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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
命灯不滅
43/72

観光



センと美和を預けていた『璃楽りらく亭』に一晩泊まり、次の日。


セ「つまんないぞー!」


美「おるすばん、つまんなかった。」


オ「まあ、そうだよなぁ。」


前日、幼女'sのみで遊ばせるのは不安だと、宿の女将に世話を任せて留守番をさせていたのだが、幼女'sには退屈だったようだ。


江「ブラッディちゃんが来たときはウチが相手しておいてあげるから~、遊びにつれてってあげたら~?」


オ「そうだな…」


チラリと幼女'sを見ると、期待に輝く目でオニキスを見つめていた。

幼女にそんな目で見られれば、オニキスが断れるはずもない。それどころか、鼻血が出かけている。

オニキスは鼻を押さえながら江に軽く頭を下げる。


オ「悪いな、江さん。留守番頼んでもいいか?そこまで遅くならない内に帰る。」


江「もちろんよ~。」


セ「早く行くぞー!」


美「おにきす、はやく!」


オニキスの背中を押して急かすセンと美和。江が後ろから手を振って見送る。


江「いってらっしゃ~い。楽しんできてね~。」



宿から出たところでオニキスはセンと美和の手を握る。精神的修行を繰り返したオニキスはこの程度では鼻血を出さなくなっていた。


オ「さて、と。二人はどこか行きたいところとかあるかい?」


聞くと、二人はしばらくゴニョゴニョとひそひそ話をしていた。仲良くなったようで結構だとうなずくオニキスであった。

しばらくすると、話しが纏まったのかセンと美和は互いにうなずき合い、言う。


セ「動物園がいいぞー!」


美「きのう、おばさん、いってた。」


おばさんとは璃楽亭の女将のことだろう。退屈させないようにと死者の都の観光名所の話でもしてくれていたのだろう。


オ「動物園なんてあるのか…よし、わかった!行ってみよう!」


セ「やったぞー!」


美「おー。」


ひとまずは地図を買おうと、近くの店へ入るオニキスであった。


――――…


オ「動物園…この辺にあるはずなんだけど…。」


地図を見ながら死者の都の周辺を歩くオニキスたち。どうやら動物園は死者の都の郊外に広大な敷地を使って建てられているらしかった。

と、美和がオニキスの服のすそを引き、オニキスが向いている真横を指差す。


美「おにきす、あれ。」


オ「ん?…あ、あれか!」


オニキスは現代の精巧な地図に慣れていて、それを基準に地図を見ていたが、ひと昔前まで地図はそれほど正確なものではなかった。現代のような測量器具や衛星など無いので、縮尺比や距離感は狂いやすい。その上、コピー機や印刷機などの機械も無いので複製するときは手書きになり、写せば写すほど誤差が大きくなっていく。なので、地図を完璧に信じてしまったオニキスは迷ってしまったのだ。


セ「ついたぞー!」


美「ん、とうちゃく。」


オ「ふーん、案外大きいんだな。」


オニキスたちの目の前にあるのは、デパート程度の大きさはあるのではないかという土地に動物の入ったおりをいくつも置いた動物園である。


「いらっしゃいませ、吸血鬼動物園へようこそ!

入場料は、お子さまは一人銅貨5枚、大人の方は銀貨1枚になります。」


コミカルな動物の被り物をした係員がオニキスたちに声をかける。


オ「大人一人に子供二人。ほら、銀貨2枚。」


「はい、確かに。ご一緒にこの動物変身セットはいかがでしょう?森狼、山虎、草原兎の三種類がございます。」


入場料を受けとると、係員はすかさずいくつかの商品を取り出す。

それぞれ狼、虎、兎を模した被り物、手袋、しっぽがあった。この文化レベルでこのアイデアを出した人物はなかなかの商才がある、と思いつつ、オニキスはこれを断ろうとした。このようなたぐいのモノは、後々絶対に使わなくなるのだ。


セ「センは虎のしっぽがいいぞー!」


美「うさぎのてぶくろ、ほしい。」


だが、そのような冷静な判断ができるのは大人だけ。子供には見たこともない宝物に見えるのだ。

センと美和もその例に漏れなかった。


オ「はぁ…じゃあ、この子たちが欲しがってるのを一つずつください。」


「まいどありがとうございます。」


そして、オニキスは幼女のおねだりを断れない。

前の世界の習慣で金をケチろうとしたが、こちらではオニキスは小金持ちといえる程度には金を持っている。オニキスが幼女のために金を使わないだろうか?否、むしろそれ以外にはほとんど使っていない。


セ「やったぞー!オニキス、ありがとうな!」


美「うれしい。おにきす、ありがとう。」


オ「今日は二人のために遊びに来てるからね。欲しいものはよっぽど高いもの以外買ってあげるからね。」


金蔓かねづるロリコン爆誕である。



場内に入ると、様々な動物の鳴き声や色彩が三人を迎えた。


セ「おー!見たこと無いのがいっぱいいるぞー!」


美「ん!」


駆け出す幼女's。


オ「おーい!危ないから走るなよー!」


と、言っても二人が転ぶようなことがあれば、体が地面につくまでに駆けつけるだろうし、常に目で追っているので迷子になることもない。最強の子守りとも言えるだろう。


――――…


セ「オニキス!こいつ、変な顔してるぞー!」


美「ん、へんなかお。」


駆ける幼女たちが立ち止まったのは『ピエロフロッグ(異面蛙)』と書かれた檻の前。


オ「ん?…なんだこれ、馬鹿デカいな…」


檻の中には巨大な蛙が一匹、微動だにせずにデンと鎮座していた。


説明書きにはこう書いてあった。


『ピエロフロッグ(異面蛙)

:全長6~10m。脚を伸ばすと20mを越えるものも多い。

顔面に奇妙な模様があり、変な顔をしているように見えるためこの名がついた。

森の中や洞窟の中など、日のあまり当たらない場所に住む。』


オ「コイツが異常に大きい個体って訳じゃないんだな。」


と、センと美和がオニキスの正面に回り込む。


セ「眉毛がこんなんで…」


美「おくち、こんなの。」


センは眉毛を指で寄せて繋げ、美和は口をおちょぼ口にしてほおを手で押している。

見ると、檻の中にいるピエロフロッグにそんなような模様がある。


オ「うん、二人ともソックリだ。」


オニキスが褒めると、キャッキャと喜ぶセンと美和。それを見ただけで、オニキスは幸せな気分になりピエロフロッグが好きになったのであった。


「このピエロフロッグのピエールくんは、芸もできるんですよ。」


先程受け付けにいた係員がオニキスたちに近づいてきた。


オ「受け付けはいいのか?」


「この町に住んでる皆さん、随分昔から何回もここにいらっしゃっていて、飽きてしまってるんです。」


オ「…それで経営は大丈夫なのか?」


「はは、ご心配なく。トメルー様が私財からご援助くださっているんです。」


そういうと、幼女'sに説明を始める。


「まず、名前を呼んであげるとお返事をしてくれます。」


それを聞くと、二人は目を輝かせる。


セ「ピエールー!」


美「ぴえーる、くん。」


と、それまで全く動いていなかったピエールくんがピクリと体を震わせた後に口を大きく開き…


「…けろっ!」


セ「かわいい鳴き声だなー!」


美「おっきい、のに。」


非常にかわいい声で鳴いた。それを聞いた幼女二人が笑うと、ピエールの口許が少しにやける。


「ピエールくんは笑ってもらうのが大好きなんです。例えば…」


ピエールくんの笑わせ芸はまだまだ続くのであった。


――――…


「久々にお客さんが来たので、動物たちのショーでもしましょう。少ししたら真ん中広場までお越しください。」


係員はそう言うと、準備のために走り去っていった。

オニキスたちの休日はまだまだ続く。


ピエールくん「…けろっ!」




ありがとうございました。

文中に銀貨と銅貨が出てきますが、だいたい銀貨が千円、銅貨が百円、という設定です。ちなみに金貨は一万円。貴金属相場なんて知らないので適当です。

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