貴人
や、やっとちゃんと投稿できた…
貴人
「ははは、飲みねぇ、飲みねぇ!」
「乾杯だぁ、乾杯ぃぃ!」
オニキスは酔っぱらいたちに囲まれていた。
オ「おいおい、前にもこんなことあったぞ…」
オニキスの体はアルコールの影響をほぼ無くすことができる。ゆえに、如何なる酒飲みも彼に勝つことはできない。
「なんだぁ、俺の酒が飲めねえってのか!?」
「そうだそうだぁ!」
オ「おっさんたち、ちょっと弱すぎだろう。」
まだ、宴会もといパーティが始まって30分ほどしかたっていない。
ミ「この二人はいつもそう。真っ先に飲み始めて真っ先に潰れるの。」
オ「なんで飲ませちゃうのかな…」
そう言うミカは酒を飲んでいない。未発達な体でアルコールを摂取する害はここでも知られているのか、成長期をしっかり抜けた大人だけが酒を飲んでいる。
ミ「それに、酔うと周りの人に絡みだすから尚更めんどくさいのよ。」
オ「もうこの二人は酒を飲ませちゃいけない部類の人間だろ!」
一方でエメラルドは、適当な酒瓶を一つ持って物静かな場所へと移動していた。
しかし、エメラルドが目星をつけた場所にはすでに誰かがいた。
エ「あらぁ、先客さんかしらぁ?」
皮「ん?あぁ、こりゃどうも。」
皮肉屋アイロニーである。
エ「なぁにぃ?ヤケ酒ぇ?」
皮「実際、酒でも飲まなきゃやってらんないですけどね。皆楽しげに騒いでますけどね、裏で俺とテナーさんがどれだけ胃を痛めてるか考えてほしいもんですよ。」
アイロニーが持っている杯に酒を注ぎ、グイッと飲み干す。
エ「アハハハッ、現場の人間にしたらぁ、頭脳班の人のことなんて知ったこっちゃないからねぇ!」
皮「笑い事じゃないんですけどねぇ…」
ため息をつくアイロニー。と、エメラルドの目がスゥッと細くなる。その視線の先にいるのは屋敷の中から出てきた一際きらびやかな集団。
エ「ほらぁ、後先考えないで誰かの胃を痛める人のお出ましよぉ。」
皮「…アルトさんの二の舞か…バカはどこにでもいる、か…」
アイロニーはテナーのことを思って、またもため息をつくのであった。
――――…
「ブラックオニキスとか言う獣なしはいるか!?」
その声を聞いた瞬間、オニキスは万が一のためにと持ってきていた『ブル』と菜真理に作ってもらっていた尻尾付きベルトを装備し、パッと見は獣人に見えるように整えた。
そして、周囲の視線がオニキスに集中する。人混みを割って現れたのは何やらキンキラな格好をした一団。
オニキスは片膝をついてキンキラ集団を迎えた。
「お前は?」
オ「オニキス様のお世話をさせていただいていました、アゲーテと申します。オニキス様は何やら急に行かなければならない所ができたとかで、先程旅立たれました。これは見送りの宴をしていたのでございます。」
いけしゃあしゃあとオニキスは嘘をつく。小太りのおっさんに嘘をついた所で、オニキスの心は痛まない。
「ふん、使えん。わざわざ我が召し抱えてやろうとこんな辺境まで来てやったというのに…ぺっ!」
地面に、というよりそこにいるオニキスに向かって唾を吐くキンキラなおっさん。
しかし、オニキスはおっさんの目にも止まらぬ早さで横移動をし、地面に穴を堀り、そして唾ごとその穴を埋めた。
オ「(あー、汚い汚い。しかし、『我』って一人称も使う人を選ぶんだな。龍みたいに本当に偉いヤツが使うと威厳を増すけど、このおっさんみたいなのが使うと痛くなるんだなぁ…)」
「もうよい!我は帰るぞ!」
オ「(あ、また我って言った。ぷっ。)」
心の中ならどんなことでも言い放題である。
「どけっ!」
「キャッ!?」
だが、そんな穏やかなオニキスの心を乱す事態が発生する。キンキラおっさんが通り道に少し出ていた少女を突き飛ばしたのだ。
オ「…っ!」
たが、オニキスが動く前に動く影があった。それらはオニキスに囁いてから飛び出していく。
「(ここは俺らに花持たせろや。)」
「(ちょっとくらいはカッコつけとかないとな!)」
「おっとっとぉー!スライディングでギリギリセェーフ!ハハハハッ!」
「ハハハハッ!お嬢ちゃんに潰されてるじゃねぇか!アウトだ、アウト!ハハハハッ!」
シャインとステイラである。少女が地面に尻餅をつく前に、シャインがその下に滑り込んだのだ。
「クッソォ、やられたぜ!だが、このお姫様は俺が貰ってくぜ!ハハハハッ!」
と、言うやいなやシャインが少女を肩車して走り出した。
「あっ、テメェ!ガキども、一緒にあのバカを捕まえるぞ!アハハハッ!」
「「「キャーーーッ!」」」
そして、ステイラがその場の子供たちを引き連れてシャインを追う。
「チッ、下郎どもが!」
捨てぜりふを吐くと、キンキラおっさんはキンキラ集団を連れて出ていった。
オニキスは、体から飛び出そうと込めていた力を抜いた。その表情は穏やかだ。
オ「やるじゃんか、あいつら。」
そして、一転視線に殺気を込めて、キンキラ集団が去った先を見る。
オ「害獣は駆除しないと、なぁ?」
――――…
皮「上手いこと収まったみたいですね。バカもたまには役に立つもんだ。」
エ「良いじゃないのぉ、丸く収まったんだからぁ。」
でも、とエメラルドは続ける。その表情にはどちらかと言えば同情に近いものが見える。
エ「あのおじさんたちは無事には帰れないわねぇ。」
皮「なんでです?未来予知とか占いの類いでもできるんですか?」
エ「そんな訳ないじゃなぁい。オニキスよ、オニキス。」
アイロニーがこめかみを押さえる。
皮「また何か仕出かしてくれるんですかねぇ。」
エ「そうねぇ…でも、この街に迷惑をかけないようにする位の気遣いはできると思うわよぉ?」
皮「そうだと良いんですけどね。」
アイロニーは、卯月やオニキスと関わるようになってから随分とため息が増えた、と思いつつまたもため息をついた。
皮「そういえば、あなたの名前を聞いてませんでしたね。卯月さんたちの所にいたのは覚えてるんですけどね。紹介される暇も、名前を聞く暇もありませんでしたからね。」
エ「あら、そうだったかしらぁ?アタシはエメラルドよぉ!」
皮「…アイロニー・スペルズです。皮肉屋アイロニーで通ってます。」
実は、卯月たちにアイロニーはフルネームを名乗っていない。もちろん、そばで見ていたエメラルドはその事を知っている。
エ「も・し・か・し・て!アタシに惚れちゃったの!?ツンデレくんなの?」
皮「そんな訳ないでしょう!」
エ「はいはい、ツンデレツンデレ。お酒でも飲んで素直になりなさーい!」
皮「だから…くそっ、やってられるか!」
エメラルドが並々と注いだ酒を一気に呷るアイロニーであった。
――――…
ちなみにだが、エメラルド以外のオニキス一行は面倒事があったときに獣人になりすますためにケモ耳ケモ尻尾のコスプレを用意していた。
菜「こんなところにいたのか。」
卯「私たちが大人だとコイツらに言ってやってくれ。」
オ「はい、わかりま…(プシッ!)」
その破壊力はオニキスの限界を超えていたとだけ言っておこう。
――――…
ついに獣人の街を旅立つオニキス一行。その先に待っているのは…!?
次回、『別れ』。
皮「やれやれ、やっとですか?」
ありがとうございました。
※卯月は狐コス、菜真理はチワワ、センは垂れ耳の大型犬、ライとフーは双子の猫ですかね…




