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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
命灯不滅
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誘惑

誘惑


死者の都を歩くことしばらく。オニキスの感想はこうだった。


オ「名前、変えたらどうだ?」


死者の都、アンデッドタウン。そんなおどろおどろしい名前とは裏腹に、とても明るくにぎやかな町だったのだ。

住民も、おかしな様子もなく楽しげである。


――――…


江「町の名前は随分昔についたのだけど、町がこんなに明るくなったのは結構最近のことなんだよ~。」


この町について詳しく知っているらしい江に、名前と雰囲気のミスマッチ感について聞いてみるとこんな返答が返ってきた。


江「最初はそれっぽい暗ーい町だったんだけどね、ブラッディちゃんがテッペンになって、方針が変わったんだよ~。」


江曰く、ヴァンパイア・レディことブラッディが旧支配者と代替わりして『どうせ死んでるんだから楽しんだモン勝ち』と公布したと言う。

初めは当然のごとく受け入れられなかったが、長い年月を経て段々と浸透していき、今の町になったのだと言う。


江「初代はエルダーリッチのお爺さんで、大分頭が固かったんだけど…なんで代替わりなんてしたんだろうね~?」


オ「力ずくでねじ伏せた、とか?」


江「んー、そんな話は聞いたこと無いけどね~。

君が会いたいなら会いに行ってみようか?」


江が首をかしげながら、オニキスに提案する。


オ「会えるのか?この町のトップなんだろ?」


江「ウチはあの子がここに来たときから知ってるからね~。まぁ、お姉さんみたいなモノ、かな~。」


うなずきかけたオニキスだったが、後ろを振り返って首をふった。


オ「いや、先にどこか休める場所を探そう。この子達もつまらないだろうしね。」


センは欠伸あくびをし、美和は話に興味が無いのか、辺りをキョロキョロと見回している。


江「それもそうだね~。それなら、馴染みのところがあるよ~。」


はぐれないように幼女二人の手を握って、こっちこっちと先を歩く江を追うオニキスだった。


――――…


一軒の宿屋らしき店に入る。

カウンターに立っていた体格の良い


「いらっしゃい!あれ、コウさんじゃない!久しぶりだね!元気そうじゃないか!」


江「ウチはいつでも元気だよ~。女将さんこそ元気そうで何よりだよ~。」


「当たり前だよ!ま、もう死んでるけどね!ハッハッハッ!」


会話を始めて草々にいきなり笑っていいのか分からないジョークが飛び出した。


「龍神様に子供ができたって聞いたけど、そっちはほっといていいのかい?」


江「こっちの子がそうだよ~。」


江が美和を指差すと、女将は目を丸くした。


「あれま!そんなお嬢さんをこんなボロ宿に連れてきていいのかい?あたしゃ、龍神様に怒られるのはごめんだよ!」


江「大丈夫だよ~。今回は美和ちゃんがここに来たいって言ったからね~。

でも、ウチらに付き合わせて難しい話を聞かせるのも何だからね、連れてきたんだよ~。」


「そうなのかい?まぁ、ブラッディ様が長になったときから子供が楽しめる町になったからね。色々回ってみるといいよ!」


と、女将がオニキスを見て、ニヤッと笑った。


「それで?このいい男はコウさんのコレかい?」


そう言って親指を立てる。

江は一瞬ポカンとした後、苦笑いしながら手を横にふった。


江「違うよ~。この人、これでも渟よりも強いからね?」


「えっ?」


女将がじろじろとオニキスを見る。明らかに疑わしげな表情だったが、すぐに笑い顔に戻った。どうやら照れ隠しの冗談だと思ったようだ。

オニキスの見た目に限れば至って一般的。神である龍よりも強いとは到底考えられないだろう。

女将の表情を見た江はため息をつきながら奥の手を出す。


江「渟の娘の恋敵になるほどウチは男に飢えてないよ~。」


「は?渟って龍神様だろう?その娘様って言えば…」


女将の視線が美和に向く。しばらくの硬直の後、その視線をオニキスに移す。


美「ん!」


子供ながらに会話の意味を察したのか、美和がオニキスの腰に抱きつく。


「えっ…ええぇぇぇっ!?」


一瞬の沈黙の後、女将が絶叫する。

あまりの声の大きさに、店の外からも何人かの通行人が顔を覗かせる。


美「おにきす、はずかしい。」


オ「いやー…あはは、はは…」


それでも否定しない辺り、流石とでも言っておこう。


――――…


目を白黒させている女将にセンと美和を任せて、この町の支配者、ヴァンパイア・レディことブラッディの元に向かうオニキスと江。


オ「ブラッディってのはどんなヤツなんだ?」


江「気になるの~?」


オ「まぁ、権力者と仲良くなっておいて悪いことは無いだろうしね。情報収集は大切だろ?」


獣人の街のテナーはそうでもないが、白河の主であり神でもある龍と親しくなれたのは、確実にプラスになっている。


江「ここはほとんど外界とは関わらないから、仲良くなっても嫌われても、ほとんど影響は無いと思うけどね~。」


そう言って見上げる先にあるのは、町の中心にある城。名前を『永遠の黄昏城』という。

あれだけ目立つモノを建ててそこに住んでいるのだから、ある程度自己顕示(じこけんじ)欲が高いかとオニキスは考えていたのだが、宿への道すがら江に聞いた話によれば、城は先代の支配者が建てたものだという。


オ「江さんが言ってた『どうせ死んでるんだから~』ってのを聞けば楽観主義のお気楽な人間とも考えられるんだけど…」


江「ん~…楽観的ってのは当たってるんだけどね~。先のこともしっかり考えてる子だよ~。

まあ、ちょっと変わってる子だけど、すぐに人を嫌いになったりする子じゃあないよ~。」


オ「それなら良いんだけどね…」


多少の不安を覚えながらも、何かあっても力ずくで解決できるだろうと考えるオニキスであった。


――――…


城の前に着くと、二人を門番の挨拶が出迎えた。


「ようこそ、永遠の黄昏城へ!観光ですか?ブラッディ様へ面会ですか?」


門番の態度に明らかな警戒や余所者を排除しようとする感情は見えなかった。


江「面会だよ~。江が会いに来たって伝えてくれたらわかると思うよ~。」


「はい、かしこまりました。」


門番は二人を控え室に通すと部屋を出ていった。


オ「ここだとこれくらい丁寧なのが普通なのか?」


江「そうだね~、いつもこんな感じだよ~。」


控え室は小さいながらもしっかりとした造りで、二人の前には飲み物と少しの甘味が置いてある。

とてもアポ無しで支配者に会おうとする客への対応ではない。


江「これもブラッディちゃんの考案だったはずだよ~?」


オ「らしくないな…」


非常に支配者らしくないのであった。


――――…


「こちらでブラッディ様がお待ちです。」


門番がブラッディの許可をとり、二人を彼女がいるという部屋の前に案内した。


江「ありがとうね~。」


「随分と楽しみにしていらっしゃるようです。ごゆっくりどうぞ。」


と、案内の門番が扉を開けると…


?「江(ねえ)ぇぇぇええっ!!」


江「おっとっと~。久しぶりだね~、ブラッディちゃん。」


中から人が飛び出してきて、ぶつかるように江に抱きついた。

江はソレを抱き返して頭を撫でた。


?「江姉、マジ久しぶり!なんで遊びに来ないのさ!」


江「ウチだって色々忙しいんだよ~。ここだってそんなに簡単に来れるところじゃないしね~。」


?「嘘!江姉めっちゃ簡単に来るじゃん!アタシのかけたカモフラージュも無いみたいにさ!」


江「いや~、あは、あははは~…」


飛び出してきたのは丁度ちょうど大人の女性になりかけている年頃の少女。オニキスには全く気づかない様子で江に絶え間無く喋りかける。


と、辟易へきえきしたのか江がオニキスに話を向ける。


江「今日はブラッディちゃんに会いたいって人がいたから、連れてきたんだよ~。」


ブラッディ(以下『血』)「ん?アタシに?」


と、ブラッディと呼ばれた少女が江の胸にうずめていた顔を上げ、オニキスを見た。


?「アタシに会いたいって…一般人(パンピー)じゃん?」


そう言ってジロジロとオニキスを眺め回す。無論、体は江に抱きついたままである。


オ「江さん、この子がブラッディ?」


少女の急な登場に戸惑いながらも、オニキスは江に訊ねる。

と、少女が江の体を放して、ツカツカとオニキスのすぐ目の前まで歩いてきて、言った。


血「アンタ、アタシの江姉にタメ使うなんて…良い根性してるじゃん?」


オ「はい?」


オニキスは一瞬呆気(あっけ)にとられた後、内心でため息をついた。

ブラッディからは元の世界でも何度かお目にかかったことのある存在、いわゆるヤンキーというモノの気配を感じた。

みずからの意にそぐわないことがあればおどし、力ずくで解決する。そんな気配が彼女にはあった。


血「ちょっと立場をわからせてあげないとね!」


江「ウチはやめた方が良いと思うけどな~…」


オニキスの実力を知っている江はブラッディを止めるが、ブラッディは江がオニキスの心配をしていると思ったらしく、江に向かって親指を立てる。


血「大丈夫だよ、江姉。手加減くらいできるからさ!」


そう言うと、ブラッディはオニキスに向き直ると中指を立てた。


血「江姉に心配されるなんて…うらやま、チョーシ乗ってんじゃない!?」


そして、指の関節をパキパキと鳴らす。


血「歯ぁ食いしばりなさいよっ!」


そして、オニキスの顔面に拳をふるった。


血「…っ!?」


オ「いや、効かないんだけど…」


そして、オニキスの顔に当たって拳が止まる。オニキスの顔は歪みもしない。


血「ちょっ、ちょっと手加減しすぎただけよ!こっからが本気なんだからね!」


――――…


結果…


血「黒(にい)!」


懐かれた。


オ「…どうなってるんだ?」


江「あはは~…」


オニキスにすりよるブラッディはさながら人懐(ひとなつっ)こい仔犬のよう。


血「江姉ったら前々遊びに来てくれないんだよ!

黒兄はそんなこと無いよね?ずっといてくれるよね?」


オ「いや、しばらくしたら帰るけど。」


血「なんで!?なんでもするよ?なんなら…」


ブラッディは科をつくる。


血「アタシを好きにしても…」


オ「いや、そういうのは別にいい。」


ブラッディはギリギリでオニキスの対象外なのである。


――――…


死者の都の支配者、ヴァンパイア・レディのブラッディ。そんな彼女の過去には…!?


血「ちょっと教育したげる!」

ありがとうございました。

※次回タイトルは未定です。

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