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をのこ戦記  作者: 逸亜明
14/39

疑惑2

……オレンジ……ケーキ?


 皆が騒いでいる中、俺は一人椅子に座る。



「法次は気が利かないけど、やっぱりやさしいんだぁ。だから好きなのっ!」


「花音ちゃん、本当にそれだけかぁ? 実は、法次の顔に引かれたんじゃねーの?」


「へっ? 顔? 何言ってんのよ裕也君。法次はおせじにも、カッコ良くはないでしょう? 沙織もそう思うでしょ?」


「えっ? ……私は類を見ないほど端正な顔立ちだと、第一印象で思いましたが……」

 


……健太郎の彼女は、『蜜柑』が好きだと言っていたはずだ。そして、同じような境遇にある花音の友達は、『オレンジケーキ』が好きだって? これは……偶然で片付けて良いのか?



「美樹はどう思う? 法次の顔って、普通だよねぇ?」


「ええっ?! ……正人と同じくらい美形だと思うけど」


「またまたぁ。私に気を使わないでよぉ。沙織はともかく、メン食いの美樹が法次の事をカッコ良いって言うわけないじゃんよぉ」



 ……花音の友達と、健太郎の彼女が同一人物だと仮定する。俺達は、現実世界の仲間である弘明を介して、他サーバーの情報を手に入れている。つまり、健太郎の彼女の存在を知っている。


 花音達は、どうやって他サーバーの子と友達になれたんだ? 仮想世界の登場人物同士で、同調(リンク)しているのか? いや、そんな事が出来るなら、サーバーを分ける必要が無い。情報(データ)が膨大になり、一つのコンピューターで処理できないからこそ、夢想世界を隔絶して分立させているのだから。



「皆の優しさは、よーく分かったぞっ! でも、私は見た目なんかじゃなく、法次の心に惚れたのだっ! なんかね、初恋の人に少し似ているのよぅ」


「えぇっ! 私も初めて聞いたっ! 沙織、知ってた? 花音、どんな人よ、その人」


「うーんとね、凄く怖い人だったんだけど……ちょっとだけ優しかったの。あっ! 法次、その人とは何も無かったんだからねっ!」



 ……なら、俺達のように、花音達も現実世界を介して、その子を知っているのか? つまり、俺達が健太郎と会っているように、花音達も……健太郎の彼女と現実世界で会っている? しかし地球上は、我々刀銃兵と、機甲兵の二種しかいないはずだ。隠れる場所なんて無いはずだが……。



「ちょっとぉ。法次、聞いているのぉ」


「……ん?」


 すぐそばで声がすると視線を上げたら、花音の顔が目の前にあった。二人の鼻がくっつく程近い。慌てて花音は後ろに下がる。


「ほ…法次。それはまだ早いって……」


 何やら顔を赤くしている花音に、俺は尋ねる。


「花音、その友達の名前は何て言うんだ?」


「は…はぁ? だ…誰のこと?」


 花音は、目をぱちくりさせている。


「今、言ってたろ? 彼氏が来なくなって、元気が無くなった子」


「あ……ああ、その話かぁ。急に話を戻さないでよ。名前はね、○※よ」


「……えっ?」


 花音はすぐそばにいると言うのに、名前が良く聞こえなかった。


「悪い、もう一度言ってくれ」


「ん? だから、○※よ」


「……はぁ?」


 花音は大きく口を開いていると言うのに、名前の箇所だけが聞こえない。いや、音は耳に届いているようなのだが、頭にまったく入ってこない」


「花音、……もう一度だ」


「えぇぇ?」


 花音は、口を三角にして怪訝な顔をする。


 痺れを切らしたように、裕也が俺の肩を叩いた。


「法次ぃ、耳が遠くなったのかぁ? 花音ちゃんは、○※って言ってるだろう?」


「…………」


 俺は正人を見た。正人も当然のように聞こえているようだ。



 ……これは……恐らく、禁止語句なんだ。しかも、いつものように男子だけ、女子だけでは無く、俺だけに科せられている。だから、男子同士で矛盾が生じないように、俺だけに無音となっているんだ。


 特定の女子の名が、禁止語句?


 そもそも禁止語句とは、現実世界での言葉や知識が、夢想世界で語られた時に矛盾が生じる場合に、違う言葉に置き換えられる現象だ。


今回の場合だと、その逆と言う事になり、現実世界に影響を及ぼすため、夢想世界で知ることが拒まれているのだ。


つまり、今、花音達が口にしている女友達の名を……俺は知っているはず(・・・・・・・)なんだ。


現実世界では、男性しか存在しないために、女の名前を耳にすることは無い。


だが、俺は幻聴とは言え、一度聞いている。


それはあの時だ。健太郎が死んだ例の作戦中に、敵の機甲兵が叫んだ名前……、


優子(ゆうこ)』。


 ……ちょっと待て!


 俺の全身に、悪寒が走った。身の毛がよだった。


 

誰が『優子』と呼ばれたんだった?

 誰が、健太郎の彼女と同じ名前だったんだ?


 それは……あの、俺が切りつけて腕を負傷した機甲兵だ。


 やつは、健太郎を殺した張本人だ。

胸に(だいだい)の点がある機甲兵、橙の(オレンジポイント)


……(だいだい)の点? ……待てよ。


俺は、記憶を深く呼び覚ます。


やつの胸にあった点……、塗装の剥げかと思った拳ほどの大きさの点……。

激しい戦闘中だったので、それが何かと細かくは考えなかった。


だが今は、俺の記憶にある画像の、奴の胸の部分だけ大きく拡大をする。


それは丸く、上部に緑の小さなヘタが付いていた。崩したイラスト調だが、間違いない。


蜜柑だ! 奴の……胸にあった橙の点は、確かに蜜柑が描かれてあった。 


「馬鹿なっ!」

 

大声を張り上げると、教室が静まった。


 健太郎を殺したのは……まさか……最愛の…………。


「法次ぃ? さっきからどしたの? 体の調子が悪いなら言ってね。……心配だよ」


 不安げに俺を見る花音を、俺は両腕で強く抱きしめた。


 

 俺たちは、…………女と戦っているのか?



次話、2015/07/11 12時に追加されます。

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