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始まりの光【2】



視界を真っ白に染められた時、彼女は手を伸ばしていた。しかし瞼を瞬いた瞬間、その真っ白な視界は爽快な景色へと変わって居た。


『みんなッ!!…って、えッ?な、なにコレ…どうなってるの…みんなは!?』きょろきょろ


見渡す限りの青と白、少し見上げれば真暗な空と数多に輝く小さな光、下からは遠く映し出された海の様な雪の様な大地。それはまるで、宇宙から地球を眺める光景であった。


『綺麗すぎでしょ…夢?移り変わりが早すぎて夢にも思えないけど…もしかして今までのが全部が夢だったり…と言う事は遅刻はチャラにッ!!にしてもコレ…浮いてるの?私浮いた事ないからどんな感覚か知らないけど…明らかに脚ついてるよね』


コツンコツンッ!!

「見えない道ですかね…RPG特有の隠しルートですかねッ!!こ、恐ッ、見えそうな道無いの?」


地面に足が付く感覚がはっきり分かる。どこまで続くか分からないこの景色を恐る恐る歩き、ふと振り向く。するとそこに、この景色とは不釣り合いな横開きの扉だけがポツンと配置されていた。


『…どう見てもアソコしか行く場所ないね…行けって事でしょ?そうでしょ?お願いだから途中で落ちたりしないでね…』


コツンコツンッ!!コツンコツンッ!!

『お…意外と平気…。よおし…このまま進んで…お邪魔しまーす…何方か居ま…』ガラガラガラッ!!


《グワッ!!グワッ!!グワッ!!グワッ!!ゲロゲロゲログワッグワッグワッ!!ホーッッホッホッ!!じょうずじょうずッ!!》

『え、えぇ…何これ…』

《ぬ、ぬふぉッ!!客人じゃとぉ!!?》

ピピッ!!ヴィン!!シュッ!!ガチャガチャンッ!!ヌギシュルルッ!!

《よくぞ御出でなさったッ!!さぁさぁ入るが良いッ!!》


…何この状況…。ちょっと待って、意味が分からないよ。一先ず整理しよう…。えっとまず、ドアを開けたら目の前に後ろ姿のお爺さんが居て、お爺さんはお遊戯会が流れたTVを見てタンバリン叩きながらカエルの歌を歌っていると…。そして私に気が付いた途端、TVを消しタンバリンを投げ捨て…脱ぎきれて無い謎の衣装が足を絡めながら手招きしていると…これ明らかにヤバイです…


『お、お邪魔しました…』ガラガラッ!!

《ちょ、ちょっと待つのじゃッ!!ワシは怪しいモノじゃないぞッ!!》

『いえ、何処からどう見ても怪しいです…説得力の欠片もありません…』

《これくらい若い保母さんなら当たり前じゃよッ!!》

『それ…保母さん所か保父さんですらないですよね…』

《わ、ワシの趣味だからどうでも良いのじゃよッ!!》

『趣味って認めちゃったのね…はぁ…さて私はっと…』

《まー待て待てッ!!何処へ行くつもりかしらんが此処に来てしまっては他に行く場所などないぞッ!?見たであろう、あの果てしない宇宙(そら)を…》

『うぐ、それは…』

《お主には色々話もしなければ成らない様じゃしの》

『弁解についての話なら結構ですので…』

《違う違う…そうでは無い。簡単に言うと、お主は今死の間際に居ると言う事じゃよ》

『え、ちょ…え?今何て?』

《聞こえんかったか?お主は生死を彷徨って居るって事じゃよ。えーっとどれどれ…》ザササッ

《な、なに?と言うかそれちゃんと脱いでコッチ来てくれませんかね…》

《すまんすまんッ!!なかなか脱げなくてな…ふむ、神井真弓さんと…ほれポチットな》ピピッ!!ヴィン!!


お爺さんは足に絡まった脱ぎきれてない衣装を引きずり、玄関前に居る真弓を凝視し始めた。その後、真弓のフルネームを言い当て、リモコンを握りTVを付けだした。


『何故テレビを…と言うか何故私の名前を…』

《それはワシが神様だからなッ!!ほれアレを見るのじゃ》


…何言ってんのこの爺…自分で神様とか…。変態だからって言われた方がまだ納得いきますよ…


『誰か寝てる?呼吸器つけてるけど…』

「なんじゃ、自分の顔も分からないのか?アレは真弓さんの肉体じゃぞ」

『え?私?肉体?』

《アレはお主が今置かれておる状況じゃ。お主は現在、生死を彷徨って居る》

『分からない事だらけですよ!?何でそんな事になってるの?なんでこんな場面TVで見れてるの?と言うか今の私なにッ!!』

《ほれ、気になってしょうがないじゃろ?いつまでもソコに居ないでコッチに来るが良い。話しが長くなるからな》ポンポンッ!!


お爺さんはそう言って、真弓の肩を押し和風作りの室内へと招いた。


コンッ!!ゴトッ!!

《ほれ、お茶と菓子じゃ。さて、先ず何が起きて真弓さんがこう成ったかからじゃな》

『あ、どうも…お願いします…』ズズーッ

《それと、これを着ておくと良いぞ》バササッ!!

『良いぞと広げた服が園児服ってどうなの…なんでそんなの着なくちゃいけ無い訳…』

《まぁお主が素っ裸のまま爺と長話したいと言うならワシは止めないのだがの…》

『す、素っ裸ッ!?』

《なんじゃ…まだ気が付いておらんかったか…周りが絶景過ぎてそこまで気が回らんかったかの…》


――― 『ぎやぁぁぁぁぁぁッ!!』 ―――


…な、なんで私、裸なのッ!!肌寒いとか暖かいとか全く感じ無かったよッ!!わ、私…裸で変態爺と会話してたなんて…この格好じゃ人の事言えないよッ!!…


『他の服無いのですかッ!! もっと普通の服ッ!!』

《なんじゃ他のが良いのかッ!!こんな物とかこんなのもあるぞ?》


…なんでコスプレ衣装物ばかりなんですかねこの変態爺は…そんなはだけたナース服やチャイナ服をこの私が着るとでも思うのですか…それにこれ…胸がブカブカじゃないですかッ!!…


《もうそういう服は結構ですッ!!普通の服はないのですかッ!!》

《そうじゃな、ワシのステテコパンツとボロボロのシャツくらいかの…》

『こ、この爺は…もうその園児服で良いですよッ!!一番まともですよッ!!なんでこんな爺に痴女染みた服着て見せなきゃいけないんですか…全くもう…』シュルルッ!!


この際開き直った真弓はコスプレ衣装では有るが、サイズも合いそうで一番露出の少ない園児服を小声で愚痴垂らしながら着こなして行った。


《序でにこれも渡そうかのッ!!ホホッ!!よく似合っとるぞッ!!》

『このクソ爺…何故に肩掛けポーチまで…これ必要ないよね?明らかに趣味に走ってますよ…。裸で居た方が良かったのかしら…』ぼそ

《さて着替えた事じゃし、話を進めようかッ!!》


何処へ行く訳も無い筈が、何故か園児が持つ肩掛けポーチを持たされ、着替え終わった真弓はちゃぶ台の席へ再び座り直し、お爺さんは何故か満足気にTVのリモコンを手に取った。


ピピッ!!

《さて、真弓さんが見たで有ろう白い光の事だが…アレは外部から干渉された攻撃による現象じゃ。お主が目にした後はこの通りの惨状じゃ》


――― ドガァァンッ!! ―――


『何これ…グランド抉られてますよ…攻撃ってミサイルかなにか?にしては可笑しいよね…』

《外部からの干渉と言ったじゃろ?お主達が受けた攻撃は別の世界からの攻撃じゃ》

『ごめんちょっと意味が…』

《なんじゃお主ゲームとか好きなんじゃろ?これくらい分かりそうな気もしたが…。まぁ兎に角じゃ、お主は別の世界からの攻撃に巻き込まれこうして生死を彷徨って居るのじゃよ。そしてお主の魂がこうしてワシの所へとやって来た訳じゃ》


…な、何それ…そんな大事な時に私の魂が身体から離脱して変態爺と裸でお茶してたって訳!?…


『色々と話しがぶっ飛んでますよッ!!と言うか呑気にお茶してる場合じゃないですッ!!今すぐ私を帰して下さいッ!!』

《すまんがそれは無理じゃ》


――― 『何でよッ!!』 ―――


《ワシ達神様にも色々と事情が有るのじゃよ。しいて言えばお主の魂は輪廻の環に帰れなくなったと言う事じゃ》

『輪廻の環ってなによ…私は身体に帰りたいのですが…』

《その身体に帰る為の道の事じゃよ》

『帰り道が無いって事?なんでそんな事になってるのッ!!納得がいくように教えてッ!!』

《仕方ないの…ところで人は生涯を終えると肉体は(地球)に帰りその魂は何処へ向かうと思う?》

『え…いきなり質問されても…。天国と地獄…』

《大体合っておるのッ!!》

『え?嘘でしょ?適当なんだけど…』

《不十分では有るがなッ!!厳密に言うと違うが天国とは新たな命、地獄とは永久の死を意味する》

『お、おう…まったく分からん…』

《その班別をどうするか、なのだが、普段はワシとは違う神によってその査定が下される訳じゃ。ではそれがどういう結果で天国と地獄を分けて居るかと言うと、その生涯を末、己の魂に溜まった穢れ(けがれ)の密度によって処理が変わって来るのじゃ。魂の穢れが少なければ、そのまま新たな魂として生れ直せるのじゃ》

『あ、それ転生って奴ですね?』

《まさにそうじゃ、だが穢れが溜まるとどうなると思う?》

『この流れだとアレですよ、転生出来なくなるって事でしょ?』

《最終的にはそうなるが過程が違う、穢れが溜まった場合でも転生はされる。しかし、その汚れきった魂は綺麗に取り除かれるのじゃよ。それを魂の浄化と言う。浄化が済んだ魂は普通の魂より清らかに転生される訳じゃが…此処で一つ問題が起こる》

『問題…?』

《浄化とは魂の死を意味する。元が大きな魂でも浄化を繰り返せば次第に魂の器が小さくなり、最終的には転生先を失うのじゃよ。自我の有る生命体として終わる事を意味する》

『自我の有る生命体…』

《そうじゃな、例えば小さな虫とか細胞の様な生体じゃが、それは本能体で有り魂とは呼べなくなるのじゃよ。そう言った魂が本能のままに住み着いていると次第に人の魂ではない何かに成ってしまうのじゃ》

『人がそのうち虫に転生って…ある意味自我無くて良かったと思いますが…。その人では無い魂とは?』

《そうじゃな地球で言うと、人を害する悪霊などと呼ばれる奴じゃな…》

『ほ~…成る程…悪霊…幽霊とかポルターガイストとか…成る程ね…』

《そう言ったナニカに成らない為に地球には閻魔と呼ばれる神が穢れ切った魂を虚無へと返しておるのじゃよ。それが地獄と言う事じゃ》

『ふむふむ…と言う事は、私の魂は浄化で小さく成って肉体に戻れないと?でも魂が小さくなっても猫ならまだ転生できそうじゃないですかねッ!!!』

《なんじゃ…お主はそれで妥協できるのかい…》

『まぁ可愛い猫とかなら大歓迎だよね…』

《随分前向きな魂じゃな…だがそれも叶わんのじゃよ》


――― 『何でよーッ!!!!』 ―――


《お主は先ほど【外部からの攻撃】を直撃したろ?あれには魂を浄化する効果が有っての…お主の魂の器が消滅したのじゃよ。器が無いと言う事は、輪廻の環に帰る事が出来ず、身体どころか、転生する事すら出来ないと言う事じゃ。》

『な、何て事を…要するに私は肉体に戻れず猫にもなれず、虫にすら成れず地獄行き決定とッ!!』

《此処までの話しを纏めるとそういう事になるのう》

『そんなの嫌だ嫌だッ!!』

《そうじゃろう、そうじゃろう…そこでじゃ、実はお主には別の転生先が用意されてあある。お主の魂が別世界に干渉した事で、干渉元の世界へと魂が行く事が可能になっておる。お主の今の器は言わば地球専用じゃ。だが新たな世界へ行けば新たな器が用意されお主の魂は保護される訳じゃよ》

『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!』

《しかし、その世界では先ほどの様な大規模な攻撃が日常茶飯事とまでは行かないが地球より遥かに危険な世界なのじゃよ。地球では空想を描いた生き物達が、その世界では沢山蔓延っておる、そしてそれを倒す為に戦う戦士や、その戦士達を倒す魔獣、そんな危険な世界を平和へと導かんとする勇者や、それを阻む魔王などがその世界には沢山存在するのじゃよ…今の環境を考えると、勧めたくは無いが…これ位しかお主の魂を救う方法が無いかのう…どうかね…》

『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!…ん?今何て?』

《お主の魂を救う方法が他に無いって事じゃ》

『違うそこじゃないッ!!』

《今の環境を考えると勧めたくない…全く別な世界って事じゃ》

『その前ッ!!』

《えーと、世界の平和を導かんとする勇者や、それを阻む魔王が世界に沢山存在して危ないと言う事じゃが?》


――― 『キタ――――!!』 ―――


《な、なんじゃ急に…》

『私、勇者デビューしますッ!!行きましょう、その世界へッ!!』

《何だか妙な切り替え方じゃが…大丈夫か?ちゃんと話は聞いていたか?とても危ない場所だぞ?》

『選択肢なんてほぼ無いのでしょ?だったらその世界に行くしか無いでしょッ!!』

《ま、まぁそうなんじゃがの…ならお主をこれから異世界へと送り届けよう》

『やったーッ!!あ、勿論勇者とかにさせてくれるんですよね?ねぇ!!』

《そういうサービスをしている()は居るからな…だがワシは今そんな事しとらんぞ?》

『出来るんでしょ?やってないだけでしょ?』

《まぁそうなんじゃが…》

『ならやりましょう』

《うーむ…折角の客人だしのう…。仕方ない…ほれ、少し目を瞑りなさい》

『目?何故ですか?』

《勇者に成る為の力が欲しいのじゃろ?良いから瞑りなさい》

『そ、そいう事なら…』


お爺さんは真弓のオデコに手を当て何かを籠め始めた。オデコに暖かい感覚が伝わり始め若干瞼が眩しく感じて居た。


ポワーンッ!!

《ふむ…可笑しいのう…上手く注げぬ…引退したから鈍ったかのう…ふんぬッ!!》

『お爺さん…まだでしょうか…頭が熱くなってきました…』

《おおっとッ!!すまんすまんッ!!まぁこんなもんで良いじゃろ…》

『それで具体的に何を私にしたのですか?』

《うむ、簡単に言うと、向こうの世界環境に馴染むよう魔力と呼ばれる物を与えたのじゃよ》

『その魔力って…環境に馴染む事と関係あるのですか?』

《大ありじゃよ、勇者の力には魔力が不可欠なのじゃ、そして魔力が無ければ体調バランスを崩す事もあるのじゃよ。地球人には魔力と言う概念が無いから必要無かったが…。今の地球人が生身で向こうに行けば、環境に馴染めず風邪に掛かり続けるような物なのじゃよ…》

『ふ~ん要するにこれで私は健康のまま勇者になれるって事で良いのでしょ?』

《まぁそういう事かのッ!!ホッホッホッ!!》

『やったーッ!!異世界ッ異世界ッ♪私は勇者ッ私は勇者ッ♪』

《随分張り切りおるの…と、その前に…お主の身体とはこれでお別れじゃが最後に少し見ていくか?》

『私の最後…そうだね…少しだけ…』

《そうか、では…》ピピッ!!


ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…ピ

『…』

《どうじゃ?最後に見れて良かった人は居たか?》

『居ない…姫乃や祥子、亜美達は?私の大切な親友なの…どうなったか分からない?』

《すまないがお主に関係ないモノは映し出せん。どうなったまではワシには分からんのよ》

『…』

《ほれ、あの生徒何かを大切そうに持って居るぞ…きっとお主のじゃなかろうか》

『ちょ、それ私のカバン…というかそれッ!!私の大事な日記ッ!!あっやめてッ!!』

《なんじゃ日記なんぞ持ち歩いていたのか…おや、担任が日記を奪ったぞ》

『せ、先生ッ!!』

《と思ったらそれを読み始めたのッ!!》

『せ、先生ッ!?』

《喜怒哀楽が激しいのッ!!》

『えぇまってッ!!普通、人の日記読まないよねッ!!と言うか私がこんな状況なのになんで日記なんか読む訳ッ!!意味わからない、と言うか止めてッ!!本当に止めてッ!!それだけは読んじゃダメだってッ!!私のッ!!私のッ!!』

《何を今更慌てておるのじゃ、お主の遺品は誰かしらに手が行くモノじゃよ。日記だっていつ読まれるかの問題じゃ》

『そういう問題じゃッ!!アレは死ぬ前に消しておきたい黒歴史なのッ!!私が振る舞ってきた淑女的人生が台無しになっちゃうのよぉぉぉッ!!』

《ホホホッ!!なんだか知らんが隠し事は良く無いのう。だが安心しなされ。あの担任、鞄に仕舞った様じゃぞ…回し読みされる事は無いようじゃな》

『せ、先生ッ!!でも読まれた事には…うぅ…』

《これ以上は逆に毒の様かの…真弓さんや、もう行くか?》

『い、行くッ…私…もう行くッ!!姫乃達は居なかったし、見るんじゃ無かったッ!!』

《ホホホッ…すまんの…本当にすまんの…。お詫びと言っては何だが…お主が役立てそうな物を贈るとするかの》

『お、お詫び…』

《向こうで役に立つアイテムじゃよ。勇者になるのなら必要じゃろうて…お主に見合った物が確かその辺に…》ガサガサ


そう言ってお爺さんは物が詰まった押し入れから色々と箱を取り出していた。


『私は伝説の武器を手にし勇者の階段を駆け上るのねッ!!ワクワクして来たッ!!』

《はて、この箱のどれかだったが…これか?違うの…こっちかッ!!おお有ったぞッ!!》ドスンドスンッ!!

『随分箱を並べましたね…それでどれですか?』

《これじゃこれ、さて、久々に門を開くとするかのう…。えーと、どの鍵だったかのう…おおッ!!確かこれじゃッ!!》ガサガサ…


またしても押し入れを漁り出し、光沢のある黒い石を取り出した。


『何ですかその黒い物は…』

《これは世界を繋げる鍵じゃよ、これが無いと移動する為のゲートが開けないからのう。さて、心の準備は良いか?》

『はいッ!!待ちきれない程にッ!!』

《ではゲートを開放するとしよう》ピカーン!!グオォォォン…


お爺さんが黒い鍵を掲げるとその手元が光だし、その場に渦を巻く黒い入口が出現した。その入口はブラックホールの様にただ黒く渦を巻き吸い込まれるのを来るの待ってるかの様な。


『うわぁ…なにこれ怖すぎ…この中入るの?』

《もちろんじゃ、さぁゆくとよいッ!!人々を導く可愛い勇者となれッ!!》

『ん、分かったッ!!勇者真弓ッ行っきまーすッ!!』ピョンッ!!


シュウンシュウンシュウンシュウンッ!!

『あ~れ~め~が~ま~わ~る~ッ!!』シュポンッ!!


《行きよったか…おや、張り切り過ぎて箱を忘れておるぞ…仕方ないの、よっこいしょッ!!フンッ!!》


ゴキィッ!!

《こ、腰…がッ!!》ドテンッ!!


――― ドンガラガッシャーンッ!! ―――


シュウンシュウンシュウンシュウンッ!!シュポンッ!!

《ワシの秘蔵コレクションがッ!!》


お爺さんは箱を放り投げた勢いで腰をやってしまい、ド派手にちゃぶ台をひっくり返すほどの転倒をして見せた。それにより積み重ねて居た秘蔵コレクションとやらの箱がゲートへと倒れ込み幾つかが呑み込まれてしまった。



ガサガサ…ポトンッ!!

《おや、衝撃で別の鍵が落ちてきよったぞ…こ、これはまさか…》

ガラガラガラッ!!

『すまねぇ…誰かいないか…』

《おやっ!!またお客さんかいッ!!このまま考えても仕方が無いの…。客人達よ、取りあえず入りなされ》

『アナタ…』

『よーし、さぁ入るぞ。きっと大丈夫さ』

『はい…おとうさま…』ニギッ

ガラガラガラッ!!


こうして真弓と入れ替える様に新しい客が訪れていたが、先に消え去った真弓にそれらの出来事が有ったなど知る由も無かった。


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