》

「にゃら仮装衣装用意しなきゃならないにゃ…」

「衣装ですか…そう言えば荷馬車に乗ってた時に売れ残りの眼帯貰いましたよね…もしかしたらヘイソンさんが持ち合わせて居るかも知れませんね…」

《それはいい。ならラキュアに聞いて貰うしかないな》

『何で私何ですかね!!』

「どう見ても適任ですね…一番慣れ親しんでますし」

「そうだにゃ。アタシ達じゃ怪しさが倍増だにゃ」


…面倒事は私に押し付けている様にしか見えませんが!!お仕事の他力っぷりもそうだし酷いですよ!!…


『そうですね!!私しか居ないですよね!!まったくもう!!』ぷりぷり


ラキュアはヘイソンの住宅に向かう事になった。3階は従業員の部屋であり4階がヘイソン達が住む住宅スペースと成っているのだ。普通の従業員でも普段昇る事が無いその階段を上がって行くと応接間と言った空間に出た。ソコにはベルが置かれていた。


…そうだよね、いきなり上がって誰かの部屋とか無いよね。多分このベルを…さぁこ来い!!


リンリン

ベルを鳴らし扉からハウスメイドの様な婦人が現れた。


「おやまぁこんなお時間にどうされましたか?あなた噂のラキュア様でございましょう。どなたに御用か分かりますか?」


…おぉ、なんかとても和やかな人だ…メイドさんかな?…


小さな子供に対応する様に親切に話しかけてくる女性は誰に用か尋ねて来たのでラキュアはヘイソンに用がある事を伝えると呼びに行ってくれた。暫くすると応接間にヘイソンが現れた。


ガチャ

「お嬢ちゃんこんな時間にどうしたんだい?何かあったかな」

『えっとその…少しお願いがありまして…』

「お願いですか…聞くだけなら只ですからね、何でしょうか」

『実はですね、仮装衣装が有ったら貸して欲しいと思いまして…』


するとヘイソンが驚いた顔して言った


「まさかパーティの話しを耳にしましたか!?」

『あ、え、あ…えーっと…』

「そうですかそうですか…」


…いや待ってまだ何も言ってない!!と言うか言えてない!!…


『ち、ちが!!』

「違うんですか?実はですねウチの商会も招待されていましてね。参加は可能なのですよ。ただお嬢ちゃんは眼の事も有りますし黙っていたんですが…てっきり行きたくなって声を掛けて来たのかと…」


…ななな、なんだって~!?千載一遇のチャンスって奴ですかね!?これなら忍び込む必要は無いんじゃ!!…


『いや、えっとそうなんですしゅ~!!?』

「アハハ…もう夜ですからね、落ち着いて話しましょうか…私の部屋に行きましょう」


…なんかうるさい子供扱いを受けてしまいました…


ラキュアはヘイソンの自室に向かった。


「どうぞ、適当におかけになってください」

『わぁ…え、遠慮なく…」ふか

「それで続きですが、パーティに出たいと言う事でよろしいですか?」

『あ、はい…実はそうなんです…それで衣装を借りたくてお願いしに来たんです…』

「という事はあの方達も行きたいという事ですよね…」

『やっぱり駄目そうですか?』

「いえ、願ったりかなったりと言った所ですかね、商会も招待はされたのですが規模が大きいという事で商会の一部と護衛のみと言った形で招待されたのですよ」


…あれれ、それって人数制限あるって事だよね…


「それでですね、護衛の枠で彼女達に入って貰う分には構わないのです。雇う費用も減りますし、あなた達は強いと見受けられましたのでね。ですがお嬢ちゃんの件も有りましてお願いするか迷った挙句、諦めてたのですよ」

『な、なら是非とも護衛枠で!!』

「えぇ、ですがお嬢ちゃんは流石にその枠では入れないので…私達の関係者としてついて来て貰いますね」

『護衛枠とは違うって事は何か違うんですか?』

「そうですね。行動範囲が違います。護衛は中には入れますがそれ程自由は有りませんので。料理は楽しめますが社交の場としては着いて行けません」


…成る程、私は護衛役には厳しいからメイビス達とは離れて行動するって事だね…どうしよう。でもよく考えたら私じゃ探すの足手まといだよね…ある意味メイビス達は動き安くなるのかも知れない…


『ならそれでお願いしたいと思います!!メイビス達にもそう伝えておきます!!』

「分かりました。それとですね、衣装の件ですが、護衛の衣装は顔のみと成っています。服装はとてもラフな物に限り許可を貰っています。刃物が隠れる事が無い様に配慮した結果なので護衛の装備品はむき出しで分かり安い物に成ってます。」

『目に見える武器ってのも怖いですよ…』

「だからこそ距離を取って行動を制限させて貰っているのでしょう。壁から武装した者が迫って来れば怪しい人だと直ぐ分かりますからね」


…仮装した人が武装してたら危ないじゃん…とか思ったけど暗殺紛いな事は護衛が近くにいても防げるモノじゃないか…なら明らかに危ないのを遠ざけた方が安心なのかね…良く分からないや…


「ですが問題はお嬢ちゃんの衣装ですかね…子供用が無いのですよ…ですがその衣装も十分変わってますがね。他に有りましたらそれを着ていらしても良いですよ」


…あれ以外に可笑しな服なんてないよ!!…


『いえ…これで良いなら…これで我慢します…』

「そうですか…水浴びの時と言いすみません…それでは明日の夕方から馬車の送り迎えと成りますのでお仕事が終わり次第支度をお願いする様に伝えて下さい」

『分かりました!!ヘイソンさん有り難うございます!!それでは失礼します!!』

「はい、おやすみなさい」


ラキュアは部屋を出るとハウスメイドに自室まで送り届けられ部屋に戻った。


ガチャ

『ふぅ!ただいま!!』

「おおラキュにゃんお帰りにゃ!!どうだったにゃ」

「衣装はどうでしたか?手元に無い様ですが無理でしたかね…それとも後日だったり?」

《その顔は良い報告の顔だな…大丈夫なら話してみなさい》


…なんですか良い報告の顔って…私そんな顔してましたか?一体どんな顔よ!!…


『えっとですね、この商会も招待されていたらしくて、メイビス達は護衛枠で潜入出来そうです。ただ顔以外の仮装はダメらしくて武装が分かりやすい恰好で良いとの事です』

「ほぉ!!衣装はいらにゃいのかにゃ」

「分かりやすいですね。隠される必要がないので逆に安心です」

《でかしたぞラキュア!!だが君も護衛枠にはちょっと無理があるような》

『あ、忘れてた。それなんですが…』


ラキュアはヘイソンからの話を粗方は無しメイビス達はそれを了承し仮装パーティの領館潜入をする事が決まり、この日は終わった。

もみくちゃ もみくちゃ

「ほんと可愛いわね~!!」むぎゅぎゅ

「ちょっと貴女ばかりずるいわよ!!アタシにもだかせなさい!!」むぎー

「だめよ!!今は私のモノなんですからね!!」むぎぎー

『やめて~腕が~!!袖が破ける~!!』むぎぎぎー!!


…嫌~またコレだよ~!!いっその事、袖が破けてまた収まってくれぃ!!!…


むぎぎーむぎぎー


しかしラキュアの袖が破れる事は無く、いつまでも綱引きを去れていたのであった。

因みに耐久性100%の園児服である。


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