歓迎
いや、もう…何て言うか…すいません!
歓迎
オ「獣士団主催って聞くと、パーティって言うよりは飲み会って感じがするよな。」
エ「なんだか暑苦しそうだしねぇ。」
ミカからパーティの誘いをうけた日の午後。オニキスとエメラルドは街に出ていた。
オ「そもそも、負けた後にパーティやる神経が理解できない。」
エ「騒ぐ良い理由になるからじゃない?」
オ「学生みたいなノリだな。ちょっとついてけないわ。」
――――…
二人が街に出ている理由は、何時間か前に遡る。
卯「ふむ、パーティか…宴会か何かの間違いじゃないか?」
テ「まあ、獣士団主催となると、どうにもそんな傾向になるのは否めませんが…一応、何人か私の知り合いの貴人方をよんでいます。」
卯月は次回の訓練の打ち合わせをしに、テナーの屋敷に来ていた。
卯「貴人、ねぇ…それはお前よりも身分が高い奴らなのか?」
テ「はい。この街でこそ団長などと呼ばれていますが、都に出れば木っ端役人も同然。貴人方には腕を見込まれたのです。」
卯「腕を?」
卯月が多少バカにしたような響きを言葉にこめる。痛々しい言動をした人物に対するような響きだ。
テ「これは手厳しい。もちろん、卯月様のお仲間のオニキス様や他の方々には敵うべくもありませんが、これでも小僧の時から修羅場を何度も潜りました。そこらの相手には負ける気はしません。
ただ、オニキス様などはそこらの相手では無いというだけです。」
卯「ふむ、それもそうか。」
卯月の機嫌が少し良くなる。
卯「しかし、身分のある輩を相手するとなると手間がかかるな。正装は必要か?」
テ「出来るのであれば。」
卯「ふむ…」
普通ではない人種とあうと、面倒事が増える。卯月はそう考えていた。もっとも、オニキスやエメラルドがいれば大抵のことは力ずくで解決できるのだが。
といっても、リスクはできる限り減らすのがベストである。その第一歩が正装。
テ「あの…今からお揃えになるのでしたら、費用と良い服屋への紹介状を用意しますが…」
卯「そうか?悪いな、頼むぞ。」
まるでカツアゲか何かのようだが、卯月にそんな気は決してない。簡単に言ってしまえば、テナーが勝手に卯月たちにビビってゴマをすっているのである。
テナーはこの街の名士、その程度の金で卯月たちを大人しくさせられるのなら安いものだと考えている。
卯月が去った後、テナーは大きく息をつく。
テ「…アルトをどうするか…」
父であり、団長でもある彼の苦悩は尽きない…。
――――…
卯「というわけで、だ。お前たち、街に出てマシな服を買ってこい。」
宿に戻ると、卯月はオニキスとエメラルドを呼び出してそう言った。
オ「はぁ、マシな服ですか?」
どうにもしっくり来ないといった様子でオニキスが問い返す。
卯「あぁ、そうだ。本来なら正装が良いんだが…如何せんこちらでの正装がわからない。例えば、正装が金モール付きのバカみたいな貴族服だったら着たくないだろう?」
オ「あー…それはそうですね。」
エ「じゃぁ、適当にスーツとかドレスみたいなのを見繕って買ってくればいいのねぇ?」
エメラルドが言うと卯月が苦笑しながら言う。
卯「そうだな。ドレスを買うかはお前の判断に任せるが。」
エ「そうねぇ…スーツを着ても男装の麗人って感じでウケるかしらぁ?」
オ「いや、現時点でお前は女装男子だからな。正常に戻るだけだ。」
エ「やだぁ、ならドレスにするぅ。」
と、オニキスが卯月に訊ねる。
オ「そういえば、卯月さんとか他の皆は行かなくても良いんですか?」
卯「うむ、私と菜真理はこれが正装のようなものだからな。センは子供だし、ブリキはロボット。
ウルフは今回は留守番をさせるつもりだ。」
ちなみに、卯月と菜真理は改造軍服のようなものをいつも着ている。
オ「それじゃあ、ライとフーもそのままでいいな。」
エ「ねぇ、早く行きましょうよぉ!」
と、いうことで冒頭に戻るのである。
――――…
しばらく歩くと、卯月がテナーに渡された紹介状の店があった。
オ「ここか?」
エ「随分おっきな店ねぇ。」
その店は来るまでに通りすぎた他の服屋よりも一回りか二回りほど大きかった。店外の装飾も豪華である。
オ「お偉いさん御用達ってか?」
エ「でもぉ、この街で一番偉いのってテナーさんよねぇ。その他に偉そうな人って見たことないけどぉ。」
オ「確かに。それほど小さい訳でもないのにな。」
そんなことを言いながら、二人は店の扉をくぐった。
「いらっしゃいませ。オニキス様にエメラルド様でございますか?」
店に入るとすぐ、声をかけてくる人がいた。聞くと、どうやら店主らしい。
「テナー様から万事承ってございます。最上の礼服をご用意させていただきました。」
そういって店主が取り出したのは…
オ「あー、そう来たか…。」
エ「流石にそのコルセットはねぇ。」
マリーアントワネットのような絢爛豪華なコルセット付きドレスに、カツラに始まるその時代のフランス系の服であった。
オ「俺たちは武人だからな、そんなに豪華じゃなくていい。少し自分たちで探してみてもいいか?」
エ「自分たちで欲しいのを探すのもぉ、お買い物の醍醐味だからねぇ。」
「そうでございますか…」
オニキスたちは、道中考えた言い訳を使ってその服を断った。エメラルドならまだしも、フランス王朝時代の服をオニキスが着ても、本人の感覚では痛いコスプレにしかならないのである。
その後、小一時間ほど店内を探し回ると…
オ「なんであるのかは不思議だけど…これでいいだろ?」
エ「なんだか、色々混じってるわよねぇ。」
オ「チラッと紋付き袴みたいなのも見えたけど…」
エ「何でもありねぇ。」
奥にあった『武人用礼服』というコーナーの中から、オニキスはスーツを、エメラルドは現代でも着られるようなドレスを見つけ出した。
「あの…本当にそれでよろしいのですか?」
店主が不安そうに聞く。彼としては、テナーに言われた通りに最上のモノを用意したのに、それを断られて原価の安いモノを買ってしまわれると、何かあったときに自分とテナーの責任になると考えている。
オ「別にいいんだよ。俺たちはこっちの方が着なれてるし、何かあっても別に気にしないし。」
エ「そうそう、心配しなくていいわよぉ。」
「そうでございますか。それではお会計を…」
客にそういわれてしまっては仕方ない、店主は腹を括って会計をするのであった。
――――…
その日の夜。オニキスたちはテナーの屋敷に設けられたパーティ会場に来ていた。
ちなみに、庭が庶民用の会場で、屋敷の中の大広間が貴人用である。
卯「ふむ…庭の方はもう始めているな。」
菜「仕方ないだろう。宴会など、勝手に始まって勝手に終わるものだ。」
と、ミカがオニキスたちの前に来た。
ミ「ようこそ。なんだか勝手に始まっちゃったんだけど…いいわよね?」
オ「別にいいと思うぞ。俺たちは別に気にしないからな。」
ミ「よかった。それじゃあ、こっちに来て。」
ミカがオニキスの手を引いて宴会集団の中に入っていく。
と、それに気づいた獣士団の面々が声を張り上げる。
「おっ、バカ強い兄ちゃんたちじゃねぇか!」
「おーい、道開けろー!英雄様のお出ましだー!」
すると、会場にいる人々が中心に向かって綺麗に割れていく。
そこを歩く途中にも、周囲から声をかけられる。
「街を助けてくれてありがとー!」
「次は負けないぞ!」等々。
やんややんやと実に賑やかだ。
卯「やれやれ…もう酒が入っているのか?」
菜「だが、嫌な雰囲気では無いな。」
卯月と菜真理が苦笑いしながら言い合う。
と、一行は群衆の中心に出た。そこには
「あ、お兄ちゃんだ!」
オニキスがこの街で一番最初に助けた幼女、ミカの妹のルカが待っていた。
オ「お、どうした?」
「あのね、そのね…助けてくれて、ありがとう!」
始めの頃よりも仲良くなったぶん、言葉にこめられる感情が大きい。
「それでね…大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになってあげる!」
それだけで報われた気分になったオニキスであった。
ロリコンである。
――――…
賑やかに楽しく進んでいくパーティ。しかし、そこに暗雲が立ち込める!?
次回『貴人』
エ「アタシってば、美人さん!」
ありがとうございました。
次回こそはしっかり投稿したいと…




