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天使と悪魔

よくあるテーマとよくある表現描写を組み合わせただけのどこにでも転がってそうなお話です。台本形式のセリフのみの短編です。

『それ、かしてあげなよ? そのこ、ほしがってるよ?』


『いやだ、これはぼくのだ!』


『だめだよ、みんなであそぶおもちゃでしょ? だから、ほら。かしてあげなよ』




「……ん」


「なに? これかしてくれるの?」


「……だって、みてたじゃん」


「うん。でもいいの?」


「……ん!」


「……ありがとう!」


「……えへへ」





…………





『またそんなことしちゃダメだよ! おこられるよ、先生に!』


『いいんだよ、別に。これくらいちょっとしたイタズラじゃねーか。ほら、やっちまえやっちまえ』


『でもいつもいやがってるでしょ! それくらい気付いてるでしょ! だから、ダメ!』


『いつもやってるからこそ別にいいんだよ。それにお前だって見たいだろ? こっちに気付いてないぜ、ほら今だ!』




「隙あり! 必殺、スカートめくり!」


「きゃぁっ!? も、もうやめてよこのバカ! またおばさんに言いつけるわよ!」


「ひ、卑怯だぞ! パンツくらい見せたっていいじゃないか、減るもんじゃないし!」


「そういう問題じゃないの! もー頭に来た! 殴るわよ!!」


「へへーん、追いつけるなら追いついてみなー。ブース!」


「逃げるな、コラー!!」





…………





『行きなさい。早く、前に足を一歩踏み出すの。じゃないと絶対後悔するわよ』


『やめとけよー、恥ずかしいじゃんかー。クラス中の笑いもんになるぞ? 静かに見守っておけよ、そのうち終わるから』


『そんな簡単に終わるとか言う話じゃないでしょ。ほら、良く見て。あの子の顔、凄く泣きそうじゃない。あんな辛そうに我慢してる顔をさせておいていいの? 幼馴染でしょ? 彼女が泣いてても手を出せなくて、今まで歯噛みしてたじゃない。今しかないわ、早く』


『でもよー。今この場で前出たら間違いなく冷やかされるぜ? それに次の標的にならないとも限らないじゃんか。いいからやめとけって』




「……おい、謝れよ。お前らだろ、これやったの」


「あ……その、いいから。私のことは、気にしないで……」


「クラス中みんな知ってんだぞ。こいつのノート破ったり、上履き隠したりしたのお前らだろ。今日のこの黒板の落書きだって! 謝れよ! ほら、謝れって言ってんだよ!!」


「やめて、それ以上したら、次あなたが何されるか……」


「大丈夫だよ、こいつらは人が見てないところでしか虐めできないクソみたいな奴らだから。言っとくけどな、今度こいつに手出したら、俺はありとあらゆる手段を使うからな。知ってるか、虐めって物によっては警察を呼んでも良い案件なんだぜ? 俺はこいつが泣きながら裸足で家帰ってきたのもずぶ濡れにされてたのも知ってる。今回の黒板とお前らの服についたチョークの粉、今までは証拠がなかったけど、今回は証拠が完全に揃ってるんだぜ。許さねーぞ、マジで」


「……グスッ、ありがとう」




…………





『ダメ! それはダメ! 見ちゃダメ!』


『ケヘヘ、やったじゃねーか! 今なら大丈夫だ、ちらっと見ちまえば気付かれねーよ。ほら、早く!』


『ダメだって! せっかく今まで頑張って来たんじゃない! それをこんな卑怯なマネしちゃダメ! あの子に顔向けできなくなるわよ! いいの!?』


『何言ってんだ、ここで失敗したらアイツに会う機会だってガッツリ減っちまうじゃねーか。だから必要なコトなんだよこれは。それに、どうせ見たってバレねーよ』


『ダメ! そんなことするくらいなら、他のを見直ししましょう、ね? 確かにその一問はできれば正解させたいけれど、でも、ダメ! わからないなら後回しにして、他を完璧にすればまだ挽回でき、あ、ダメ、いけない!!』





「お、おぅ。お前もここ、合格したのか。さすがだな」


「あ、あなたもここの高校合格したの! いっがーい。すごいじゃない、よく勉強したわね。バカのくせに」


「ば、バカは余計だ! ……でもまあ、かなりギリギリだったけどな。危なかったよ」


「ギリギリでも凄いじゃん。でもなんで? あなた勉強嫌いじゃん。もしかしてカンニングでもした?」


「うっ……し、してねーよ。お、俺だって真面目にやれば、で、できるんだよ……」


「ふーん……ま、あなた意外と真面目なところあるしね。本気で勉強したんだ。偉い偉い」


「……ああ、まあな。うん……」





…………




『頑張って! 呼吸を落ち着けて、焦らないでいいから』


『やめとけってー、なぁ? 今まで通りでいいだろー?』


『何言ってるの! 覚悟を決めたんだから応援してあげなきゃ。ほら、大丈夫。あなたはあの時のことを後悔して、今は勉強凄く頑張ったじゃない。今のあなたは昔と違って、何一つ疾しいことはないわ。あの子の隣に立ちたくて、ここまで頑張って来たんでしょう? 凄く立派よ』


『ケッ、微妙に足震えてるし、汗も出まくってるし、何より顔真っ赤で格好悪いぜ? やめとけってー』


『そんなことないわ、凄く格好いいよ。だから、ほら。ね?』





「……俺もさ、お前と同じ大学に合格したんだ」


「……そうなんだ。また一緒だね」


「ああ、それでさ、その……」


「うん?」


「……あのさ、その……」


「うん」


「大学行ったらさ、俺と、その……」


「うん」


「ず、ずっと昔から好きでした。付き合ってください!」


「……うん、いいよ」


「……え、マジで?」


「マジよ」


「……いいの、俺なんかと?」


「いいの。あなたなら、だけどね」


「どういう意味?」


「えへへ、秘密ー」





…………





『大切なのは信じる心です。あなたは、彼女なら信じられるでしょう? 幼い頃から知っているのですし』


『ケヘヘ、昔から知ってるからこそ信じられねーこともあるんだぜ? さすがに24時間365日監視してるわけじゃねーからな。付き合ってからもわかったろ? 知らねー一面ってのは山ほどあるんだぜ。良い意味でも、悪い意味でもな』


『でも、彼女はあなたのことを信頼しています。そんな彼女が、あなたを裏切るようなことをするとでも? とにかく一度落ち着くことです。その手を降ろして』


『ケーッヘヘヘヘ。信じるなんて都合の良い言葉だなー。でも、人間のココロなんて簡単に揺れるもんなんだぜ? 今の俺らを見てみーよ。お前のココロなんて揺れまくりじゃねーか』


『ダメです。落ち着いて、ちゃんとお互いに話をしてから、あ。ダメ!』





「……なんで、先輩ん家に行ってたんだよ」


「え、それってこの前のこと? あれは大学の文化祭の準備で……」


「すげー、仲良さそうだったじゃんか。俺、見てたんだぜ。肩なんて組んで……」


「あれは先輩が勝手に……」


「……っ!」


「いたっ! え、な、なんで……」


「そんなに先輩が良いなら、好きにしろ……!」


「ちょ、ちょっと待ってよ。ねぇ!」





…………





『さあ、勇気を出して!』


『勇気を出せばいいんじゃねー?』


『あら、私と同意見とは珍しいですね。一体何を考えてるのですか?』


『ケヘヘ、べっつにー。お前いろいろやらかしたじゃんか。そんなお前がこんな重たいお願いしたところで、玉砕確定、断られるに決まってんだろ?』


『そんなこと考えてたんですか、なんて下劣な……安心してください。あの時の誤解はきちんと解けたし、ちゃんと謝罪もしたじゃないですか。喧嘩もしたことはありますが、その分どんどん仲が深まったでしょう? 安心してください、勝ち目はあります』


『勝ち目ねぇ。ま、失敗したら間違いなく落ち込んで死にたくなるだろうなぁ。そんなお前を見るのも悪くない。ほら、蛮勇出してみー? ほらほらぁーってあがっ!? ウゲェェェェッ……』


『ほら、早く! 私がこのバカをヘッドロックしている間に、さあ!』





「……必ず幸せにします。僕と、結婚してください」


「……はい」





…………





『さあ行け、飛ばせ! 地平線の果てまでぶっ飛ばせ!!』


『その通りです! さあ風のごとく走りなさい!!』


『おー、気が合うねぇ、ケヘヘ。おらおら、限界までスピードを上げろ! 前だけ見て突っ走れ! ブレーキなんて遠く昔に置いてきた!』


『いや、さすがにそれはダメです! 事故を起こしたら大変でしょう!? こんなときだからこそきちんと周辺を注意しなさい。ですが、その上で急ぎなさい! 慌てず急ぐのです。早く!』





「い、今着いた! あ、赤ちゃんは!?」


「あ、あなた……ふふ、ちょっと遅かったわね。もう生まれちゃったわ。女の子よ」


「そ、そうか。はぁ、はぁ……すまん、これでも急いだんだけど、結構車通りが多くて……」


「いいのよ、お仕事大変だったでしょう? おつかれさま。ほら、この子が私たちの赤ちゃん。抱いてあげて?」


「あ、ああ。うわぁ、ちっちゃいなぁ。あ、ほらこの子の目、お前にそっくりじゃないか?」


「ふふふ、そうかもね。でも口元はあなたにちょっと似てるわよ。名前を考えなくちゃいけないわね」


「ああ、そうだね。でも案はいくつか考えてるんだ。ちょっと待って、今メモを……」






…………




『強すぎる感情を無理に抑えてはいけません。ココロの赴くままに、さあ』


『ダメだ。耐えろバカ』


『……なんでですか。ここで耐えろというのは、いくらなんでも酷すぎませんか? ……こんなの、耐えれるわけがないでしょう』


『ダメだ。後ろ見ろ。お前の守るもんは失われたわけじゃねー。まだ一人いるんだぞ』


『えっ……あ、そ、そうですか。そうですね……お辛いでしょうが、ここは、どうか耐えてくださいませ。がんばってください、お願いします』





「ねえ、パパ?」


「……なんだい」


「ママは?」


「……ママは、遠いところへ行ってしまったんだよ」


「とおいところって、どこ?」


「……すごく、すごく、遠いところなんだ。もう会えないくらいに」


「……会えないって、なに? ママは? ママは、どこ?」


「……ママは、な。ママは……」


「……どうして泣いてるの、パパ?」






『バカが、耐えろっつったのによ……』





…………





『断りなさい』


『断っちまえ』


『ええ、その通りです。誠実さは感じられますが、それ以外は全く信用できません。急に現れて、いきなりとんでもないことを言い出して……。受け入れる必要は皆無です。追い返しなさい』


『ああ、その通りだ。見た目はまあまあだがまだまだケツの青いクソガキじゃねーか。お前も大学卒業したててめちゃくちゃ苦労してたの忘れたか? 外追い出して蒙古斑つきのケツ蹴っ飛ばしちまえ』


『さあ!』


『さあさあ!』





「ダメだ」


「ちょ、なんでよ、お父さん!?」


「ダメなもんはダメだ。絶対に許さん」


「なんでそんな酷いこと言うの!? 彼、凄く優しいし、頼りになる人なのよ!? ずっと昔からのお友達だったし、お父さんも知ってるでしょ? なのになんでそんな頭ごなしに……」


「でもダメだ。社会にも出てない若造同士で結婚なんて許さん。絶対にダメだ」


「っ!? お父さんのバカ! もう知らない! いこ、こんなとこもういたくないわ」


「ふん、バカ娘が……」




…………





『おめでとうございます!』


『ケッ、まあめでたいんじゃね?』


『もう、なんであなたはいつも捻くれたことを……これでも喜んでるんですよ、このバカ。顔がちょっとにやけてますから』


『勝手なこと言うんじゃねぇ! ケッ、ケッ、ケエーッ!』





「……ああ、ああ。うん、わかった。わざわざ電話ありがとうな、お疲れ様。娘には無理するなよ、おめでとうって伝えてくれ。ああ、頼んだ。じゃあ切るぞ……。そうか、ようやくか……私に孫ができたのか。そうか、そうか……ふふふ」





『よっしゃ、酒だ! 酒飲もうぜ酒! 確かめっちゃ高いの買ったのにまだ開けてないのあっただろ? あれを……』


『ダメです! お医者様から止められてたじゃないですか! お祝いで飲みたい気持ちもわかりますが、そこで健康を崩したらお話にならないでしょう? 産後の娘さんにご心配をかけたいんですか?』


『でもよー。ここで飲まなきゃいつ飲むんだって……』


『ダメですよ、いいから我慢して……。ってああ! まったくもう……』




…………





『……そうですね、あれから色々ありましたね。娘さんが事故に巻き込まれたと知ったときは、心臓が止まりかけましたよね。お孫さんが賞状をもらったのをご両親より喜んでたのは、私たちだけの秘密にしておきますね。それにしても……ふふ。知ってますか、あのバカのこと。あのバカ、あなたがどんどん老成していって、心が穏やかになっていくにつれて「ケッ、こんなところ居心地がクソ悪い」とか言って、消えてしまったのですよ。いつも悪たれたこと言って、捻くれた性格をしてた虚け者でしたが、いなくなると寂しいものですね。また久しぶりに言い合いをしたいという気持ちも……正直、なくはないです。あなたも、まもなく消えてしまいそうですね。そうなると本当に寂しくなりますね。あ、ほら、呼んでますよ。あなたが一番大切な、もっとも大事な家族が……』







「……ああ、おはよう。もう、お昼かな?」


「あ、お爺ちゃん。起きた? ちょっと待ってね。おかーさーん、お爺ちゃん起きたー!」


「え、お爺ちゃん起きたの!? ちょ、ちょっと待って今手が離せないの! すぐ行く!」


「ああ、いいから。ほら、おいで。もっと顔を見せておくれ……」


「うん、お爺ちゃん。だいじょうぶ? なんかずっと元気なくて入院してるって聞いたけど。病気じゃないんだよね?」


「ああ、違うよ。元気いっぱいだ」


「クス、元気いっぱいには全然見えないよ。もう歳なんだから、無理しないでね。長生きしてほしいもん」


「そうか、ありがとう。……それにしても、お前は若い頃のお母さんにそっくりだな。凄く美人さんだ」


「お母さんは遺影の中のお婆ちゃんに似てるって言ってたよ。ねえ、お爺ちゃん。お婆ちゃんって若い頃にその、亡くなっちゃったんでしょ? 悲しくなかったの?」


「そうだなぁ、もう昔のことだから忘れてしまったよ。でも……まるで爺ちゃんの心の中にあいつがいるみたいでな。いつも我儘言ったり自分勝手なことをする爺ちゃんを戒めてくれてた気がするんだ。だからなのかな、あいつのことは忘れたことはなかったよ」


「へぇ、そうなんだ。なんか昔のお父さんとお母さんみたい。知ってる? お父さんとお母さんって昔から幼馴染だったみたいでさ、意地悪でイタズラ好きだったお父さんと真面目なお母さんはいっつも喧嘩してたんだって!」


「ああ、もちろん知ってるとも。爺ちゃんの昔を見ているみたいで、凄く複雑な気持ちで見とったわい。お前にも、そんな仲のいい男の子はいないのかい?」


「……別にいないし。そ、そんなことより、お母さん花瓶の水替え終わったかな? ちょっと見てくる」


「そうかい。ああ、そうだ。悪いけど今日はお見舞いはおしまいにしておくれ。ちょっと話をしたら疲れてしまった。せっかく来てもらって悪いけど、もう寝るよ」


「あ、ううん、いいよ。わかった、お母さんに伝えておくね。じゃあおやすみ、お爺ちゃん」


「ああ、おやすみ。またな……」






『……お疲れ様。ゆっくりおやすみなさい……さようなら』

ちなみに、作者の心には天使と大天使と聖天使ミカエル様しかいません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 右ストレートでぶっとばす まっすぐ行ってぶっとばす そんな感じの王道。 似たようなの見たことあるけど、それでもほっこりしました。
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