エピローグ
最近、女子高生達の間で噂される、成功率100%の恋愛成就のおまじないがあると言う。
親友である和美はこれで彼氏をGETしたのだが、人に教えると効果が薄れると教えてくれない。私は日直を半年間代わる事を条件に、ようやく今日、和美からそれを聞きだした。
「はぁ……はぁ……これかな?」
私は長い階段を上がり、息を切らして丘の上の小さな公園にたどり着いた。その公園には和美から聞いていた通り、一つのお墓があった。
私は後ろを振り返る。
青い空の下に街が広がって、関東平野が全て見渡せる。まさに絶景だ。
部活をサボり、片道の電車賃1160円もかけて来たかいがあったってもんだ。
いやっ! ここから日直の分の元をとらねば!
私はお墓に向き直ると、手を合わせて頭を下げる。
「どうか彼氏が出来ますようにっ! 隣のクラスの健太郎君が振り向いてくれますように!」
更に私は、ぱんぱんと手を何度も叩いてみる。いや、ぱんぱんぱんぱんぱんぱんと、カスタネットのように連打してみる。
「聞こえたかな? えっと……」
私は、お墓に書いている神様の名前を読み上げてみる。
「前田……花音? かのん? ……わぁ、西暦2023年没って、今から二百年以上前じゃんっ!」
その頃は確か、『をのこ大戦』と呼ばれる人類史上最大の戦争があった時だ。数十億人が死んだって先生が言ってたけど……その戦争で亡くなった人かな?
んっ? 2023年って、当時の日本が国家間を二分した年で、国境は丁度この辺りに引かれたんじゃなかったかな? 何か関係があるのかな……?、
「優子ちゃん、側面の人にお願いしないと、効果は出ないんだよ」
「へっ?!」
振り返ると、公園のベンチに一人の男の人が座っていた。髪は無造作だけれど、かなりの美形だ。いや、超絶美形だ……。しかも、すごく背が高そうだ。
いやいやいや! 健太郎の方が絶対かっこいい! ……はず。
聞かれていたのが恥ずかしくなり、私はそそくさとお墓の横に回る。すると、そこにも名前が書いてあった。
「藤原葉助。同じ2023年に亡くなったんだ。恋人かな?」
私は独り言のように言った。だって、さすがにあのお兄さんも知っている訳ないだろうし。
ところが、お兄さんはイケ面だけじゃなく、物知りさんでもあった。
「そうだよ。その二人は恋人だ。天国でもね」
お兄さんはベンチから立つと、私が上がってきた階段の方へ歩いて行く。一人で来たのかな?
私はお墓に向かってもう一度手を叩く。
「健太郎君が、私のことを好きになってくれますようにっ!」
「その願い、かなえよう!」
「わぁっ!」
神様の声が聞こえた! 私は驚きのあまり、こけてお尻を打った。
すると、お墓の影から女の人が顔を出した。
「きっと、願いはかなうよ!」
女の人は、信じられないくらい可愛い笑顔を私に見せてくれた。じょ…女優?
口をぱくぱくしながら女の人を目で追うと、女優さんは階段へ走って行き、先ほどのイケ面さんの腕に抱きついた。
恋人同士だったのか。すごくお似合いだ。私と健太郎もあんなになれたら良いな。
私は立ち上がると、二人に向かって大きな声で聞く。
「あのぉ~、お二人も、このお墓のご加護でカップルになったんですかぁ~?」
すると、二人は振り返った。
男の人は微笑み、女の人は私にVサインをする。
「そうだよっ! がんばってね、優子ちゃんっ!」
「は……はいっ!」
二人が階段の向こうに消えると、私はもう一度お墓に手を合わせる。
そうしている時、ふと疑問が浮かんだ。
「……あれっ? あの二人……どうして私の名前を知っていたんだろう?」
まあいいかと、私はまたお墓の前で手をぱんぱんと叩きまくった。
絶対に健太郎君と仲良くなれる。だって、最初会った時に、そう感じたんだもん。
まるで……前世で恋人だったかのようにね!
『をのこ草子』 逸亜明 訳
「今から二百五十年以上経った二十一世紀に、世の中は変わり果ててしまう。科学の力で空を飛ぶ人間が現れ、同等の速度で地を走る人間も現れる。プラズマを利用する兵器も作られるし、過去に死んでしまった人間をも複製出来る。そして人の心は何かの力で悪に染まり、戦争が起きてしまう。女は男相手に戦争を起こし、男達は命を奪われる。黒き鎧の中に髪を隠した女達からは、人の心が消え去ってしまった。いよいよ世界の人口は半分となり、女達以外の人間は亡んでしまう。だがこの時、一人の男が現れる。人々は彼に従い、女達は目を覚ます。この戦乱は、百年で終結した」
〈了〉
これにて、『をのこ戦記』完結です。読んで頂き、ありがとうございました。次回作もよろしくお願い致します。




