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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
命灯不滅
41/72

聖夜のヒーロー※クリスマス番外編

時系列が獣人邂逅編の後半まで戻っています。

また、番外編なので本編と比べるとおかしな点があるかも知れません。

聖夜のヒーロー


こちらの世界の暦で12/24の朝。


卯「む?あちらの世界でも今日は12/24なんだな。」


オ「そうなんですか?」


卯「うむ、見てみろ。」


卯月が取り出したのは機械式のカレンダー。ちなみに動力はソーラーと乾電池である。


オ「あ、ホントだ。これって電波式とかじゃないですよね?」


卯「手動で調整するヤツだ。むろん、もとの世界に合わせてある。ついでだから合わせようと思って取り出してみたのだがな。」


オ「そう言うのってどういう仕組みなんですかね?」


オニキスが聞くと、卯月が苦笑いする。


卯「そういうことはお前の所の幼女たちに聞いた方が良いだろう?」


オ「それもそうですね。」


――――…


ラ「え?」


フ「世界の相互性、ですか?」


卯「ふむ、向こうとこちらの日付が同じだったのでな。少し気になったんだよ。」


オニキスが二人を呼び出すと、卯月が二人に質問をする。


ラ「そりゃ繋がってるだろ!」


フ「世界を創るのは皆魔法次元の人ですから。」


ライとフーによれば、数多あまたある(らしい)世界は全て彼女たちが暮らす魔法次元の誰かが創ったのだという。そして、それらの世界にある言語や文化などはその誰かによって作られたものだという。


卯「つまり、私たちが常識だと思っていることは魔法次元の常識の一つ、ということか?」


ラ「そうだな!」


フ「時々、オリジナルの言葉とか文化とかを創る人はいるですけど…一般的じゃないです。」


簡単に言えば中二病的な扱いをされてしまうのだ。


ラ「そういうのが定着することもあるけどな!」


フ「クリスマスもその一つです。」


昔、とある魔法次元の住人たちが世界を一つ創ったという。部分部分で担当を作って、仕事を分担した。

そんな中、一人の男が自分の創った地域に降臨し好き勝手をしたという。その結果、その男は救世主として崇められ、一部の地域では神として扱われるようになった。

一方、仲間内ではその男は格好のネタになった。赤ん坊プレイ、肉体的に殺されかけても全く心が折れないドM、よみがえり乙、などなどネタは尽きない。

極めつけには、一人の担当が自分の地域にその男の生誕祭を祝わせようとした。都合良く、創られた世界ではその男を崇める宗教が発足し、世界中に広まっていた。

更に悪ふざけは加速し、年末ギリギリに生き恥を思い起こさせるように生誕祭を12/25日に設定した。

参加する人も増えていった。ある人はその日を老若男女に祝わせるためにプレゼントを配って有り難がらせようとした。インターネットを通じて様々なアイデアが採用された。

また、インターネットを使ってその生誕祭を広める活動を始める者もいた。その結果、様々な世界でその男の生誕祭が行われるようになった。

その男は、毎年多くの世界で自分の生誕祭と呼ばれるイベントが行われているのを見せられ、悶え苦しむことになったと言う。

クリスマスの語源は『苦しめます』だとか…


ラ「チャンチャン!」


フ「他にも、こんな感じのイベントがたくさんあるです!」


その話を聞き終わった卯月とオニキスは何とも言えない顔をする。


卯「なんと言うか…一気に有り難みが無くなる話だな。」


オ「とりあえず、暦はどの世界でも魔法次元の暦と同じってことですね。」


卯「うむ、そうだな。一先(ひとま)ず私たちの疑問は解消されたわけだ。」


と、卯月が窓の外をみて言う。


卯「つまり、街が浮き足立っているのも、年末だからではなくクリスマスのせいか?」


ラ「そうだな!」


フ「ケーキ食べたい、です!」


ライとフーが目を輝かせながら言う。


卯「それは、オニキスに頼むことにしようか。私も甘いものは嫌いではないのでな。」


本物幼女二人と見た目幼女の視線がオニキスに向かう。


オ「もちろん!なんなら今から買いに行きますか?」


ラ「やったぜ!」


フ「おにぃちゃん大好き、です!」


オ「オゥフ…ぐっ!」


全力で幼女の攻撃をこらえるオニキス。しかし、そこに追い討ちがかけられる。


卯「楽しみにしているぞ。」


そういって、卯月が微笑ほほえむ。

もちろん、オニキスの鼻の血管はそれによって生じる衝撃に耐えられるはずもなかった。


――――…


オ「と、言うわけでだ。」


オニキスの苦労話に見せかけたノロけ兼自慢話に付き合わされた菓子屋の店主は気の毒である。


「はぁ…それでしたらこの『クリスマス特製6種のケーキ盛り合わせスペシャルエクセレント版』はいかがでしょう?」


意趣返しなのか、店で一番、それも桁外れに値段の高く、売れ残りそうなケーキを勧める店主。


オ「よし、それにしよう。」


「へっ?…ほ、本気ですか?」


オ「もちろん。」


しかし、財力を手に入れたロリコンにはかなわない。躊躇なくオニキスはそれを購入したのであった。


「そ、それでは金貨五枚と銀貨七枚になります。」


日本円に直せば約五万七千円である。


オ「ほい。金五に銀七、ピッタリだ。」


「はい、確かに。それではご自宅の方までお運び…」


オ「よいしょ。それじゃあ、良いクリスマスを!」


到底一人では運べないであろう重量の巨大ケーキをヒョイと持ち上げ、バランスを崩すこともなく担ぎ上げるオニキス。絶句する店主を気にも止めず、帰途へつくのであった。


――――…


宿に戻りケーキを下ろすと、ライとフーが来た。


セ「おー?でっかいぞー!」


ラ「うわっ!?」


フ「スゴいです!!」


オ「そうでしょ!特別大きいの買ってきたんだよ!」


思っていた通りのリアクションをする幼女たちに機嫌を良くするオニキス。と、菜真理が部屋に入ってきた。


菜「む?随分と大きなケーキだな。食べきれるのか?」


オ「あ…」


オニキスは急いで援軍を呼びにいくのであった。


――――…


江「いや~、大っきなケーキだね~。」


美「ん、おっきい。」


援軍、すなわち食べ手である。呼ばれて来たのは龍の娘、美和とその護衛の江であった。


オ「龍と睡蓮さんは来れないみたいです。」


江「ごめんね~。どうにも忙しいみたいなんだよ~。」


申し訳なさげに江が苦笑いする。


卯「いや、急に呼びつけたのはこちらだ。仕方が無いだろう。」


菜「言ってみれば王と王妃のようなものだからな、おいそれと城を離れるわけにもいかないんだろう。」


オニキスたちはあまり見ていないが、龍は白河の主として日々働いているのである。その伴侶である睡蓮も同じである。


オ「だけど…江もそこそこな立場があるんじゃないのか?」


江は白河の根源に宿る水の精。彼女がいるからこそ白河は今の勢力を誇っているのだ。


江「ウチは難しいことはあんまし得意じゃ無いからね~。全部、渟に投げてるんだよ~。」


あははは~、と能天気に笑う江。その姿はどこかセンに似たところがある。


卯「ふむ、種族的な特徴といったところか?」


江「ん~?」


セ「なんだー?」


なるほど、と納得する一同であった。


――――…


ミ「呼んでくれてありがとう。」


オ「いきなりで悪かったな。予定とかは大丈夫だったか?」


ミ「それはイヤミかしら?」


次に来たのは、ミカ。


オ「お母さんとルーちゃんは?」


ミ「母さんは大人たちで飲み会、ルカは近所の子たちとクリスマスパーティしてるわ。」


オ「あー…それじゃ、仕方ないな。」


肩をすくめるミカ。以前、ミカの母親は酒の飲みすぎで危ない目にあっているのだが、どうにも禁酒はできないらしい。


と、キッチンからブリキとエメラルドが大量の料理を持って出てきた。


ブ『メリークリスマス、客人方。』


エ「全くぅ…アタシとこのロボット以外マトモに料理ができないってどういうことぉ?」


エメラルドがボヤくが他の面々は全く動じない。


卯「なに、そのためにお前たちがいるんだ。問題ないだろう。」


菜「私はできないこともないが…効率的にもお前たちがやった方が良いだろう?」


江「そう言えば~、睡蓮の料理ってすごい美味しいんだよ~。」


ミ「私はまだ花嫁修業中だから。」


オ「ま、今回の食事当番はエメラルドとブリキだったってことで。さっさと食べちゃおう。」


エ「今回のってぇ、いつもブリキに任せっきりじゃないのぉ…」


ブ『まあまあ。吾輩の生き甲斐を取らないでくれたまえよ。』


納得いかない、というように愚痴るエメラルドだったが、ブリキになだめられて席につく。それを見て他の皆も席につく。

全員が席につき、グラスに飲み物があることを確認すると卯月が、


卯「ふむ、私たちだけなら『いただきます』で済ませるんだがな。まあ、こちらでも共通らしいからな。『メリークリスマス!』とでも言っておこうか。」


そう言って、卯月は手元のグラスを軽く上げた。


「「「メリークリスマス!」」」


全員、それに合わせてグラスを上げて、乾杯する。

ちなみにだが、酒が入っているのは卯月、菜真理、オニキス、エメラルド、江だけである。

幼女'sとミカにはジュースが配られている。


ミ「私、もう大人なんだけど。」


オ「もう二、三年我慢しな。俺の見立てだとお前はもうちょっと大きくなる。」


ミ「…胸が?」


オ「身長が、だ。」


ミカはまだまだ少女の域を出ないが、幼女というほどではない。

幼女だったなら、クリスマスがブラッディクリスマスになっていただろう。


――――…


食事も終わり、しばらくたった頃。夜も大分だいぶけ、子供組は既に眠ってしまった。


オ「卯月さんたちはまだ眠くないですか?」


子供組を急遽きゅうきょ用意した寝床に運んだオニキスが、まだ食卓でちびちびと酒を飲んでいる卯月と菜真理に声をかける。


卯「私たちは酒が入るとしばらく眠れなくなるたちでな。」


菜「体は子供でも、中身はお前よりも歳上だ。多少は融通ゆうずうがきくんだよ。」


それを聞くと、オニキスはポケットから小さな箱を二つ取り出した。


オ「寝られるんだったら、枕元にそっと置くぐらいの演出はできたんですけどね。起きてるんなら仕方ないです。」


そう言って、卯月と菜真理に一つずつ箱を差し出す。

顔を見合わせた二人が箱を開けると…


オ「正直、二人が欲しがるものって想像できなかったんですよ。もう『なんでも言うこと聞く券』でも渡そうかと思ったんですけどね。」


卯「いや、嬉しいぞ。悪くないセンスだ。」


箱の中にあったのはネックレス。卯月のモノには彼女に合わせて小さなダイヤモンドが付いていた。


卯「『なんでも言うこと聞く券』も貰ってみたかったがな。それはそれでそそられるものがある。」


ニヤリ、と笑いながらもネックレスを付ける卯月。


卯「どうだ?似合うか?」


オ「ングッ!?い、良いと思います。非常に。」


純真無垢な少女の微笑み。そんな笑顔を急に作って見せた卯月にオニキスの鼻の毛細血管は限界ギリギリまで追い込まれた。


菜「……。」


そんな中、菜真理は手元を見たまま固まっていた。


オ「アクセサリーとか、あんまり好きじゃありませんでしたか?」


菜「いや、そうじゃないんだが…この石は…」


オニキスが菜真理に渡したネックレスにはまっていた宝石。真っ黒でつややかに輝くその宝石。それは…


オ「黒っぽい宝石ってあんまり無かったんですよね。」


菜「それはそうなんだが…これは…」


二人を黙って見ていた卯月だったが、耐えきれなくなったようにクスクスと笑いだす。


卯「なーちゃん、オニキスは宝石の目利きはできないようだぞ。それが何て言う宝石か教えてやったらどうだ?」


半分笑いながら、菜真理に言う。

菜真理は、しばらくの間唸うなっていたが…


菜「こ、これはな…その…ブラックオニキス、だ。」


オ「…へ?」


菜「だから!これは、ブラックオニキスという宝石なんだ!」


赤面しながら、叫ぶように言う菜真理。ほうけるオニキス。


卯「…ぷっ!ふっ、ははははははっ!はひっ、ひっ、ははっ!あー、おかしい!まるでプロポーズじゃないか!『自分を貰って』とでも言うのか?ははははははっ!」


耐えかねた卯月が爆笑する。酒が入っていることもあって、菜真理とオニキスへの煽りがおさまらない。


卯「なあ、なーちゃん!オニキスがプロポーズしてるぞ!返事はどうするんだ!?ははははははっ!」


赤くしていた顔をさらに真っ赤にして、菜真理がうつむく。そして、いたたまれなくなったのか、


菜「もういい!私は寝る!」


卯「あ、逃げるのか!?」


菜真理は自分の部屋がある、二階へと逃げていった。


オ「あちゃー…なんか申し訳ないことしちゃいましたね…」


卯「ははははははっ!ははっ、はぁ…はぁ…」


場は混乱を極めていた。


オ「違うのにしたほうが良かったかなぁ…」


しかし、話に加わらずにずっと見ていたエメラルドは見逃さなかった。


エ「いやぁ、あれで良いんじゃないのぉ?」


走り去る菜真理が、ブラックオニキスのネックレスを大事そうに胸に抱き締めていたのを。


――――…


混乱のプレゼントからまたしばらく、そろそろ日付も変わろうという頃。大人組も眠り、ロボットであるブリキとオニキス以外は完全に寝静まっていた。

と、オニキスが玄関の方へ歩いていく。


ブ『おや、オニキス。こんな時間におでかけかい?』


オ「ああ、ちょっとな。後片付け任せてもいいか?」


ブ『任せておきたまえ、君。』


ブリキに軽く手を振りつつ、オニキスは寝静まった街へ出ていくのであった。


――――…

街から少し離れた場所。少し開けた地面に、降り始めた雪が積もっている。

と、空を行く小さな影。段々と地上に近づくのを見てみれば、それはトナカイにかれるソリに乗った一人の老人。

と、そのソリが地上に降り立った。

その先には…


オ「メリークリスマス、Mr.サンタクロース。」


「フォフォフォ、今年は風変わりなところにいるんだね、ボウヤ。メリークリスマス。」


オニキスが一人で立っていた。

ニヤリと笑い、オニキスが話しかける。


オ「アンタなら絶対ここにも来ると思ってたんだ。」


「フォフォ、ワシは君がここにいるとは思っていなかったんだけどね。」


そう言って、老人はオニキスをジッと見つめる。


「ん?ボウヤはワシの正体に気づいたみたいだね。」


オ「なんだ、心でも読めるのか?」


オニキスが少し驚いたように言うと、老人が静かに笑う。


「フォフォフォ、子供たちの望むモノをあげるには、それくらいできなきゃね。

それで?ボウヤはワシを何者だと思うんだい?」


オニキスに手を向けて問いかける老人。


オ「毎年、この日になると世界中に出没して、たった一人で子供たちにプレゼントを配って回る。ヒーロー、サンタクロースことザ・クリスマス。

アンタは魔法次元の永遠の弄られ役。そうだろう?」


それを聞いてニッコリと笑う老人、もといサンタクロース。


「正解だよ、ボウヤ。随分と昔のことだけどね。

今じゃあこんなお爺ちゃんだけどね。子供たちの夢を壊すほど老いぼれちゃいないからね。」


豊かに蓄えたひげを撫でながらいうサンタクロース。その雰囲気のまま、オニキスに問いかける。


「それで?今年もやるのかい?」


オ「もちろんだ、Mr.サンタクロース。そのためにここまでの来たんだからな。」


そういうと、オニキスは拳を構える。

サンタクロースはソリから降りもせずに、手招きする。


「来なさい、ボウヤ。君の願いを叶えてあげよう。」


瞬間、オニキスの周りの空気が爆発する。オニキスがサンタクロースに殴りかかったのだ。

全力の踏み込みと全力のパンチ。地形さえも変えてしまうその攻撃は…


「フォフォフォ、うん、中々のモノだね。」


オ「クソッ、今年もか!」


サンタクロースの片手で止められてしまう。もう片方の手でひげを弄るほどの余裕で。


「それじゃあ、今年は少しレベルをあげようか。」


オニキスの拳を掴んでいる腕が、丸太のように太くなる。筋肉の塊、そう表すのが正しいだろう。


「それ!」


ユルいかけ声と動作。しかし、それの及ぼす影響は激しいものだった。


オ「グッ…!?ガハ…っ!」


オニキスが大きく後ろへはね飛ばされる。サンタクロースは腕以外動かしてもいないのに。


オ「クソッ!強すぎるだろ!」


「フォフォフォ、それじゃあワシは行くよ。」


呻くオニキスに笑いかけると、サンタクロースはソリを牽くトナカイに繋がっている手綱を軽く引いた。


「ルドルフ、出発しよう。」


トナカイはシャン!と首の鈴を鳴らすと、鼻を赤く光らせて空へ駆け昇った。


「フォフォフォ、ボウヤの『強くなりたい』って願い、年々叶っていってるよ!メリークリスマス!ボウヤのクリスマスが素晴らしいモノになるように!」


オ「アンタもな、Mr.サンタクロース!」


オニキスは、地面に仰向けに倒れたままソリに叫ぶ。


「これはオマケだよ!それっ!」


響く鈴の音。それに合わせるように雪が強くなり、オニキスの攻撃によってすっかり乱れてしまった地面の雪を、またキレイにした。


オ「はははっ!まったく…敵わないなぁ。」


聖夜の空に、オニキスの笑い声が響いていた。


――――…


「フォフォフォ、メリークリスマス!」



ありがとうございました。明日からは本編に戻ります。



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