岩戸
岩戸
オ「ハッ…ハッ…クソッ!」
オニキスへの魔物たちの猛攻は止まるところを知らない。
オ「こんな量、どこに隠れてたんだ!」
先の蛇と蠍の魔物に加えて蜘蛛や蜥蜴、犬や狐のような魔物、果てはサボテンでできたゴーレムのようなものなど多種多様の敵が現れた。それも一匹ではなく団体で、全てがオニキスの二倍以上の大きさだ。
オ「過重力領域!」
これまで多くの敵を封じ、葬ってきたオニキスの技もこれらの魔物には通用しない。
哺乳類型やハ虫類の魔物にはまだ効果があるのだが、節足動物型にはほとんど効果が無い。ある程度は動きが鈍るが、体を押し潰したり地面に倒すほどには至らない。甲殻をギチギチときしませながらもオニキスへ迫っていく。そして攻撃が隙間無く続くので過重力領域を維持できずに他の魔物もすぐに復帰する。
結果的にオニキスは自分の体と僅かな武器だけでこれらの魔物と戦わなければならなくなっていた。
オ「エメラルドがいれば…」
エメラルドならば砂だらけのこの場所で地の利を得ることができるだろう。戦うことは難しくとも、逃げることはできるのではないか。そんなことを考えてしまう。
オ「ゴッ!?」
蛇の牙を避けたオニキスに、背後から衝撃が走る。サボテンゴーレムが殴り付けたのだ。オニキスの体とさほど変わらない大きさの拳とスーツをも貫く強靭なトゲ。
オ「ガハッ…サボテンってのはもっと瑞々しくて柔らかい植物だろうが…」
せめてもの救いはサボテンゴーレムのトゲに毒が無いことだろうか。だが傷は塞がっても血が戻らない。全身にいくつもできた毒の傷から血が流れ出しているのだ。作るそばから失っていく。傷の即時再生を前提としたオニキスの失血死防止装置はギリギリでオニキスに貧血の症状を出させない程度の均衡を保つことしかできていない。
オ「過重力領域!」
上空を飛び、隙あらば強襲してくるコンドルのような魔物を地面に叩き落とし、魔物からもぎ取った爪で串刺しにする。最初に蠍からもいだハサミはとうに駄目になり、魔物から爪や牙や針を奪っては武器にして駄目になり捨てる、を繰り返していた。
『ガァッ!!』
前から蜥蜴、後ろから犬型の魔物。オニキスは突進してくる蜥蜴の体を飛び越えて犬と衝突させる。
オ「攻撃の時に声を出すのは成功率を下げるぞ!」
魔物の大きさゆえにオニキスに同時に攻撃できるのは前後二匹、多くても四匹といったところ。だが、一対一でも苦戦する相手を同時に複数相手取るのは困難だ。その上、節足動物型や植物型、ハ虫類型の多数は鳴き声など攻撃のタイミングを見ないで予想できる情報をほとんど発しない。故に音で攻撃を予測できる犬や蛇は比較的回避しやすい相手だった。
『……ッ!?!?』
蜥蜴の頭に跨がり、犬や空中にいる魔物の攻撃を避けながら、頭を何度も殴り付けて頭蓋を割り、ベルーガを脳髄へ叩き込み息の根を止める。ベルーガは手斧サイズなので決定打には繋がりにくいが、切れ味は群を抜いている。ここぞという場面ではやはり頼りになった。
オ「おっ…らぁぁあああっ!!」
蜥蜴の頭から降りると尻尾を掴んで全力で振り回し、周囲の魔物を牽制する。
尻尾が千切れて胴体が飛んでいき他の魔物に衝突して吹き飛ばすが、しばらくすると何事もなかったかのように起き上がってくる。
オ「やっぱり鱗じゃ柔いか…せめて亀ぐらいいてくれれば盾なり何なりにできたんだけどな。」
せめて動きだけでも遅く、そう願う。だが現実は厳しい。素早く、堅く、なおかつパワーがあり生命力も強い魔物ばかりが集まってくる。
オ「どちらにせよ、負けないがな!
かかってこい!全員生きて帰れると思うなよ!」
オニキスが咆哮する。満身創痍、だが心は全く折れていない。強い意思の宿る目で迫る魔物を睨み付けるのであった。
――――…
エ「ほらぁ、心配したってアタシたち何もできないんだからぁ、やることやっちゃいましょうよぉ。」
突然のオニキスが音信不通になったことで取り乱す卯月と菜真理だったが、エメラルドの言葉で我に返る。
卯「…うむ、私たちは私たちの仕事をするべきだったな。なーちゃん、オニキスの心配は後にしろ。」
菜「あ、ああ…」
だが、菜真理の顔色は優れない。言ってしまえば卯月ほどにオニキスの実力を信頼しきれていないのだ。彼女はオニキスとの付き合いは卯月ほど長くない。故にオニキスの真の本気を見たことがないのだ。彼女の見たことのあるオニキスは全て力をある程度セーブしており、その状態でのオニキスは一騎当千の強者ではあっても絶対無敵には見えなかったのだ。
常人が見ればそうは考えないのだろう。だが菜真理は自身も人体改造に携わり、オニキスの改造にも協力している。言ってしまえば中途半端に目が肥えており、中途半端にオニキスの実力を図ってしまっているのだ。
エ「ほらほらぁ、出発出発ぅ!」
オニキスの状態がわからない、という一抹の不安を抱えながらも一行は本来の目的である砂嵐の原因探しを始めるのであった。
――――…
車を進めることしばらく。エメラルドは完全に方向感覚がおかしくなっている、と自覚していた。
エ「こっちで本当にあってるのぉ?アタシ、全然見えないんだけどぉ!」
フロントガラスが遮光ガラスから普通のガラスになっても、砂嵐の中に戻ったことで視界は全て砂色に染まり、全く前が見えない。衛星を利用したナビも周囲に砂しかない現状では役にたたない。
だが、卯月は何事もないかのように指示を出す。
卯「うむ、そのままでいいぞ。風の流れの中心に向かっているからな。」
そういわれてエメラルドは外を凝視する。が、砂は乱れに乱れて風を読むどころではない。
エ「なんにもわかんないんだけどぉ…間違ってたら卯月さんのせいだからねぇ。」
ヤケクソぎみにアクセルを思いきり踏み込む。車は爆音をたててスピードを更に増す。
そのまま直進し続けていると、卯月がエメラルドに合図を出す。
卯「エメラルド、車を止めろ。到着だ。」
慌ててブレーキを踏む。急ブレーキにも関わらず卯月製のクリムゾンハグは車内に大きな振動を伝えること無く、静かに止まった。
エ「何があるのぉ?」
相変わらずのものすごい砂と風。何も見えないエメラルドは卯月に聞く。
卯「よく見てみろ。建造物がある。」
エ「えぇ?」
砂を透かして見る。すると、ぼんやりとだが建造物らしきものが見える。と、言っても半球のドームのようなもの。自然にある、といわれれば納得してしまうだろう。
卯「いくぞ。さっさとこの迷惑な風を止めさせる。」
だか、卯月は建造物だと断定した。行動を始める彼女にエメラルドは追随するのであった。
――――…
卯月たちが砂嵐の原因だと踏んだ謎の建造物。その中には…!?
エ「全然わかんないんだけどぉ…」
ありがとうございました。




