宴
遅くなりました。
宴
訓練の翌日、オニキスの部屋。オニキスは珍しく朝寝坊をしていた。
と、眠るオニキスの部屋に忍び込む影が一つ。その影は、オニキスが寝ているのを見るとオニキスのベットに潜り込んだ。
――――…
オ「ん…ん?…ん!?」
遅い目覚めを迎えたオニキスは、いきなり衝撃的な光景を目にすることになる。
セ「すぅ……すぅ……むにゃ…」
オニキスのベットにセンが寝ていたのだ。枕を並べて、掛け布団にミノムシのようにくるまって。
オニキスの心臓は、寝ぼけて動かない脳に全力で血液を送り始める。
オニキスは考える。この体は酒に酔うほど弱くは作られていないし、そもそも昨日の夜は酒を飲んでいない。何かクスリを飲んだり、飲まされたりした記憶も無い。『イエスロリータ、ノータッチ』の信念は魂の奥深く、本能レベルまで染み込んでいるので、寝ぼけて何かしてしまったと言うわけでもない。辺りを見回しても、ここ数日で見慣れた自分の使っている部屋。部屋を間違えるなどというバカなハプニングというわけでもない。
そもそも、布団には寝返りをうった程度の乱れしかない。掛け布団はセンが全て使っているが。
結果として、オニキスがセンと何やらイタしてしまったということは無いだろう。
と、ここまで考えて、早鐘をうっていたオニキスの心臓は、普通の速さまで戻った。
オ「(考えてみれば、センの寝顔をここまで間近ではっきり見るのは初めてかも…)…。」
タラリ。
オニキスの鼻から紅い液体が流れ出す。以前のオニキスならば噴出していたのだろうが、日々危険な環境(ロリコン的に)に晒されている中で、無意識に鼻血は垂らす程度に押さえつけることができるようになっていた。なんの意味もないが。
そもそも、幼女の寝顔を見て鼻血を出している時点で充分アウトである。
ここまで様々なことを考えた後、初めてオニキスはセンを起こしてここで寝ている理由を聞くという選択肢に至った。
オ「センちゃん、センちゃん。」
布団の上からセンの体を揺するオニキス。
セ「ん…なんだー…んー…まだ眠いぞー…すぅ…」
揺すれば揺するほど布団の中に潜っていくセン。
その後も根気よく揺すり続けると、ようやくセンが目を覚ました。
セ「ん…おはようだぞー。」
オ「うん、おはよう。」
セ「なんで起こしたんだー?」
オ「いや、どうしてここで寝てるのか聞こうと思って。それに、もうお昼前だし。」
セ「センの部屋にブリキが起こしに来てうるさかったからだぞー!」
オ「ブリキが?」
その後も断片的な情報をセンから聞き出し続け、それらを繋ぎ合わせると、状況が見えてきた。
昨日の訓練後、センは負傷した獣士団の兵士の治療を手伝っていた。水の精であるセンは、いわゆる回復魔法のようなものが使えるらしい。
センは、それを使っているといつもより疲れてしまったのだと言う。
いつもより早く寝たのだが、疲れがとれない。もう少し、もう少しと二度寝三度寝をしていると、ブリキが起こしに来た。当然、センはぐずって起きようとしない。だが、母親系ロボットことブリキはあの手この手でセンを起こし続けた。
まだ眠いものはどうしようもない。しかしブリキが起こしてくるので、ゆっくり寝れない。そこでセンは考えた。一度起きたフリをして、どこか別の場所で寝ようと。
眠いのを我慢して起き上がり、ブリキが出ていくのを待つ。そして、ブリキが出ていったのを確認したセンは、お気に入りの枕を抱えて安息地を探しに出た。
しかし、どの部屋でも皆起きている。そこに寝にいけばブリキのように起こしてくる。そして、たどり着いたのがオニキスの部屋。覗くと、オニキスは寝ていて、ブリキが起こしに来る気配もない。丁度良くオニキスがベットの端の方にいたので、その反対側に潜り込んだ。
そしてそのままオニキスに起こされるまで寝ていたのだと言う。
セ「なーなー、もうちょっと寝てちゃダメかー?」
寝起きの格好で上目遣い。オニキスを籠絡するには十分すぎる破壊力だった。
それを見て鼻血を垂らしながらも、あることに思い当たるオニキス。
オ「そういえば、朝ご飯はもう食べた?」
と、センが目を見開く。
セ「食べてないぞー!お腹減ったぞー!」
オ「じゃあ、食べにいこうか。
着替えるからちょっと待っててね。」
時刻は大体10時半くらい。センがお昼ご飯もしっかり食べられるように、少し量を減らして貰おうと考えるオニキスであった。
――――…
セ「んー…まだ眠いぞー。」
オ「お昼ご飯食べ終わったら、お昼寝しようか。」
そんなことを言いながら、二階から降りていくと
ブ『おや、遅いお目覚めだね。朝ご飯は食べるかい?』
ミ「おはよう。」
ブリキとミカがお茶を飲んでいた。
セ「朝ご飯食べるぞー!」
ブ『まったく、起きたと思ったら…』
センがブリキに朝ご飯をねだる横で、オニキスはミカに訪ねる。
オ「なんでミカが?」
ミ「卯月さんに呼ばれた。」
そして、なぜかそこで胸をはるミカ。
オ「卯月さんに?」
と、二階から菜真理が降りてきた。
菜「オニキス、起きたのか。おはよう。」
オ「おはよう、なーちゃん。」
菜「朝寝坊なんてお前らしくないが…疲れでも溜まっていたか?」
オ「それほど疲れた感じもしなかったんだけどね。」
ミ「あんなに動いてたのに?」
菜「はは、オニキスは特別製だ。普通の人間を基準に考えない方がいい。」
言外に人外だといっているようなものだ。
オ「ところで、卯月さんは?」
菜「ん?あぁ、そこの娘たちと話した後に、テナーとなにやら話にいったようだぞ?」
ミ「私とステイラおじさんとシャインおじさんは合格だって。」
ミカが言う。
それを聞いて、オニキスが訊ねる。
オ「ステイラおじさんとシャインおじさんって誰だ?」
ミ「ステイラおじさんは獣士団ランク一位で、シャインおじさんは三位。昨日、私と一緒に最後まで残ってた二人。シャインおじさんは昨日のことがあったから二位に繰り上げになると思うけど。」
オ「そういえば、二位のルーナって人は大分弱い感じがしたけど…あれでも二位なのか?」
オニキスが聞くと、少し頬を膨らませてミカが言う。
ミ「あなた基準で考えられたら、誰でも弱く感じるわ。シャインおじさんは奇襲とか連携攻撃が得意だから、一対一の武術大会だと不利なんだって。それに、ルーナおじさんも私からしたら凄く強いし。」
オ「それでも卯月さんの琴線に触れたのは一位と三位と圏外、か。ルーナさんも立場がないだろうな。」
オニキスが呟くと、ミカがそれを否定した。
ミ「そうでもないわ。エッジに比べたら、最後まで残ってたからいい方よ。」
オ「エッジ…あ、切り込み隊長の人か。」
ミ「それも昔の話になったわ。今じゃ『切り込み隊長(笑)』なんて言われてるもの。
武術大会四位なのに、一番最初にやられちゃったから。」
と、それを聞いていた菜真理が驚いたように言った。
菜「ふむ、あの男のほうがアルトよりも強いのか?」
ミ「そうね。どっちも正面からぶつかる前衛型だし。エッジの方が力が強いし、経験も深いからね。」
菜「ふむ、そうなのか…」
そう言って、何やら考え始める菜真理。
菜真理が黙ったので、オニキスがミカに聞く。
オ「それで、なんでシャインとステイラと一緒に帰らなかったんだ?お茶するためか?」
ミ「それもないことは無いけど…一番の理由は、あなたに会いに来たのよ。でも、なかなか起きてこないからお茶してたの。その金属の塊みたいな人も、話してみたら面白い人だったからよかったわ。」
ブ『金属の塊、言い得て妙だな。』
ミカがブリキを指差し、ブリキがはは、と笑う。
オ「なんだ、それなら起こしてくれればよかったのに。」
ミ「そこの女の子に止められちゃったのよ。」
そう言って菜真理をさす。
菜「たまの休みくらいは休ませてやりたかったからな。それでも、退屈はさせなかっただろう?」
ミ「そうね、悪くなかったわ。」
何をしていたんだろう、と思いつつ、女子が明言しない部分に踏みいると地雷があると考えたオニキスは気にしないことにした。
オ「それで、俺になんの用だ?」
ミ「そうそう、パーティの招待に来たのよ。」
オ「パーティ?」
ミ「そう。よく考えたら、街を救ってもらったお礼をしてないことに気がついてね。綺麗に負けたついでに獣士団主催でパーティをやろう、ってことになったの。来るでしょ?」
オ「そうだな…」
チラリと菜真理を見ると、菜真理が軽く笑う。
菜「主役がいなくてはパーティも何も始まらないだろう。好きにしろ。」
ミ「そうよね。じゃあ、パーティは明日の朝からだから。皆で来てね。」
そう言って、ミカは帰っていったのであった。
――――…
パーティに呼ばれたオニキス一行。しかし、そこはパーティとは名ばかりの…!?
次回『歓迎』
セ「んー…眠いぞー…」
ありがとうございました。
次からは遅くても1:00には投稿できればいいな…




