暗闇
暗闇
?「いやー、もしかしたらもしかするかと思ったんだけどねー。やっぱり見つかっちゃうかー。」
江に見つけられた頭から足まで黒ずくめの幼女。
オニキスはその存在に全く気づかなかったが、江の声に敵意は無く幼女にも敵意は無いらしい。
よほどのことが無い限りオニキスが幼女に敵対するなどということはあり得ないので、幼女が悪びれない様子でも、雰囲気が険悪になることはなかった。
江「珍しい子がいるな~って思ったけど…」
オ「顔見知りなのか?」
江の言葉端からはどこか懐かしさのようなものが感じとれた。
オニキスが問うと、江が答えるよりも早く幼女が答えた。
?「そうだよー、江ちゃんと私はずーーーっと友達なんだよー!」
警戒心が残っているせいで、まだ冷静な思考ができるオニキス。幼女の言葉に引っ掛かる部分を見つけた。
オ「江さんとずっと友達って…何歳なんだ?」
?「もー!レディーに歳を聞くなんて、失礼だぞー!」
江「ウチと同じくらいだから~、だいたいン万はいってるわね~。」
?「ちょっとー!」
幼女に話をさせていては埒が明かないと江が話に割り込む。
江「この子は暗っていって~、闇の精なんだよ~。」
暗「暗だよー!よろしくね!」
オ「闇の精なんてのもいるんだな…」
一番始めの小屋、というか屋敷で見つけた先駆者と思われる人物の書記で『闇属性』などというものの存在は知っている。だが、それを象徴する存在は知らなかった。
オ「闇の精ってことは、闇属性の魔法とか使えるのか?」
暗「そうだよー!」
と、言うとオニキスがミンチにしてねじ伏せているリッチに近づく。
暗「江ちゃん、江ちゃん。ここはまかせてもらっても良い?」
江「問題ないよ~。むしろ~、ウチがやるよりも暗ちゃんの方が適任だからね~。」
江の許可が出ると、暗はおもむろにリッチに近づく。ちなみに、彼女は空中に浮いている。
と、オニキスが慌てて止めようとする。リッチの周辺にはオニキスの過重力領域が展開されているのだ。
オ「ちょっと待っ…」
暗「んー?どうしたのー?」
オ「えっ…え?」
が、暗は過重力領域の範囲内でも問題無く活動していた。仕組みは分からないけれどひとまずオニキスは過重力領域を解除する。
暗「それー!」
リッチが再生する前に暗が手をかざす。すると、リッチの欠片が再生せずに砂か灰のような細かく砕けて風に飛ばされていった。
暗「これが闇魔法だよー!」
どうだ!と言わんばかりに胸を張る暗。何が、とは言わないがまっ平らである。
オ「いや、ちょっと良く分からないんだが…」
暗「もー!ダメダメだよ!
闇属性の魔法はね、精神とか感情、記憶とかに影響する魔法なんだよ!今のはリッチに無理矢理『お前は再生しない!』って思い込ませたんだよー!」
なんとなく卯月や菜真理と気が合いそうだな、と思うオニキスであった。
――――…
何をするにしてももう少し落ち着いたところの方が良い、ということで町へと戻ることにした四人。係員によって幼女'sは『璃楽亭』に預けられている。
道すがらオニキスは補助役を呼ぶことにした。
ラ「久しぶりだな!」
フ「呼んでくれて嬉しい、です。」
餅は餅屋。属性は違えど彼女たちも暗と似た存在である。
暗「んー!?お兄さんからは面白い気配がするなーと思ってたけど…雷と風の精かー。」
江「水の子もいるよ~。」
ライとフーを見て暗が驚く。実は、精に気に入られるのはごく少数なのである。
暗「ほー!やるじゃん、お兄さん!このこのぉ!」
オ「いやぁ、それほどでも…」
見た目だけとはいえ、幼女に褒められてオニキスが喜ばない訳がない。しかし、頭を掻いて照れるオニキスを見て不機嫌になる者たちがいた。
ラ「デレデレするなよ!」
フ「おにぃちゃんは私たちのです!」
ライがオニキスの頭を小突き、フーはオニキスの腕に抱きついて暗を視線で牽制する。
暗「んー。愛されてるねー、お兄さん!
でも、そう言われちゃうと私も参戦しないわけにはいかなくなるねー!」
そう言うと暗は何かを考え始める。それを聞いてさらに反応するライとフーをじゃれつかせたまま、オニキスは町へと向かうのであった。
――――…
美「おにきす、おかえり!」
璃楽亭に戻ると、美和が飛び出てきてオニキスに抱きついた。
オ「うん、ただいま。…センは?」
美「まだ、ごはんたべてる。」
そう言って指差す先には、女将につきっきりでご飯の世話をされているセンがいた。
セ「おかわりだぞ!」
「良く食べるね。江さんにそっくりだよ!」
脇には積み上げられた食器たち。
「ん?ああ、おかえりなさい!また変なのが来たみたいだね。そこの子がだいぶ焦って来てさ、何事かと思ったよ!」
「ははは、心配する必要も無かったみたいです。」
係員が決まり悪そうに笑う。
セ「ん?オニキス、おかえりだぞー!」
一心不乱に皿の中身を食べていたセンだったが、食べきって息をついたところでオニキスを見つけて飛びついてくる。
が、暗が視界に入ったところで体をビクッと跳ねさせ、オニキスの後ろに隠れる。
暗「んー?…あ、そうか!この子はまだ若い子なんだねー。」
江「ウチも怖がられるんだけどね~。」
セ「うー…また怖いのが増えたぞー…」
精としての力は生きれば生きるほど強くなっていく。まだ幼いセンから見れば江や暗は恐ろしいほどの実力差がある相手なのだ。
ラ「大丈夫!」
フ「そんなに怖がらなくても大丈夫、です!」
一方、ライとフーはさほど怖がる様子が無い。しかし、二人が見た目と違って歳をとっているというわけではない。
暗「ってことは…そこの二人は純正か!」
ラ「そうだぜ!」
フ「おにぃちゃんに呼んでもらったです!」
暗「…お兄さん、何者?」
忘れている方も多いかもしれないが、精を魔法次元から呼び出すには致死量レベルの血液が必要なのだ。オニキスは例の如く特別製の改造人間なので致死量レベルも致死量ではないのだが。
暗「他の人を生け贄にするほど邪気があるようにも見えないし…」
セ「オニキスは悪いヤツじゃないぞー!」
美「ん。」
ラ「そうだぜ!」
フ「おにぃちゃんはいい人です!」
幼女でも、四人も集まれば力を持つようになる。無垢な幼女に好かれるということは、それだけでその人物の信頼性を高めるのだ。
オ「俺の体はちょっと特別製でね。なんとかなったんだよ。」
特別製、まさにその通り。卯月によってオニキスの血液は二倍以上に増やされ、なおかつ消費するそばから回復していく。魔法という面に関してオニキスは無類の強さを誇るのである。
暗「んー…これはますますお兄さんをほうっておく訳にはいかなくなったねー。」
と、ライとフーがゴニョゴニョと内緒話を始める。短時間で話がついたようで、フーが暗に提案する。
フ「次に来るときは闇の子も連れてくるです!」
暗「…そうだね!それが良いよ!お願いできるかな?」
フ「任せて、です!」
フーがポンッ!と胸を叩く。再度言わせてほしい。何が、とは言わないがまっ平らである。
――――…
リッチの侵略を見事解決したオニキスたち。だが、何かを忘れているような…。
次回、『結論』。
江「懐かしいね~。」
ありがとうございました。




