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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
命灯不滅
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西方

前回予告とタイトル変更。『強行』は少し先になります。

西方


嵐のように占い婆が訪れて、嵐のように去っていった。多少落ち着きを取り戻した店内で女将が床から何かを拾い上げた。


「ん?なんだい、これ。」


セ「なんだー?」


センが女将から何やら紙切れを受け取ってじっと見た後、オニキスに渡す。


セ「…読めないぞー。」


オ「ん?」


セ「『へ』と…『かうが』と『い』ってのはよめるんだぞー…」


思えばセンが何か文章を読むような機会も無かった。まだまだ幼女である。平仮名が読めるだけまだ良い方だろう。


オ「『西に向かうが吉 占い婆』か…」


オニキスがふとセンを見ると頬を膨らませている。


オ「卯月さんたちと合流したら勉強教えてもらう?」


セ「むー…勉強は嫌いだぞー…」


オ「ははは…」


子供の頃は皆そう言う。苦笑いしながらも、教育について少し真面目に考えてみるオニキスであった。


オ「(だけど…なんで日本語が使われてるのかいまだに分からないな…)」


――――…


「西ねぇ。動物園にはもう行っただろ?あとは…孤児院くらいかねぇ?」


オ「孤児院?そんなの必要なのか?」


不死者は生者とはそもそもの身体機能が違う。もちろん、不死者同士でも、生者が相手でも子供ができることは無い。

そして、子供が不死者になっても急激に成長するか、上手く適合できずに死んでしまう。

ならば、『孤児』などというものがこの町に存在するのか。


「ああ、あたしらのお仲間じゃないよ。外からそういう子たちをつれてくる変わり者がいるのさ。」


オ「へぇ…」


ここ、死者の都でも普通の都市と同じように穀物、野菜、家畜を生産している。しかし、消費量は最低限なので自然とそれらは余ってしまうのだ。


「だから、食べ物も安いんだよ。それに、金目のモノも貯めるだけ貯めて使わないからね!」


万年老後生活のようなものだ。


――――…


今回はしっかり留守番に江を残し、幼女たちを引き連れてくだんの孤児院へ訪れる。女将の『食べ物とか服は余ってるからねぇ…外の話でもしてやれば良いんじゃないかい?』とのアドバイスから、手荷物はそれほど多くない。


オ「ん?ここがこうだから…んん?」


地図を見るのは苦手なオニキスである。

と、センと美和がオニキスが持っている地図を覗き込む。


セ「どこに行くんだー?」


オ「うん?えっと…ここかな?」


地図上で孤児院を指すオニキス。と、美和がオニキスから地図を取り上げて近くにいた人に近づく。


美「ここ、どこ?」


そう言いつつ地図を差し出す。

小さな子供に質問されて邪険に扱うような人間は中身から腐っている。

幸運なことに、話しかけた人は腐っていなかった。


「ん?えっと…ここだね。お嬢ちゃんはどこに行きたいの?」


美「ん、ここ。」


「ああ、孤児院?それじゃあここをまっすぐ。それからここで右に曲がればすぐだよ。」


美「ありがと。」


「いえいえ、どういたしまして。」


何事もなく情報収集を完了して、オニキスの所に戻ってくる。


美「あっち。」


オ「…情けないなぁ、俺。」


方向音痴は努力しなければどうしようもない。オニキスの弱点である。


――――…


美「ん、ここ。」


美和に手を引かれて歩くことしばらく。周囲の生暖かい視線に晒されるのもしばらく。オニキスたちの目の前にはかなり大きな屋敷が建っていた。


セ「ここかー?」


美「ん、ちずのとおり。」


オ「これだけ大きいと何人すめるかも分からないなぁ…」


それほどに大きな屋敷。現代で言えば国会議事堂か何かほどの大きさ。比較的大きな建設物が多い死者の都の中でも違和感を発するその屋敷の表門の横には『カエサル孤児養護施設』と書かれた立派な表札。


「失礼ですが、外からのお客様ですか?」


と、門の横にある小さな控え室のような所から一人の女性が出てきてオニキスに声をかけた。


オ「この町の外から来た、という意味ならそうだな。正式な予約とかはしてないけど…」


「いえ、占い婆様が小さな女の子を連れて外からのお客様がいらっしゃると言われたので。どうぞこちらに。」


全ては占い婆の手の中。年の功とはこの事か…などと考えながらも、先に立って案内する女性についていく。


「外から誰かが来るのはウチだとそう珍しくも無いんですけどね。大体が小さな子供とか、野垂れ死に寸前の人だったりなんです。お客様みたいにしっかりした大人が来るのは多分初めてなんじゃないかなぁ?」


建物の中に入っていきつつ案内嬢はオニキスたちを退屈させないようにしているのか話を続ける。


「カエサルさん、ここの創設者で一番偉い人なんですが、は占い婆様と随分話し込んでいたんですけどね。私は昔からどうにも難しい話は苦手なたちで、早々に逃げちゃったんですよ。」


アハハ、と笑いながら言う。オニキスはそこに親近感を覚える。かく言う彼も難しい話は昔は卯月に、今では卯月と菜真理に投げっぱなしである。


「あ、ここです。カエサルさんはいつ来てもらっても大丈夫だと言ってましたので。」


どうぞごゆっくり、と言い残して案内嬢はもといた門の横に戻っていく。現在位置は一階入り口すぐ横。


オ「ここって、学校とかだと事務室がある場所だよな…。」


そんなことを考えつつ、ドアをノック。すると…


「やあやあやあ!よく来てくださいました!占い婆からお話は聞いています。さあさあ、入って!」


何やらテンションの高い小太りのおじさんが中から表れてオニキスたちを部屋の中へと案内した。コノカンわずか10秒。


「私がここの創設者、カエサルです!ようこそ、外からのお客人!」


オ「あ、ああ、どうも。俺はブラックオニキス。オニキスでいいです。」


勢いにのまれ、自然と言葉遣いも改まるオニキス。オニキスがそう言うと、カエサルはオニキスの手をガッシリと掴んで握手をした。


カ「オニキス様、素晴らしいお名前です。そちらのお嬢ちゃんたちは?」


セ「センだぞー!」


美「ん、みわ。」


センも美和も良い意味でマイペース。オニキスのようにカエサルの勢いにのまれることもなく、返事をする。


カ「センさんにミワさん!ようこそ、ようこそ!」


二人の小さな手を痛くないようにそっと掴んで握手。


カ「お二人とも、ウチの子たちと仲良くなれそうなお年頃です。よかったら一緒に遊んであげてもらえませんか?ほら、今は外で遊ぶ時間です。」


カエサルが窓から外を指差す。そこには広い屋敷にみあう大きさの庭で走り回って遊んでいる子供たちがいた。


セ「おー、楽しそうだぞー!」


美「おにきす、いっていい?」


二人とも日頃あまり同世代の子供と接することは無いので、興味津々な様子。オニキスが首を縦に降ると、勇んで外に飛び出していった。

見ていると、二人とも人見知りすることなく、他の子供たちも無駄な仲間意識などがあるわけでも無いようで、すぐに混ざって遊び始めた。


オ「気を使って貰ってすみません。」


カ「いえいえいえ!子供は子供と遊ぶのが楽しいものです。人生経験も大切ですけどね!」


カエサルはニカリ、と笑って言う。


オ「占い婆がここに来てあなたのことを随分と生き生きと話していたもので、お会いできるのを楽しみにしていたんですよ!」


一拍の間。そして、言う。


カ「『外の世界』からのお客様なんてしばらくお会いしていませんでしたから。」


――――…


何でも知っている占い婆と、謎の人物カエサル。

悪い人では無いようだけれど…!?


カ「ようこそ、ようこそ!」



ありがとうございました。

個人的な用事で明日明後日の投稿はお休みします。

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