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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
命灯不滅
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却下

却下


幼女たちとの買い物デートから帰ってくると、死者の都の支配者、ヴァンパイア・レディのブラッディが癇癪かんしゃくをおこしていた。


血「黒兄!なんで留守にしてんの?」


オニキスに詰め寄るブラッディ。だが、オニキスが気圧けおされることはない。


オ「予定が合わなかったんだ、仕方ない。」


血「普通、場所指定しといて誰も残してかないとかある!?」


オ「完全に忘れていた。」


血「マジあり得ないんだけど!!…まあいいや。さっさとあの女に繋げてよ。」


オニキスはその物言いに多少の苛立ちを覚えつつも、判断をするのは菜真理だと考え彼女に通信をいれる。


オ「…あ、なーちゃん。今大丈夫?」


菜『ああ。元の世界に帰る依頼の件か?』


オ「そうそう。」


オニキスが肯定すると、菜真理は少しの間の後に言った。


菜『元々の名前を聞いておいてくれないか?帰るのに必要だとでも言っておけばすぐに言うだろう。』


オ「わかった。」


菜真理がそういうのであれば、何か意味があることなのだろう。幼女の言うことに必要以上に疑問を持たない、それもまた正義である。


オ「ちょっと聞きたいことがあるんだが。」


血「なに?」


オ「お前の元々の名前を教えてほしいんだ。」


血「えー…」


渋るブラッディ。現代人の感覚からすれば当然の反応ともいえる。だが、菜真理はそこまでお見通しである。


オ「元の世界に戻るのに必要なことらしいんだ。」


そう言ったとたん、ブラッディの顔色が変わる。効果覿面こうかてきめんである。


血「…わかった。茂無しげなし端子はじこだよ。こういう漢字。」


ご丁寧に紙に漢字で書いた。


江「これはなに~?何かの模様~?」


オ「まあ、そんなところだな。限られた人にだけ意味がわかるんだ。」


それを覗いた江がオニキスに聞く。

オニキスは適当に返事をしたが、ブラッディが漢字を書いたことで彼女が元日本人ということが確定した。まあ、喋り方などでそれは半確定的だったが。


オ「茂無端子、だって。」


菜『ふむ、了解だ。手間をかけたな。依頼主に変わってくれ。』


オ「わかった。」


オニキスの仕事はここまで。あとは菜真理に任せるだけである。ブラッディにブルを渡すと、自分は幼女の相手に戻るのであった。


――――…


時は少しさかのぼり、地上の菜真理たち。

一行はオニキスと別れた地点から川沿いを更に河口へと進んでいた。危険なことも目立ってなく、快適な旅になっていた。

菜真理と卯月、それに客である睡蓮は移動はブリキに任せてその上に座っていた。


卯「睡蓮は龍のところに戻らなくてもいいのか?何かとやることもあったりするだろう。」


龍は非常に広範囲を支配している。オニキスたちが訪れた時はそれどころではなかったが、普段は領主のような政治的なこともしている。頂点である龍の妻、睡蓮にも当然それなりの仕事があるだろう。だが、美和がオニキスを連れていってから今日で三日目、睡蓮は卯月たちの側を離れていない。


蓮「ご迷惑といわれるのでしたら直ぐにでも帰りますけれど、そうでなければ皆様のお側にいさせてくださいませんか?

美和がオニキス様を連れていってしまったのはこちらの落ち度でございます。オニキス様がお帰りになるまでは担保として皆様のお側にいるのが道理でございます。」


立場があると何かと生きづらくなるのが世の中というものである。卯月やオニキスはそんなことも気にせずに行動するが。


卯「ふむ、それほど気にする必要も無いんだがな。オニキスに何かあることなど無いからな。」


オニキスのことを本人よりも知る卯月。オニキスへの絶対の信頼は自身の技術への信頼とイコールなのである。


卯「あえて心配な点を挙げるなら、お前の娘にオニキスが籠絡されないかだな。オニキスは小さな子供に弱すぎるのだ。」


蓮「わたくしたちとしてはそれはそれでとても喜ばしいことなのですけれど…」


なるほど、オニキスと半永久的な繋がりができれば将来は安泰かもしれない。

だが、それを良しとしない人物が一人いる。


菜「(そんなことになられては困るぞ…さっさとブラッディとかいうのの依頼に決着をつけなくては。なぜ三日も猶予を与えてしまったのか…即座に決めれば良かった…)」


自分で自分の首を絞めてしまった菜真理である。

と、卯月の通信機にオニキスからの通信が入った。


卯「たぶん、なーちゃんに用事だろう。」


そういって通信機を菜真理に渡す。


菜「あぁ、すまない。」


礼を言うと、卯月は『問題ない』と手をふった。


卯「なーちゃん用の通信機も作った方が楽かもしれないな。」


そして、上記の会話である。


――――…


菜「それで?報酬は決まったか?」


手元で作業をしながら菜真理が聞くと、ブラッディは自信満々に答えた。


血『アタシが帰った後のこの町をあげる!そこそこおっきいし、価値あるでしょ?』


菜真理はそれを聞いてため息をついた。


血『何よ?文句あるの?』


それが聞こえたのだろう。ブラッディが不機嫌そうな声で言う。


菜「お前は本当にそれで受けてもらえると思ったのか?」


血『どういうことよ!?』


菜「どうもこうも無い。そもそも、金を必要としていないのに土地を必要とする訳が無いだろう。

そこが何か利用価値のある土地ならまだしも、聞いてみればただの隠れ里だ。それに、住民のいる土地を再開発するのは面倒な事業になる。ましてや頻繁ひんぱんに侵略をうける土地なんて誰が欲しがる?

他に考えつかなければ、この話は無しだ。」


実際のところ、もし菜真理が死者の都を欲しいなら、オニキスにいえば簡単に手にはいるのだ。


血『ま、待ってよ!えっと…そうだ!闇の精に紹介して…』


菜「残念だが、既にオニキスが闇の精とやらには会っている。宿にいると思うぞ?」


ブラッディが何か思いついたように言うが、それもまた価値の無い提案。菜真理は一蹴いっしゅうする。


菜「他に無ければこの話は無しということになるが…」


血『待ってよ!まだ一日あるでしょ!?』


あぁ、残念。早くオニキスに帰ってきてほしかったのに。

菜真理は依頼を早く終わらせるためにブラッディに追い討ちをかけることにする。


菜「茂無端子、違法売春と薬物所持で経歴にキズがついているな。顔写真もあるが…欧米風なだけ今の方がマシじゃないか?母親は男と駆け落ちして行方不明、父親はアルコール中毒。少し古い情報だが、悪化はしていても好転しているとは思えないな。私なら帰りたいなどと思えないな。」


手元の端末に写し出されたのはブラッディ、茂無端子の情報である。


血『なっ……!?』


絶句。ここでは誰も知らないはずのブラッディの過去が菜真理の手元にある。


血『アンタ…それ…っ!?』


菜「私の手元には膨大な情報があるのでな。名前がわかれば大体のことはわかるさ。

オニキスも騙すかたちになったのは申し訳ないが…仕方ないだろう。

それでは、また明日。いい考えが浮かぶといいな。」


ブラッディにものを言う暇も与えずに通信を切る。


菜「大丈夫、明日か明後日で帰ってくる。問題ない。」


そして、菜真理はオニキスの帰りを待つのであった。


――――…


オ「ん?終わったか?」


ブラッディの雰囲気から通話の終了を悟ったオニキスは、また癇癪かんしゃくをおこしてブルを壊そうとする前に回収した。

と、ブラッディがフラフラと璃楽亭を出ていく。


オ「…言葉攻めで心でも折られたか?」


菜真理の口撃の強力さを知るオニキスであった。


――――…


とうとう滞在予定最終日。ブラッディの様子を気にしつつもオニキスたちは予定をたてるのであった。


次回、『期限』。


菜「早く帰ってこないかな…」



ありがとうございました。

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