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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
白河騒動
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小屋

小屋


歩くこと数十分、卯月と菜真理は息も絶え絶えだった。


卯・菜「「はぁ、はぁ…」」


エ「まさか身体系の改造が全リセットされてるとはねぇ。」


オ「俺たちのは変わってないけどな。」


卯「はぁ…おそらく、はぁ、機能を、はぁ、多く、はぁ、詰め込みすぎ、はぁ…」


菜「爆弾の、はぁ、影響、はぁ…」


オ「二人ぐらいならなんとか乗せられるかな?」


卯「うおっ!?」


菜「んきゃっ!?」


ヒョイ、と二人を肩に乗せるオニキス。


オ「やっぱり二人とも軽いで…俺の肩に幼女が二人…(プシッ)…エメラルド、もしかして俺は天国にいるのか?」


エ「…アンタってそんなキャラじゃなかったわよねぇ…はい、ティッシュ。」


――――…


しばらく歩くと一行は目的地にたどり着いた。そこにあったのは森の中の開けた場所に建つ屋敷

だった。オニキスは玄関をくぐり、絨毯の上に二人を降ろした。


卯「…すまない、オニキス。」


菜「足手まといになったな。」


オ「俺にとってはご褒美でした!」


エ「随分楽そうだったけどぉ、重力軽減でもしてたのぉ?」


オ「バカ野郎!幼女の重みを消す筈が無いだろう!」


エ「えぇー…」


菜「…頼んだら、お姫様だっこ…してくれるかな?」


エ「…何よりも怖いのは、この場で一番まともそうなのがアタシってことだわぁ…」


一行は屋敷とその周辺の探索を始めた。


――――…


しばらく経って卯月が皆を呼んだ。


オ「屋敷に比べると小さい小屋ですね。」


エ「物置とかじゃないのぉ?」


卯「いや、恐らくは持ち主にとって重要なモノが入っているんだろう。見ろ。」


卯月が指差したのは複雑に作られたカラクリ錠。


卯「解き方を知っている者でなければ開けられたモノではない。」


オ「壊したらどうです?」


卯「これは開けたあとはこの錠がそのままドアノブになる仕組みだ。壊せばドアそのものが開けられなくなる。もっとも…」


ニヤリと笑い、


卯「私に掛かればこんなもの濡れた障子紙より容易く破れるがな。」


次の瞬間、鍵は開いていた。


エ「本だらけねぇー。」


卯「…ふむ、ここは書庫だな。なになに?『世界の仕組み・創刊号』か…」


入ってすぐ側に置いてあった本を手に取る。


―――…


~『魔法』の根底は『召還』である。~


例を挙げてみよう。火を燃やすのに必要な要素は三つ、燃え続ける為の燃料、燃料の発火点以上の温度、そして酸素である。しかし、魔法で出す火は酸素以外の条件を満たしていない。つまりあれは火ではないのだ。さらに分かりやすい例を挙げよう。この世界では『闇属性』や『光属性』『聖魔法』などと呼ばれるものだ。光で攻撃をするとなれば、相当量の光量と熱量が必要になる。虫眼鏡で光を集め、紙を燃やしたことがあるだろうか?光属性の攻撃はあれを何百、何千倍で行うのだ。闇属性などさらに分からない。そもそも闇とは光がない状態を指している言葉で、光の様に定義されるものではないのだ。ただ光度が低い状況をさす言葉なのだ。聖魔法などもはや言うまでもないだろう。神がもたらす奇跡の力か狂信が生む幻想だろう。

では魔法とは何なのか。私はこれを異次元物質を召還しているのだと仮定した。物理法則や常識も意味をなさず、化学知識も通用しない。

どこかにある光が十分な光度を必要とせずに物質を破壊できる熱や質量をもち、闇が光と同じように定義され、信仰心が現実に奇跡を起こし、火は条件が揃わずとも燃え、自然に爆ぜる世界、もしくは次元があるのだろう。

しかし、この世界の住民はこれを当たり前だと考え追求しない。この問題を考えることができるのは私たち魔法の存在しない科学の世界の民だけだろう。


―――…


オ「ダイヤさん、速読できるんですか?」


卯「いや、よく言われるような速読はできない。単なる平行思考の応用だ。」


ものの10分足らずで本を閉じる卯月。


卯「しかし…なんとも漠然としているな。肝心の魔法だか召還だかの使い方が少しも書いてない。」


菜「くまなく探したが…魔法学と題される本は山のようにあったが、魔法用学などというものは欠片も見当たらない。」


卯・菜「「ふぅむ…」」


考え込む卯月と菜真理。その様子をしばらく眺めていたオニキスは、いきなり鼻から血を噴き出した。


オ「か、考える幼女…芸術だ…!」


エ「芸術に謝りなさいよぉ。」


しばらくすると満足したのかオニキスは鼻血をぬぐった。


オ「しかし、魔法なんてあやふやなモノは適当にやれば出来るんじゃないか?

例えば…強くて可愛くてカッコいい幼女、おいで!」


エ「そんなの来るわけ…」


と、コミカルなポン!という音と煙と共に…


?「ライだよー!」


?「フーですー!」


?'s「「おにぃちゃん、呼んでくれてありがとー!」」


オ「…(プシッ)…!(バタッ)…」


エ「…アンタ、今に鼻血の出しすぎで死ぬんじゃない?」


またもオニキスを中心に紅い華が咲くのであった。


――――…


卯「ふむ、つまりお前たちは魔法の元の次元から来たのか?」


ラ「ん?ったりまえじゃん?」


フ「魔法で呼ばれたんだからそうに決まってますよー!」


菜「…私じゃ…ダメなのか?」


オ「…ん…俺は…!?」


エ「あ、起きた?」


目を覚ましたオニキスを待っていたのは(彼にとっての)天国だった。


オ「神様…ありがとう…幼女…ハレルヤ…(プシッ)」


またも彼は意識を失うのであった。


――――…


エ「だから膝枕はやめた方が良いっていったんですよぉ。」


卯「私なりに配慮したのだがな。」


そう、オニキスは卯月に膝枕をされていたのだ。そして、彼の腹の上にはライとフーと名乗った二人が座っていた。

今はしっかりとした布団に寝かせられているが。


エ「それにしても…オニキスってそんなに鼻血ばっかり出すヤツじゃなかったんだけどねぇ。どうなってるのかしらぁ?」


ラ「そりゃ、あんだけ血が余ってたらなぁ。」


フ「すぐ出ちゃうのも当たり前です!」


卯「血が余っている…とはどういうことだ?」


ライに聞く卯月。


ラ「ん?なんだお前ら。知らなかったのか?」


フ「わかった!皆さん、旅人さんですね?」


ライが首をかしげ、フーがポン!と掌を合わせた。


卯「旅人…どこかで見たな。…これか?」


――――…


世界の壁を越えるもの、これすなわち旅人なり。


――――…


パラパラと手元の本の一冊を開き、指差す卯月。


ラ「そーそー!」


フ「それで、皆さんは旅人さんなんですか?」


卯「うむ、この文章が『異世界から来たもの』という意味ならば、そうなるな。」


ラ「ふーん。」


フ「なら、なんにも知らないんですね?」


卯月が答えると、二人は少し自慢げな顔をした後に何処からか眼鏡を取り出した。


ラフ「「それじゃあ、教えてあげる!」」


――――…


一方、オニキス。


オ「ぅう…桃源郷…幼女…っはっ!?」


ガバッ、と体を起こし、周りを見て溜め息をつく。


オ「はぁ、やっぱり夢か…。幼女の膝枕…ん?」


そして布団の中の違和感に気づく。


菜「…私じゃダメなのか?…」


オ「ぅおっ!?どうしてここに?」


菜「なぁ、私じゃダメだからあの二人を呼んだのか?」


オ「え、えぇっと…とりあえず布団から出」


菜「私にはお前しかいないのに…お前は私じゃダメなのか?何でもするぞ?」


まったく話が通じない菜真理に焦るオニキス。


オ「いや、別にちょっと魔法を試しただけで」


菜「あぁ、それもそうだな。今の私には地位も金も権力も何もない。おまけに戦力にもならない。必要な訳がないよな、は、ハハ…」


オ「えっと…」


菜「それなら…お前を殺せば私のモノニナルカ?」


そう言って菜真理が取り出したのは1本のナイフ。


菜「大丈夫だぞ。私も後から行くからな?フフ…あっ!」


オ「ふぅ…んぐっ!?」


と、オニキスはそのナイフを奪い取ると自分の腹に突き立て、抉った。


オ「ぐっ…」


菜「な、な、何を…ち、血が…」


オニキスはその状態のまま、ナイフを握る手とは別の手で菜真理の頭を撫でる。


オ「大丈夫、この程度じゃ俺は死なない。これでも色々と改造されているんだ。」


菜「な、なら早く手当てを!」


オ「俺を殺したかったんだろ?ならこのままコレを抜かなければいずれ死ぬ、くっ、ガフッ…」


余裕を装うが、咳には血が混じる。しかし、オニキスは止まらない。


オ「俺を殺して君のモノにするか、俺を生かして俺のものになるか。君が選んでくれ。」


それを聞く菜真理の眼から涙が流れる。


菜「すまないっ…私は愚かだった!」


そしてそのままナイフを抜き取る。

見る間にオニキスの傷は治っていく。


菜「すまないっ!本当にすまないっ…私はなんてことを…」


オ「人は誰だって間違える。なーちゃんの幸運は相手が俺だったこと。他のヤツだったら死んで…」


と、オニキスが起こしていた上体を布団の上に倒す。


菜「お、おい!しっかりしろ!おい!」


オ「大丈夫…貧血…これだけ…理由…」


そして目を瞑り、言う。


オ「幼女の死は…世界の…損…失…。」


そのままオニキスは意識を手放した。


――――…


こちらは残りの面々。


ラ「魔法を使うには血液を使うんだ!」


フ「魔法を使うと血液が減っちゃうんです!」


眼鏡をかけたライとフーが言う。


ラ「例えば、火の玉を出すには大体0.1リットルの血液を消費するんだ。」


フ「私たちを呼ぶには大体10リットルぐらい血液が必要なんです。」


卯「だが…」


ラ「こら、そこ!」


フ「何か言うときは手を挙げないとメッ!ですよ!」


二人に遮られ、渋々手をあげる卯月。


ラ「はい、そこ!」


フ「なんですか?」


卯「だが、人間と言うものは総血液量の約1/3を失うと出血死してしまう。1/3以下の量で10リットルもの血液を持てるのは375kgの大男だけだ。それも正常な体型のな。」


卯月が意見を言うと二人が頷く。


ラ「そう!だからホントは人間二人ぐらい絞らないとアタシたちは呼べないんだよ!」


フ「なのにおにぃちゃんは私たちを一人で、しかも苦もなく呼んだんですよ。どうしてなんでしょうね?」


二人揃って首を傾げる。と、卯月が自慢げに言う。


卯「それはそうだろう。オニキスは私の最高傑作。出血死など冗談にもならない。自前の血液に加え、人工血液、流動性ナノマシンがオニキスの体内を回っている。その上、失う側から再生していく。恐らくは全て使ってお前たちを呼び、瞬時に回復したのだろうな。」


ラ「おぉ、なるほど!」


フ「だからだったんですね!」


と、エメラルドが口を開く。


エ「それでぇ?それとアイツが鼻血で死にそうなのはどう関係がある訳ぇ?」


ラ「それはだな!」


フ「普通の人の何倍も血液があるおにぃちゃんは魔法が発動しやすいんです!」


ラ「それで、魔法の力は想いの力なんだよ!」


フ「極度に精神が昂ると意図せずに魔法が発動してしまうんです!」


ラ「でも、おにぃちゃんは魔法を使う気がない。」


フ「そうすると、失われるはずだった分の血液が行き場を無くしてしまうんです。」


ラ「それで、自然な形で出てくる。」


フ「それがおにぃちゃんの場合、鼻血なんです!」


卯「まあ、オニキスが大量出血で死ぬことは無いだろうから安心しろ。」


全て聞いたエメラルドは、溜め息をついた。


エ「技術の無駄遣いってことだけはよぉく解ったわぁ…」


――――…


オニキスも回復し、一行は屋敷の探索を続ける。そして、あるものを見つけるのであった!


次回『目的地』


菜「悪の誇りを刻め!」


ありがとうございました。ミスがあったらお知らせください。

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