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始まりの光【1】


ここは何処にでも有りそうな都内のアパートの一室。カーテンを閉め切った薄暗い部屋を、起動したままのゲームが照明代わりとして淡く照らしていた。ゲームのBGMが部屋を奏でる中、誰かの声が聞こえ出した。


カチャッ

「お、起きてアルスッ!!あなたの冒険はこれからよッ!!」

「起きてアルスッ!!支度しないと狩場を取られるわッ!!」

「起きてアルスッ!!えっと…あ、続き忘れちゃった//ごめんッまゆみちゃんッ!!」

「お、起きてアルスッ!!あなたの冒険はこれからよッ!!」


ガチャンッ!!

『むにゃむにゃ…ショウコ…狩りはさっきしたでしょ…むにゃむにゃ…』


響き渡る声の先目掛け、布団から探る様に伸ばされ腕が、音源で有るボイレコ目覚ましを叩く。そして彼女は、そのまま寝返りをうち再び寝始めた。暫くしてカーテンから光が差し込み出し、彼女の顔を照らす頃、階段を駆け上る音と共に誰かが彼女の家へとやって来た。


ピンポンッピンポンッ!!ドンドンドンドンッ!!

「まゆ~ッ!!遅刻するよ~ッ!!まゆ~ッ!!」

ドンドンドンドンッ!!

『むにゃ…んはッ!!こ、この声ッ!?』バササッ!!シュルルッ!!


友達の声に飛び起きた彼女は、急いで玄関のドアを開いた。


ダダダダッガチャリッ!!

『ご、ごめん姫乃ッ!!わたし寝てたわッ!!』

「そんなの分かってたよッ!!このまま起きないかと…私、もう行くよ?」

『そ、そんなぁ!!普通待っててくれるよねッ!?ねぇッ!!』

「私まで遅刻させる気?起こしに来ただけでも感謝してよねッ!!」

『うぐぐッ!!』

「それじゃ、教室で待ってるからね?二度寝しちゃ駄目よッ」ガチャンッ!!

『は、はくじょうもの~!!くそぉッ…私も急がねばッ!!』


ダダダダッガササッシュルルッ!!

『確か一限目は体育だった筈ッ!!どうせ乱れるし適当で良いよねッ!!』


化粧に拘りを見せない彼女は、簡易的な身支度をすませた後、寝落ちしたゲームをそのままに部屋を飛び出していった。


タッタッタッタッ!!

『フッ!!寝坊神よッ!!私を…普通のJKだと思うなよッ!!…ぜぇはぁ…普通のJKは…支度にすっごい…ぜぇはぁ…時間かかるのよッ!!』


少々言動に痛さを感じる彼女の名は神井真弓(かみいまゆみ)と言う。極々普通な都会の学校へと通う高校二年生だ。そんな彼女のアパートは学校からそう遠くない、寧ろ近い位置に有る。寝癖のまま走る彼女は、程無くして学校へと到着し教室へと駆け込んだ。


ガラガラガラ!!

『間に合ったぁ…ハァハァッ!!』

「遅いぞ真弓…。ホームルームが始まる前に席についてなさい…」

「まゆ遅ーいッ!!あと少しだったのに…」

『そ、そんな…バカな…』

「まゆみちゃん髪ボサボサだよ…」

『ぇ、あ!!ショウコ後で霧吹き(アレ)貸して!!どうせ鞄に入ってるでしょ!』

「はいっはいっ!!勇者様のお願いですものね♪」

「アルスきゅん寝落ちワロスw」

「ヒーローは遅れてやってくる…か」ボソ

『なんでアンタ達普通に学校間に合ってるのよッ!!寝坊の塊みたいなものでしょッ!!」

「そりゃ、まぁ…」

「あの後俺達…」


(((「寝てねーからなッ!!」)))


『ヘ、平日に…徹夜プレイ…だとッ!!』

「まゆ…あんたも対して変わらないでしょ…」

『寝てしまう事と起き続けてる事のリスクの違いを知らぬかッ!!私はな…私はなッ!!……』

「真弓~いいから席に付けー。いつまで廊下に居るつもりだ、まだホームルームの途中だぞ…。それと1限目の体育だが女性の新任が挨拶に来るから男子はヤラシイ事聞くなよー」

『そんな事いちいち言う先生がヤラシイーッ!!』

「お前は黙ってろ…さて次は教頭からの生徒達へお願いが有るそうだが…」!


ギリギリ遅刻と言う何とも言えない結果に終わった真弓は、渋々席に付き程無くして途中から参加したホームルームが終わった。

彼女を含む生徒達は1限目の体育の為に、体操着の着替えを済ませる中、いち早く着替えを済ませ先にグランドへと付いた一部男子生徒が、グランドの準備と見せかけラインカーの白線で遊び出していた。


「なんか時間余りそうだよな…ちょっとコレで遊ぶかッ!!」

「遊ぶってお前…何すんだよ」

「タケル乗せながら走ったり、地上絵でも描くんだよッ!!」

「地上絵ってお前…怒られても知らねーぞッ!!」

「その時はお前達も一緒だ」

「は、ふっざけんなッ!!www」

「良いからコレに乗れって!!きっと楽しいぜ!?」

「まぁ…確かに楽しそうだなッ!!よっと」


ガタガタガタガタッ!!


「ふぇ~いッ!!」

「やべぇってコレ!!見つかったら怒られる奴だわッ!!」

「壊さなきゃ大丈夫だろッ!!それにこの白線だって消せば問題ないしなッ!!」

「と言うかお前…本当に絵かいてんのか」

「どれどれ…ん、なんかこれ見覚えあるな…」

「これアレだな、ゲームの魔法陣だわ」

「あ~ッアレかッ!!ショウトが良く使う奴だな」


タッタッタッタ

「アンタ達なにやってんのッ!!」

「だめだよ危ないよ?」

「ん、先生きたら…怒られる…よ」

「お、お前達も来たのかよ。丁度いいや、みて見ろよこれ」

「え、これって…魔法陣?」

「ヒメノも解っちゃったかッ!!」

「お前達良く覚えてるなw魔法陣記憶して描けるとか…流石に無いわッ!!」

「まぁ俺が一番魔法使うしな、使い続けてれば自然と目に残るね」

「クール気取ってるがキャラが可愛いマジカルガールなのがなw」

「はっ!お前に言われたくないよ猫耳娘」

「ん、その魔法陣…無駄な才能…美術で生かせばいいのに…」

「それは言えてる~ッ!!」

「私も描けそうな気がするわ…」ガチッ!!


ガタガタガタガタッ!!


(((「えっちょ!?」)))


「ショウコ…アンタはやめなさいッ!!バカが移るわッ!!」

「そんな…ヒメノ…」


暇を持て余した男子が白線で魔方陣を描く事で、次第にクラスの仲良しが集まりだしていた。

彼等はとあるMMORPGにハマっていた。そのゲーム内での仲間でも有ったのだ。ゲームの話しに火が付き始め場が賑やかに成った頃、校庭に真弓が現れた。


『おーい!!皆何してんのー!?』

「ショウト達がラインカーで魔方陣書いたの!!しかもまゆに当ててる例の魔法らしいよ!?」

『例の魔法ってあの命中率悪いゴミ魔法!?』

「まゆみちゃん…実はそれショウトがわざと…」

「おい馬鹿ショウコやめろッ!!俺が殺されるッ!!」


真弓がグランドにいる友達へと目掛け声を張っていると後ろから二人の教師がやって来た。


スタスタスタ

「おや、真弓まだこんな場所に居たのか。早くグランドの中に行きなさい」

『ご、ゴリ先ッ!!あれ?その方ってもしかして…』

「あぁ、保健を教える事になる新任の飯島華夜先生だ。今日は体育だが紹介序でに怪我が無いか見る事になった」

「ちょっと挨拶が早いけど宜しくねッ」

『う、うん…それにしても何だか二人、距離が近いですね…』

「あわわわッ!!」

「あ、いやコレはッ!!」

『とても怪しいですね…』

「さ、さぁそろそろ始めるぞー!早くグランドにはいりなさい」

『はぁーい…』


スタスタスタ

『ヒメノ達まだあんな場所で馬鹿やってる…ってあれ?何だか白い靄が見える様な…』

「どうした真弓、立ち止まって…トイレか?行くなら今の内だぞ」

『ち、違いますよッ!!…グランドの霧凄くないですかね?だんだん濃くなってますよ…』

「霧?何を言ってるんだ?霧なんて出てる筈ないだろ…」

「大丈夫かしら…」

『うそッ!?…霧…というか塵みたいなッ!!それに何かが淡く光って漂ってますよッ!!』

「真弓…お前寝不足か?輝夜、すまないがこの娘を保健室まで送ってやって来てくれ…紹介は後だ」

「そうね…わかったわ、さぁ行きましょ?」

『ま、待ってッ!!私正常だよッどこも悪くない筈ッ!!確かにちょっと寝不足だけどッ!!』

「駄目よ?寝不足は女の天敵なのよ、ほら行きますよ」


バチッ!!

『えっ?何今の…それにショウコ達が居るあの円の白線…どう見ても可笑しいよッ!!』スタタッ

「お、おい真弓何処へ行くッ!!」

『皆っそこから離れてッ!!』


バチッ!!バチバチッ!!

「なんだこれ!!」

「わかんねーよ!」

「白線が光ってるわよッ!!」

「ん、これ魔法陣…」

「綺麗…」


目が霞むような白い霧とグランドに漂う小さな何か、グランドに引かれた白線から浮かぶ光。それら全ては、真弓だけにしか異変として見えていなかった。バチっと音が成り始めた頃、その中心に居た生徒達はようやく異変に気が付く。が、それは手遅れで有った。白線で描かれた魔法陣から輝く光が昇る様に浮き上がり、その周囲を取り囲むように広がっていく。そして



――― キュィィィィイイイインッ!! ―――


  ――― ドゴォォォオンッ!! ―――



耳に響く甲高い音と共に、そこに居た全ての者の視界を真っ白に染め上げ、爆発の様な轟音が鳴り響く瞬間、真弓の意識は痛み無く消え去った。


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