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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
命灯不滅
54/72

後始末※裏話

時系列的には前話の最後辺りの空白部分。少しグロテスクな表現があります。

後始末


闇の精、あんは思案していた。彼女が眺めているのは一辺が30cmの立方体の箱。表面の光沢を見るに金属製だろう。

未だ明けきっていていない空を見上げて呟く。


暗「うーん、見かねて持ってきちゃったけど…そもそも、この大きさの箱に全部入るのが不思議だよねー。」


側に置いてある箱を一瞥する。その中身の状態を思い出して身震いする。


――――…


暗がコレを受けとることになった発端は前日の夜までさかのぼる。


卯「ふむ、いくら見てみても器官自体は人間のものと変わらないな。」


菜「あぁ、細胞単位で変異しているのかも知れないが…この環境では調べようが無いな。」


簡易的な手術台を用意し、医療器具を側において何かをいじくる卯月と菜真理。


血「んー!んー!」


その対象はブラッディ。卯月と菜真理のある意味純粋な好奇心の被害者である。合掌。


卯「しかし、麻酔が効かないとはな。」


菜「量を増やしても薬の種類を変えても全く効果が無かったからな。」


菜真理が薬瓶をいくつか持ち上げた。表示を見ると…


卯「…そんなものを投与したのか?猛毒じゃないか。」


菜「なに、頭を飛ばしても死なない輩が毒物ごときで死ぬはずもないだろう。」


血「…っ!…っ!」


ブラッディ、顔面蒼白である。不死者といえども彼女の生い立ちではその特性をかすこともほぼ無く、死に対する恐怖心は人間のそれとほぼ同じである。ちなみに一度目の死、こちらに来たときのものは即死だった。


卯「まあ、私たちが技術として吸収できるものはほとんど無かったな。」


菜「ふむ。細胞は培養できるようだし、必要ならそこから情報をとればいいだろう。」


と、卯月たちが諸々《もろもろ》の器具を片付け始めた。ようやく解放されると安堵の息をつくブラッディ。だが、しかし。


卯「そういえば…吸血鬼の苦手なものと言えば?」


菜「日光、十字架、ニンニク、流水がメジャーなところだな。弱点といえば心臓に杭を打ったり、銀の弾丸をつかったりするのが有効らしいな。」


卯「ふむ…」


何やら考え込む卯月。と、どこからかドライヤーのような機械を取り出してブラッディに向ける。


血「…?」


だが、何も起きない。


卯「紫外線が弱点、というわけではないのか?」


卯月が取り出したのは紫外線照射機。日光を苦手とするなら、とブラッディに紫外線を当てたらしい。

と、卯月たちがつけていた明かりによってできた影から何かが沸き上がってきた。


暗「吸血鬼が苦手なのは聖魔法とか聖属性のものなんだよー!」


卯「お前は…オニキスが会っていた闇の精とやらか。」


暗「すごーい!なんでわかったの?」


菜「声は聞いているからな。それでわかる。」


血「んー!んんー!!」


と、ブラッディがまたもがき始めた。暗は闇の精、不死者を完全に消滅させることができる存在である。もし卯月たちに味方されればそれこそ命が危ない。


卯「聖属性がどうとか言っていたが、あれはどういうことだ?」


そんなブラッディを放置して卯月が暗に聞く。


暗「そうそう、不死者ってのは言ってみれば生命のことわりから外れた存在。神への反逆者ってことになってるんだよ。

聖属性ってのは信仰心が形をなしたもの、ってことになってるけど、本当はちょっと違うんだよ。

あなたたちの言う魔法次元にはそういう概念的なものを集約して実在させられる人が少ないけどいるんだよ。それをこっちに送ってきて聖属性とか聖魔法ってことにしてるの。

不死者たちがなんで聖属性が苦手なのかっていうと、心の奥底にある神への罪の意識ってやつがそうさせてるんだよ。簡単に言っちゃえば『私のような罪人が神の御業みわざを受けて滅びないわけがない。』って言う思い込みを絶対的な特性にしちゃったってこと。」


一気に言い切り、息をつく暗。

と、菜真理が聞く。


菜「さっき私たちが言っていた弱点は本当に有効なのか?」


暗「そうだね…条件もあるけどそうだよ!

例えば、十字架。これなんてわかりやすいよね。

神の象徴で多くの人が信仰する偶像。こんなに形にしやすい聖属性のものって少ないよね!

日光とか流水とかもそう。自然界のものには全て神の力が宿る、って感じかな。江のところの河とかはホントに神力が含まれてるけど。」


卯「銀の弾丸はどうだ?」


と、卯月の質問を聞いて暗がケタケタと笑う。


暗「こっちに銃は無いんだよ?弾丸があるわけないじゃん!」


卯月が苦い顔をする。初歩的な間違いは恥である。

が、不思議そうに問う。


卯「それじゃあ、なんでお前は弾丸と銃を知っている?」


暗「それは、私がそういうもののあるところに行ったことがあるからだよ。」


あっけらかんと答える暗。だが、それを聞いていたブラッディが目を見開く。彼女の渇望する世界を渡る存在はすぐ近くにいたのだ。


暗「まあ、そういうとこだと大体私たちみたいなのは実在しないことになってるから誰にも認識されないけどね。

こっちで銀の弾丸に相当するのが聖魔法なんだよ。でも、銀に魔除けの意味があるのはこっちでもおんなじだからもしかしたら効くかもね?」


何事も無かったかのように暗は話を続ける。


暗「心臓に杭、ってのはいろんな考え方があるね。たとえば、さっきの銀みたいに魔除けの意味があったり聖なるものとして扱われてるもので出来た杭だったら今までのとおんなじような仕組みだろうし。

あとは、単純に痛みで精神的に殺すって方法もあるのかな?吸血鬼になりたての子だとそういう感覚に慣れてないから、じわじわやったら廃人にすることはできるかも。」


卯「ニンニクはどうなる?これこそただの迷信じゃないか?」


なるほど、これまでのものとニンニクは多少趣おもむきが異なる。当てはまるといえば魔除けと自然のもの、といったところ。だが、それだけではニンニクだけがピックアップされる理由としては少し弱すぎる。


暗は一瞬キョトンとしたあとに笑いながら答えた。


暗「それは他のよりずっと単純だよ。吸血鬼は普通の人間よりも鼻が良い、嗅覚が優れてるんだよ。だからニンニクの臭いがスゴく強烈に感じるんだよ。まあ、個体差はあるんだろうけどね。」


疑問が解消され、卯月たちは心なしかスッキリとした顔をしている。と、菜真理がなにやらおもいついたのか暗に質問する。


菜「そういえば、オニキスの話を聞いていて疑問に思ったんだが、不死者になると魔法が多く使えるようになるのはどういう仕組みなんだ?

私は魔法は血を消費して事象を召喚するものだと認識しているんだが、そう考えるとリッチなんて乾きすぎて魔法を使うどころではないだろう?」


ファンタジー。それで片付けてしまうのが手っ取り早いのだろうが、それでも一度は疑わないと気が済まないのが学者肌の人間である。


暗「あぁ。それは私たちが力を貸してあげてるからだよ。ホントは普通の人が魔法を使うときも血なんて必要ないんだけどね。対価、それも結構キツめのやつを設定しとかないと世の中が物騒になっちゃうからね。」


街頭で無償で銃や刀剣類を配って、なおかつそれの使用を法で制約しないようなものである。


暗「私たちなら大体のことはできるからね。役割があるから私も『闇の精』なんて名乗ってるけど炎も出せるし水も出せるからね。」


卯「…つくづく魔法次元というのはなんでもありなんだな。」


卯月がため息混じりに言う。


暗「そんなこと言ったら、オニキスのお兄さんも大概メチャクチャじゃん。人間をあんな対軍兵器みたいな代物にするってどうなってるのさ。」


暗も苦笑混じりに返す。

と、菜真理がブラッディに向き直る。


菜「ふむ。疑問は大体解消されたからな、そろそろこいつも解放してやるとしよう。」


胸を撫で下ろす思いのブラッディ。だが、まだ終わってはいない。


卯「それでは、最後の実験に移ろうか。」


菜真理と卯月が笑みを浮かべる。それは狂気の笑み。見るものに絶望をもたらすもの。

ブラッディも明らかに怯えた表情をする。


卯「なに、心配することはない。ただ、私たちへの不快な態度とオニキスを無駄に留めたことへの抗議の意を込めるだけだ。安心しろ。」


安心できない。


菜「人間は大部分が水分でできている。それを取り除いてやれば、持ち運びが楽になるはずだ。」


その先は流石に言及できない。ただ、一言ヒントを出すとするならば『ミンチ』とお答えしよう。


――――…


回想終了。


暗「いやぁ、流石にあれは怖かったなぁ。思わずコレ、受け取ってきちゃったもん。」


暗の手の中には一枚の紙片とカップ。箱の外側についていたものだ。


暗「えっと…箱内部のものを完全に再生するにはそのカップで5杯水かそれに類するものを注ぐ、と。」


箱を開くと、そこには嫌な感じのする赤色の粉末が。そこに水を注ぐと(自主規制)


――――…


血「…っ!…っ!」


流石にこたえたようで、声もなく震えるブラッディ。と、暗が声をかける。


暗「ここまでやられて何も無しは流石に可哀想だからね、私が元の世界に戻る手伝いをしてあげるよ。」


血「っ!?ホントに!?」


すぐさま暗に飛びつくブラッディ。スルリとそれを避けると暗は微笑みながら言った。


暗「もちろん!

でも、吸血鬼のままじゃ戻っても生活しづらいだろうから、普通の人間に戻すよ?」


血「わかった!お願い!」


願ったり叶ったりとばかりに二つ返事で了承するブラッディ。


暗「じゃあ、いくよ?『あなたはただの人間』!」


暗示をかけ、人間を不死者へと変化させる魔法をとく。それで人間に戻る。


血「こ、これで戻…れ…あ、れ?」


何も変化しない自分の体を不思議そうに見るブラッディであったが、次の瞬間、彼女が想像だにしていなかっただろう変化が訪れる。


皮膚はカサカサに干からびていき、髪の毛は白くなり、抜け落ちていく。一瞬で老婆のようになり、それを通り越してミイラのようになる。


暗「まあ、何百年も生きてきたのが急に人間に戻ったらこうなるよね。」


暗の呟きを聞くこともなく、干からび息絶えるブラッディ。

そのミイラのようなものを粉々に踏み砕いて暗は去っていく。


暗「ダメな人間も異世界に来れば異常にスゴくなるはずなんだけどなー?早く次の人を探さないとね…」


そして姿を消す。後に残ったのは一山の砂のようなもの。それも風に吹かれてどこかへと消えていった。



ありがとうございました。明日一日空けて、明後日から新編開始します。

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