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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
命灯不滅
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正解

正解


白河のほとり。卯月が手元のタブレット端末を見ながらオニキスと通信をしている。


卯「ふむ…もう少し先に進め。その先約220km地点に私たちはいる。」


オニキスについているGPSを元に合流地点を考えているのだ。

隣では、卯月とほぼ同じような機器をオニキスに取り付けている菜真理がため息をつく。


菜「私たちが四日間歩き通した距離を三時間で追い付くか。移動はセンに頼んだ方が効率的か?」


卯「なに、早く進む方法などいくらでもある。だが、それではおもしろくないだろう?いざとなればオニキスに全力で走らせればどんな距離でもすぐ着くさ。」


水の精である江とセン、それに元々が水に親和する存在である美和の水中での移動速度は極めて速い。それに加えて、卯月たちがオニキスたちよりも川下にいるので水の流れが更なる加速を生む。

オニキスという荷物を引っ張ってなお速い。時速100kmは優に出ているだろう。


卯「ふむ、この辺りで休むとしよう。しばらくすればオニキスたちも追い付くだろう。」


エ「どうせすぐ追い付けるんだから、進んでてもいいんじゃないのぉ?」


そばを歩くエメラルドが言う。

エメラルドはオニキスがいない間に何かあっては、と気を張っていたが、心配するような事態はなく、しばらくすればオニキスが帰ると聞き安堵していた。

エメラルドも相当な実力者だがあまり戦闘は好まないたちである。特に誰かを守って戦うのは苦手としている。故にオニキスに戦闘関連を全て丸投げするのが楽なのだ。


卯「それもそうだが、別にそれほど急ぐ意味も無いだろう。」


エ「そういえばそうねぇ。」


と、卯月がそれまで黙っていた睡蓮に話をふる。


卯「睡蓮もできるだけ早く娘に会いたいだろう?」


蓮「お気遣い、ありがとうございます。ですがオニキス様が側にいらっしゃれば万一のことも無いと思いますので。あえて言えば美和の顔が見られず少し寂しいですが…。」


思えば睡蓮が娘とも夫ともこれほど長期間離れていたのは初めてのことである。しかし、卯月たちとの話の興味深さやオニキスへの信頼感から『寂しい』という感情は、それほど大きくない。

母親として、妻としてどうなのだろうと少し悩む睡蓮は、きっと良き妻であり良き母だろう。


――――…


それからしばらく。オニキスから卯月に通信が入った。


卯「ああ、その辺りに私たちもいる。上がってこい。」


卯月が言うと、ほぼ間を開けないで卯月たちから少し離れたところの水面がザバァ…と盛り上がり


セ「着いたぞー!」


美「ん、とうちゃく。」


真っ先に幼女'sが岸に飛び乗った。

少し遅れてオニキスが上がってくる。


オ「案外長かったな…あ、卯月さん。」


少し辺りを見回してすぐ卯月たちを見つけて近づく。

と、美和が走っていって睡蓮に抱きつく。


美「ん、ただいま。」


蓮「お帰りなさい、美和。」


睡蓮が美和を駆け寄る勢いのまま抱き上げる。


オ「なんだかんだでお母さんが一番なんだろうな…」


卯「ふむ、そのようだな。」


追い付いてきたオニキスがしみじみという。


江「感動の再会に水指すようだけど~、早く渟のところに戻ってあげないと~。」


江が申し訳なさそうに言う。ちなみに彼女は半身を水面から出しただけで岸に上がってきてはいない。


蓮「あらあら…すみません、卯月様。あまり龍を待たせても行けませんので…」


卯「あぁ、早く帰ってやれ。龍も寂しい思いをしているだろうからな。」


あわただしく睡蓮と美和、江が水の中へと帰っていく。

それを見送ると、オニキスは卯月と菜真理に向き直った。


オ「改めて…ただいま戻りました。」


卯「あぁ、よく戻った。きっかけはお前の本意では無かっただろうが、大分たのしそうにしていたじゃないか。」


菜「その上厄介事まで…お前は何かあるごとに厄介事に関わらないと気がすまないのか?」


オ「いやぁ…」


実際、オニキスたちはいく先々で厄介事に巻き込まれている。しかもそのほとんどの発端がオニキスなのだ。

申し訳なさそうに頭を掻くオニキス。と、卯月が欠伸あくびをして言う。


卯「ふぁ…こう遅くまで起きていたのは久しぶりだ。オニキスには色々と報告してもらうが…」


菜「全て明日だ。私も眠い。」


時刻は深夜、というより明け方4時付近。体が子供な卯月と菜真理には少々厳しい時間帯だ。

一行は感動の再会もそこそこに眠りについた。


――――…


眠る一行に近づく怪しい影。


?「こいつは宿にいたガキだし…これは双子?まあ、こんな子供な訳ないし…いたいた。多分コイツでしょ?」


影は一行を一人一人覗き込み、エメラルドの近くで歩を止めた。そして、大きく口を開くと…


エ「ミニマムメテオ。」


エメラルドが操る、超高速で動く小石に頭を貫かれた。

と、ブリキやオニキスが起きてきて周囲に明かりをつける。


エ「うわぁ、ホントに再生するんだぁ…ちょっとキモい。」


飛び散った脳髄やら何やらがうぞうぞと集まっていく様子を見て、それらを飛び散らせた本人が少し体を引く。

頭が再生しきらない内に、オニキスが側の木に手足が動かせないように縛りつける。

そして、再生した顔をみてみれば…


菜「これがブラッディか?」


オ「そう。まあ、こうなるのは想像できたけど…本当に来るとはね。」


卯「全くだ。せめて、来るなら昼間に来ればよかったものを。お陰で私が不眠剤をのまなくてはいけなくなったじゃないか。」


死者の都の支配者ことブラッディその人であった。


血「な、なんで!?」


顔が再生すると同時に、声帯も回復したのだろうブラッディが叫ぶように言う。


卯「なぜバレたか、か?どうなんだ、オニキス?」


卯月がオニキスに顔を向ける。


オ「そもそも着いてきているのは気づいていた。

が、卯月さんとなーちゃんの指示でここまで気づいていないフリをしていた。」


オニキスの回答に愕然とするブラッディ。

水中では空中よりも音がよく伝わる。白河の水はそれほど濁っているわけでもなく、視界は確保できていた。その上、オニキスは移動をセンか江に任せきっていたので周囲を警戒する余裕が十二分にあった。そんな環境で超感覚を持つオニキスが後を追ってくる存在に気がつかないはずも無いだろう。


卯「そもそも、だ。お前が狙うべきだったのは私かなーちゃんだ。さっき下僕にするなりなんなりしようとしていたのはただの下っ端だ。」


エ「ちょっとぉ!それはひどいんじゃなぁい?」


卯月の言葉にエメラルドが文句をつける。


卯「そして今聞いてわかったかもしれないが、こいつは男だ。」


エメラルドの声は女性にしては若干低い。それでも男の声とは思えないのだが。

今回のエメラルドの役目はダミー。一行の中で大人の女性に見えるのはエメラルドのみ。声で分かるだろうと思うが、まさか外見幼女が世界を移動する技術を持っているはずがない、という先入観を利用したトラップである。

もし卯月か菜真理が狙われるようであれば、オニキスの拳がブラッディの頭を吹き飛ばすことになっていただろうが。

と、菜真理がブラッディに近づく。ブラッディは逃げ出そうと全力でもがくが、縄はビクともしない。


卯「私特製のカーボン繊維入りロープだ。オニキスくらいのパワーがなければ切れないだろうな。」


と、ブラッディの目に光が宿る。


血「そうだ、黒兄!助けてよ!」


あれほど冷たくあしらわれれば気づくようなものだが、ブラッディはまだオニキスが自分の味方になると考えている。ある意味一途と言えるだろう。

が、現実は残酷だ。


オ「いや、無理だな。」


キッパリとした断定。


オ「そもそもその『黒兄』というのが嫌だ。今のお前は一般的に言えば美形だが…卯月さんから送られてきたデータで昔のお前の顔を見た。あれで『黒兄』は無い。鳥肌がたつ。」


この世界に来る前のブラッディ、茂無端子は良いように言えばブサカワ、遠回しに言えば容姿に不自由している、といったところだ。はっきり言えばそれで『にい』などといわれても萌える要素は一欠片も無い。


オ「俺はお前にこれといった思い入れは無い。昔馴染みとかなら話は別だが…特に知りもしないなかだしな。」


希望は断たれた。

と、至近距離にいる菜真理がブラッディに話しかける。


菜「だが、お前は運が良い。おそらく偶然だろうが正解を引き当てたからな。」


その表情は笑顔。

そこに希望を見いだしたのかブラッディの表情も明るくなる。


菜「私が金よりも土地よりも欲しかったのはな、『検体』だったんだよ。」


菜真理の笑みが真っ黒に染まる。


菜「不死者なんて存在にはこれまでお目にかかったことが無いからな。少し仕組みが知りたかったんだよ。」


と、卯月が進み出る。


卯「三日以内にお前が来るか、誰かを送れば元の世界に戻してやろうとなーちゃんと相談していたのだがな…今日来たということは無償で検体を提供するということだろう?」


ああ、哀れなりブラッディ。二人のマッドサイエンティストに目をつけられるとは。


二人はオニキスに改めてブラッディをしっかり拘束させ、木陰の奥へとひきずっていった。

本来ならこの場にいるオニキス、エメラルド、ブリキ、ウルフのうちの誰かが護衛につくべきなのだろうが…


ブ『吾輩は遠慮しよう。』


ウ「近づいちゃいけない。」


エ「アンタ行きなさいよぉ!」


オ「い、いや…」


狂気の気配が彼らをその場に釘付けにするのであった。


エ「これで『正義の味方』なんだからねぇ…」


そう。菜真理はまだしも、卯月はこれで正義の味方なのである。


――――…


翌朝。オニキスが起きてみると卯月と菜真理は一緒に眠っていた。

二人が起きるまで待ち、話を聞いてみると


卯「あぁ、思っていたよりも興味深くは無かったな。謎の部分は『魔法』としか言いようがなくてな。科学者としてはあまりおもしろくは無かったよ。」


オ「…殺してはいないんですよね?」


卯「あんとかいう闇の精が来たから任せたんだ。お前の知り合いだろう?」


ヒーローも吸血鬼もロリコンも、マッドサイエンティストには敵わない。そういうことである。


――――…


一行はとうとう目的地へ近づく。しかし、最後の関門が彼らを待ち受ける!?


オ「…科学者って怖いな…」


ありがとうございました。これにて『命灯不滅』編完結です。

番外編を1話はさんで、新編へ入っていきます。

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