エンディング、そして…
エンディング、そして…
――――…
世界は二人の二人の美姫によって治められた。
一方は純白の美姫。淡く桃色を滲ませるその髪は高潔にして絶対。決して土に汚されることはなかった。
一方は漆黒の美姫。吸い込まれるような漆黒の髪は人々をなぜか引き付け、その磁器のように白い肌は冷徹かつ的確に裁きをもたらした。
お互いに相反し、お互いに認めあい、お互いに同じものを待ちわびた。その前では世界はただの踏み台でしかなかった。
二人が待ち望むのはただ一人の男。その男は闇よりも暗く、山よりも重く、龍よりも強かった。その力は正義のためだけに振るわれ、その信念は鋼のように折れることはない。
一度死に、そして蘇る。絶対的強者を知り、愛した美姫たちはなおそれを待ち続けるのであった。
――――…
河を守り、水をもたらし、戦をおさめ、知を与える。
その神の名は龍。何よりも強い世界の掟。
その龍にも敵わない者がいる。それは龍の娘、新しき龍神。
強き父の力を受け継ぎ、優しき母に愛された。
いや、もう一人。娘に力を授け、愛した者がいる。
龍を助け、敵を助け、しかし時に非情に断罪する。世界の掟をも超越し、全てを地にひれ伏させる。
そして、誰よりも深く温かい愛の心を持っていた。
娘はその愛を受け、また愛を返した。
その者は死さえも超越する。娘はそれを待ち続けるのだ。
――――…
「あれから190年…私もよく待つものだ。」
「体は若いが、心が老いてきた。あまり待たされ過ぎて干からびそうだ。」
豪奢な部屋。その中央に置かれている大きな椅子に二人の女性が座っている。一人は白く、一人は黒い。よく似た顔をしており、二人とも絶世の美女と言えるだろう。
「…廊下がうるさいな。」
「まったく。使えない部下だ。」
二人はかつて共に過ごした最高の部下を思い浮かべる。
と、部屋の扉がいきなり開かれ、一人の男が駆け込んでくる。
「失礼します!卯月様、菜真理様!」
二人はあからさまに顔をしかめる。
「この部屋に立ち入りを許可した覚えはないが?」
「禁を冒すほどの理由があるのだろうな?」
男は慌てて姿勢を正すと、報告をした。
「正面入り口より『黒』『緑』と名乗る二人組が侵入し、攻撃を受けています!現在最高戦力である『クレイズ』が迎撃を…」
報告をしていた男が急に崩れ落ちる。その後ろには二人組がたっていた。片方は黒いローブ、もう片方は緑色のローブを着て顔をかくしていた。
「あれが最高戦力ぅ?卯月さん、人選ミスじゃないのぉ?」
「正面を守らせるならもっと堅い防御にするべきですよ。」
あぁ、この声、この雰囲気!二人は現実を疑っていた。
「ま、まさか…お前たちなのか?オニキス、エメラルド…」
卯月がゆっくりと前に進みながら震え声で尋ねる。
と、黒ローブと緑ローブが苦笑するとフードを取り去った。
「この顔、忘れたとは言わせないわよぉ?」
「…二人とも、大きくなっちゃいましたね…」
片や女のような男のような不思議な声で、片や心底残念そうな声で言う。
その顔は見間違うはずもない、二人が待っていた人物たちである。
瞬間、二人は走りだして黒ローブ…いや、もう言ってしまおう。オニキスに勢いそのまま力の限り抱きついた。
「…勝手に死んで私たちに心配させるなど…部下の自覚があるのか?」
「そうだぞ。あと少しお前からの知らせが遅ければ後追いしていたやも知れないぞ?」
菜真理と卯月。二人とも子供のように涙を流していた。オニキスはその様子に驚きながらも、二人をしっかりと抱き返した。
「そんなことになったら、帰ってきてませんよ。」
その様子を後ろで見守る緑ローブ、もといエメラルドは深いため息をついた。
「結局はオニキスにいいところとられるのよねぇ。ま、いいけどねぇ。」
これでこの物語は一旦幕を閉じる。オニキスたちはまだまだ活躍するが…それはまた別の話だろう。
これにて『黒い紳士と幼女(+α)たち』は幕となります。次話は筆者あとがきとなっています。今後のお話などが書いてありますので、今しばらくお付き合いください。




