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ダンダラ羽織に囲まれて  作者: 佐々木佐々
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序章

一応歴史もの…になるのでしょうか。

正直そこまで大したものではないのですが。

タイムスリップものです。自分解釈の新選組ものとして書いていきます。



 一体何が起きたのか。


 突然目の前に広がった光景に私は呆然と立ちつくす。

 地面に広がる赤。刀から滴る紅。それを持つ人、そして横たわる人、二人とも袴を履いていた。

 袴。着物。土の地面。そして刀。


 ……え。これはなに?

 映画の撮影かなにか?

 でも、この漂う鉄の臭いは……もしかしなくても、元はあの赤だろう。

 ということはなに? 本物? 現実? 


 ――人殺し!?


「ぃ……いやああああああああ!!!!」


 もともと気が付いていたのか私の悲鳴にか。滴る刀を持つ人物がこちらを振り返る。

 ひっ……。目がまともじゃなない……!!

 ゆらりとこちらへ近付いてくる。


「い…やっ」


 その分私も後ろへ下がる。が、その脚がもつれた。お尻をしたたかに地面にぶつける。転んでいる場合じゃないのに! 立ち上がりたくても震えて立ち上がれない。逃げられないっっ。

 

「見られたからには貴様も……」

「嫌ああああああああああああああっっ」


 瞳を閉じる瞬間、刀が陽の光に照らされて、きらりと光るのが見えた。

 ああ……私が最期に目にしたものって、白刃のきらめきになるんだ……

 人生、儚かったなー……。あーでもきっと白刃なんて現実にはあり得ないからこれきっと夢か。夢だな。うんうん。

 夢なら早く覚めないかな。いや、きっとこれで目を開けたら実は部屋のベッドの中だったりするんだよ、きっと。

 いつまで経ってもやってこない痛みに、そんなことを思いながら固く閉じていた瞼をゆっくりと開けた。

 と、視界に入ったのは見慣れた天井でもなんでもなく、


「大丈夫でしたか?」


 人影。逆光で顔はわからなかったけれど、周囲の景色も、忘れていた鉄の臭いも変わっていなかった。

 ……えーと……

 これはつまり、現実に戻っていないということかしら。


「娘さん?」


 私が沈黙していると、目の前の人の顔が近づいていた。どうやら私にあわせてしゃがんでくれたらしい。


「あ、はい。大丈夫です」


 彼がしゃがんでくれたことによって視線が自然と下を写した。


「ひっ……!」


 間近にあったのは、さっき私に切りかかろうとした男だろう人物が血まみれで横たわる姿。

 恐怖から、気が付いたら私は名も顔も知らない人の着物の裾を掴んでいた。


「わっ」


 聞こえてきたのは戸惑う声。

 それでも私は彼の着物を掴んだ手を離すことができなかった。腕が我知らず震えている。見て、わかるのに、止めたくても止められない。


「だ……大丈夫です。大丈夫ですから」


 それでも私の震えは止まらない。


「大丈夫……です」

「っ」


 ぎゅってされた。心臓が跳ね上がった。

 でも……

 とくん……とくん……とくん……

 彼の心臓の音が、私の心に染みてくる。なんでかな。ふしぎ。知らない人なのに、落ち着く……

 気が付いたら、震えは収まっていた。

 ゆっくりと、私は彼の胸をおし、体を少し離れさせた。閉じていた瞳をゆっくりと開ける。ほんの少し前と同じ行為の筈なのに、気持ちが全然違う。

 視界に入ったのは、さっきの人。今度は顔がしっかりと見えた。

 一重だけど、優しげな瞳。白っぽい着物と、羽織は水色。着物に相反するように顔は赤く染まっている。

 もしかして、こうしたこと慣れてないのにしてくれたのかな。


「すみません、ご迷惑おかけして。ありがとうございます。落ち着きました」

「そうですか……よかっ」


 言いかけた彼の瞳が見開かれ、そして変わった。

 小さく悲鳴をあげることもかなわない絶対零度。

 全身が、硬直した。

 刀が、私の首筋にあてがわれている。いつの間に……というか、


 ――怖い――


「その衣服……あなた、夷狄に通ずる者ですか」


 問われる。答えたくても、口が動かない。

 いてき……夷狄……? それって、幕末でいうところの外国人かってこと!?

 知らない。そんなの知らない!

 私に外国人の友達なんていない!



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