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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
命灯不滅
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水晶

水晶


死者の都に来て四日目。ブラッディに菜真理が言った期限の日である。

彼女とオニキスが初めて会った日を一日目と数えても良かったが、彼女は今日を最終日と考えている。


オ「今日は何をしようか。」


やることが思い付かないときは地元の人から情報収集。観光の基本である。


「そうさねぇ、この町の名物なんて山ほどあるけど…あんまりここから離れない方がいいんだろ?」


江「そうだね~、流石にそれはブラッディちゃんに悪いからね~。」


と、璃楽亭の女将と江が首を捻っていると…


「ひゃっひゃっひゃ。今日は占い婆の占い回りの日さね。」


全身をすっぽりと包めるほどの黒いマントに、目深まぶかに被ったフード。顔を完全に隠した人物が入ってきた。物言いと声で女性ということだけわかる。


「お!ちょうど良い時に来たね!今、外からのお客さんが暇潰しを探してたとこだよ。」


「ひゃっひゃっひゃ。占いでこの時間にくるのが吉って出たからねぇ。」


女将が女性を指して言う。


「この人は死者の都で一番の占い師だよ。言ってることは九分九厘当たるって評判なんだ。」


一瞬で人間の頭ほどもある水晶玉を手の上に出現させた女性。


「ひゃっひゃっひゃ。外からの客人、儂は占い婆さね。未来のこと、過去のこと、悩み事、験担げんかつぎ、なんでもござれの占いじゃよ。」


空いているテーブルに水晶玉を置き、正面に椅子を置く。


「ここの連中の運命は見尽くしたさね。新しい未来を見せておくれよ、客人。」


今日の予定は占い婆の占いから始まる。


――――…


「まずはそこの嬢ちゃんからさね。」


占い婆が指名したのは美和。不安げにオニキスを見上げる美和だったが、オニキスが背中を軽く押して送り出すと占い婆の正面に座った。


「ふむ…」


占い婆の雰囲気が一転して真剣なものになった。水晶玉に手をかざし、その中央を凝視する。


「嬢ちゃんは凄いお父さんか、ご先祖様を持ってるねぇ。男からの守護力が尋常じゃないよ。」


正解。だが、これは町の中で知っている者も何人かいる。噂話を拾い聞きすればわかるかもしれない。


「人間でもない、ね。あんまり喋りすぎると儂が危ないからね。この辺でやめておくよ。

さてと。嬢ちゃん、何か知りたいことはないかい?見えてることなら教えるよ。」


美和は少し迷ったあとに婆に聞く。


美「けっこん、してる?」


「将来の話かい?」


美「ん。」


婆は水晶玉を睨みながら言う。


「なかなか難しいね。運命の人とはもう会ってるさね。だけど、そこに結び付くモノが多すぎるね。だいぶ厳しい争いになるよ。

嬢ちゃんとの結び付きはだいぶしっかりしているけど、一番じゃぁ無い。勝機があるのは相手が変わったとき。上手くいけば嬢ちゃん以外に選択肢が無くなるね。精々女を磨いておくんだね、ひゃっひゃっひゃ!」


占い婆は楽しげに笑うと美和への占いを締めくくった。美和も満足したらしい。椅子からおりてオニキスに駆け寄る。


美「おんなをみがく、がんばる。」


オ「まあ、程々にね?」


見た目は幼女、中身は生後半年も経っていないのである。子供らしく、それが一番だとオニキスは思うのであった。


――――…


「次は…そこの嬢ちゃんたち三人。誰か一人おいで。」


婆が指したのはセン、ライ、フーの三人。少しの話し合いの後、センが進み出る。


セ「お願いするぞー!」


「ひゃっひゃっ、礼儀正しいねぇ。」


婆はそう言うと水晶玉を除きこむ。

しばらくすると、驚きの表情で顔を上げる。


「嬢ちゃんは水と一緒に生きてきたのかい?凄い勢いで水が流れてるのが見えるよ。」


これにはオニキスも驚いた。センは水の精だが、見た目は人間である。あえて言うならば髪の色が非人間的だが、そこだけでセンの正体を暴ける者は少ないだろう。

加えて、ここでセンが水の精だと知っているのはオニキスたちを除くと暗だけなのだ。


「今は修行の旅…いや、世界を知るための旅行中だね。嬢ちゃんの姉さんたちが大分心配しているよ。連絡くらいしてやりな。」


セ「あ!忘れてたぞー!」


これは本物かもしれない、とオニキスは思い始めた。卯月ならばもっと疑ってかかるのだろうが、オニキスは比較的非日常的なことも信じやすいたちなのである。


「嬢ちゃんは何が知りたいね?」


セ「んー…将来、センがどうなってるか知りたいぞー!」


センが言うと、婆は水晶玉を見もせずに言った。


「嬢ちゃんは世界で一番偉くなるさね。毎日楽しく遊んで暮らせるよ。」


セ「本当かー!」


センはオニキスに駆け寄ると言う。


セ「あの人、いい人だなー!」


ちなみに、センもオニキスたちも自己紹介などしていない。婆は『セン』というのが目の前の幼女だということも当てているのだ。


――――…


「そこの嬢ちゃんたちは二人一緒の方が良いだろうね。」


次はライとフー。婆に言われて椅子に半分ずつ腰かける。


ラ「よろしくな!」


フ「お願いします、です!」


ライが婆に笑いかけ、フーが頭を下げる。

婆は水晶玉を覗くと、しかめっ面になって顔を上げた。


「嬢ちゃんたちは速すぎるね。覗くのも人苦労さね。例えば…そうさね、風と雷だね。」


ラ「凄いな!」


フ「大当たり、です。」


雷の精と風の精。それがライとフーである。


「最近になって面白い遊びを見つけたんじゃないかい?退屈そうだったのが急に楽しそうになってるからね。」


面白い遊び。恐らくはオニキスのことだろう。

婆が前の二人と同じ質問をすると、二人は


ラ「そうだな…」


フ「おうちを建てるなら、どこが良いですか?」


オニキスは首をかしげる。かなり賢いとはいえ、ライもフーもまだまだ子供。だが、この質問は子供らしくない。

だが、婆はその意味を理解したのだろう。笑いながら答えた。


「ひゃっひゃっ、それは嬢ちゃんたちがいる所に決まってるさね。嬢ちゃんたちは強いからね、どこでも苦労はしないさね。

苦労なんてのは後の時代に放っておけばいいんだよ。」


ライとフーはその答えで満足したのか、婆に礼を言って立ち上がった。


――――…


「最後はアンタさね、旦那。」


そう言って婆が指差すのはオニキス。と、江と少し前に来た暗が文句を言う。


江「ウチもいるよ~。」


暗「そうだよ!私たちも見てよ!」


だが、婆は一蹴いっしゅうする。


「アンタらの運命は散々見てきたさね。それに、儂よりも遥かに年上だろうに。引っ込んでな。」


江「え~…」


暗「ぶーぶー!」


オニキスは苦笑いしながらも婆の正面に座る。と、婆は水晶玉をしまってしまった。

オニキスが怪訝そうな顔をしているのを見て、婆は言う。


「アンタは過去現在未来全部が強すぎるさね。水晶玉なんて使ったら、水晶玉か儂の目ん玉が破裂するよ。

少しくらいぼやけさせないとやってられないよ。」


そう言うと、婆はフードを上げてオニキスの顔をまじまじと見つめた。


オ「婆っていうからリッチのお婆さんだと思ってたんだけどな。」


婆の素顔は以外にも、若く美しい女性だった。


「ひゃっひゃっ!あんなしわくちゃ婆になるなんて御免だね。女ってのはいつまでも若くいたいもんさね。」


そう言いつつもオニキスを見続ける。しばらくして視線をきると、オニキスに言う。


「過去も未来も厄介事に巻き込まれすぎだよ。アンタはいく先々で暴れないと気がすまないのかい?」


オ「俺は何もしないでいたいんだけどな。周りがそうさせてくれないんだよ。」


オニキスがそう言うと、婆は人差し指でオニキスの顔を指しながら言った。


「いや、違うね。アンタが厄介事を引っ張ってきてるのさ。まあ、全部自分で解決してるからそれで良いんだろうけどね。」


婆は続ける。


「それじゃあ、何か知りたいことは…と言いたいんだけどね。アンタについてはそんなに分かることが無いのさ。それもしっちゃかめっちゃかさね。

ただ、一つだけ分かることがあったよ。」


一区切り。息をついて婆が言う。


「アンタは世界で一番強くなるさね。だけど、最後の最後で大きな決断を迫られるさね。それさえ間違えなきゃ全てが丸くおさまるよ。」


それだけ言うと、婆は立ち上がって扉の方へ歩き出す。

と、すれ違い様にオニキスにささやく。


「丸くおさまった後に儂を呼んでくれたら嬉しいさね。面倒事は嫌いだけど、面白そうなことには首を突っ込むのが儂の主義なんだよ。」


そして、璃楽亭を出ていく。


「今日は疲れたからもう終わりさね!散った散った!」


そのまま、どこかへと消えていった。

嵐が過ぎ去った後のような静けさが璃楽亭を包む中、江がポツリと呟く。


江「ウチ、婆の素顔初めて見たかもしれないな~…」


暗「私も…。だいぶ美人だったねー。」


――――…


セ「オニキスは一番強くなるのかー。

でも、一番偉くなるのはセンだからなー!」


オ「センちゃんの将来が楽しみだね。」


セ「一番偉くなったら、家来にしてやるぞー!」


――――…


占いの結果は皆それなりに満足のいくもの。だが、すぐそこに暗雲が立ち込めていた…!?


次回、『西方』。


セ「一番偉いんだぞー!」



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