さくらやまのさくや
一面に散った花びら。
やっとしがみつくつぼみ。
強い風。
凍える寒さ。
緑の葉。
桜の木。
山の裾野から頂まで。
人の手によって植えられたもの。
朝早くから夜遅くまで。
行き交う人の絶えない世界。
眠ることを忘れた季節。
人の声が続く季節。
一時の楽しさ。
一時の快楽。
一年の中の、一瞬を楽しむ。
綺麗に咲いたのは、その一瞬のためでなど。
ないという事を、見ている人は、感じない。
広場の中央にひっそりと咲く。
やがては息絶える品種の、最後の輝きの時。
僕は、乾杯をあげる。
今年は見に行く間もなく、散ってしまったサクヤ。
来年は、咲いているときに行けると良いな。