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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
獣人邂逅
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提案

提案


テナーの屋敷から卯月たちの宿に向けての道。


ア「嫌ですわ…行きたくないですわ…」


「そんなことを仰らずに。テナー様にも何かお考えがあるのでしょうから。」


ボソボソと不満を漏らすアルトを一緒にいる何人かの若者がたしなめる。


ア「だって、あそこにはあの黒い悪魔がいるんですわよ!」


「はは、アルト様は大袈裟おおげさだ。」


アルトは思う。この者たちはあの悪魔の本性を知らないからそんなことが言えるのだ、と。訳のわからない力に、尋常ならざる威圧感。絶対にヒトでは無い、とアルトは確信している。おそらくはあの女が契約している悪魔なのだろう、と。

実際のところ、アルトの思う『女』は男だし、契約していると言うのなら、卯月か菜真理なのだが。


と、アルトが考え込んでいる間にも一行の歩みは止まらず、卯月たちの宿の前にたどり着いた。


ア「はぁ…着いてしまいましたわ…」


着いてしまったものは仕方ない。いつまでも立ち止まっている訳にもいかないので、宿の中に入る。と、そこには


フ「モンブランの栗は先に食べるですか?」


セ「先に食べるぞー!」


オ「そうだなぁ…どっちかと言えば後かな。

ん?あぁ、団長さんの所からか。」


ア「ヒッ…!?」


瞬間、アルトの顔が蒼白になる。


オ「卯月さん、来ましたよー。」


オニキスは気にせずに卯月を呼ぶ。

あの時、オニキスはアルトをトラウマになるように脅したのだ。言ってわからなければ、というモノだ。

なので、この現状はオニキスの思い通りとも言えるだろう。もっとも、本人も思っていなかったほど効果が出ていたが。


卯「うむ、来たか。」


二階から卯月が下りてくる。


卯「代表者は?」


「アルト様…ですが…」


卯「ふむ、その様子では無理そうだな。よし、手短に話してしまおう。その娘には後からしっかり伝えておけ。」


アルトは顔面蒼白で、ガタガタと震えている。到底、冷静に話など聞ける状態ではないだろう。


オ「そんなに怖がるか?」


エ「アンタ、本気になると大分だいぶイッちゃうからねぇ。アタシも怖いしぃ。」


オ「…そんなにか?」


エ「アタシじゃなかったらトラウマモノよぉ。ちょうどあの子みたいにぃ。」


そう言ってアルトを指さす。


エ「なんかぁ、こっちに来てからアンタ、ちょっと変わったわよぉ?変な威圧感…みたいなぁ?」


オ「そうか?別に変わったことも無いけどな。」


言葉の端々に疑問符を浮かべながらエメラルドが言うが、オニキスにはその自覚が無い。手を握ったり開いたりするが、別段変わりは無いように思える。


オ「改造のされすぎでおかしくなったかな?」


エ「…可能性がまったく無いわけじゃないのが怖いわぁ。」


――――…


一方、卯月はテナーの所から来た五人(アルトを除く)を椅子に座らせ、自分はその対面に座り、話を始めた。


卯「お前たちは自分たちがどうしてここに呼ばれたのか、わかるか?」


「いえ、テナー様からは何も聞いていないので…」


一人がそう言うと、卯月がため息をついた。


卯「その答えだと、0点だ。もう少し考えて答えろ。」


「それでは…わかりません、と答えればよいのですか?」


他の一人が答える。


卯「まだマシだな。0点には変わりがないが、問題を理解している。」


その後も二人が答えるが、どちらも卯月の気に入るモノではなかった。


最後に残ったのは一人の若者。


卯「ふむ…お前はどうだ?」


?「獣士団がテナーさん以外、脳ミソに筋肉しか詰まっていないバカばっかりだからですかね。」


他の者がなにかしら友好的な表情を浮かべている中、ただ一人だけ不機嫌な顔をしていたその若者が不機嫌そうに言う。


?「脳筋ばっかりだから、今後が心配になったテナーさんがあんたに頼んだか、あんたが提案したか…そんなところでしょ?」


「お、おい!」


卯「いや、別に構わない。」


その若者を他の一人がたしなめようとするが、卯月がそれを止める。


卯「お前、名前は?」


?「…アイロニーです。皮肉屋アイロニーで通ってますよ。」(以外、『皮』)


ブスッとした顔のまま、答える。


卯「おおむねお前の言った通りだ。私は獣士団の副官を育てる手伝いをする。」


皮「へぇ…見たところチビッ子に見えますけどね。そんなこと出来るんですか?」


ジロジロと卯月を疑わしげな目で見るアイロニー。


卯「ふむ…そういえばそれが常識的な反応だな。

表面的なことを見る目はあるらしいな。だが、本質を見抜く力は無いようだな。」


皮「へぇ、そうですか。」


不満そうなアイロニーだが、卯月は気にせずに続ける。


卯「まあ、私が何者なのかはこの際気にするな。重要なのは何をするかだ。

お前たちの普段の仕事は何だ?」


皮「街の治安警備とか、犯罪者の確保とかですかね?あとは害獣駆除と時々戦争って感じです。」


卯「そうだな、私もそう聞いている。お前たちはそういう場合に下請けの事務仕事をする文官、だな?」


「はい、そうです。」


一人が答える。


卯「だが、今後必要になるのは前線にも出ることのできる指揮官だ。」


卯月はそこで一度言葉を区切り、五人を見る。


卯「ということで、だ。アイロニーとそこで震えている娘以外は帰っていい。」


「え?それはどういう…」


卯「そのままの意味だ。テナーには文官を少しずつこちらに送れ、とだけ言った。そこから使えそうなのを選ぼうと思っていたのだが…一度目でアタリを引いたようだ。」


そう言ってアイロニーを見る。


卯「お前、引きこもりの文官とは少し違うな。戦闘もできるだろう?」


アイロニーは少し顔を背ける。


皮「できなくは…無いですけどね。」


卯「それと言うのも、私がお前にさせることに関係しているんだが…」


と、卯月が何かを取り出した。


「それは?」


卯「これは、小さな弾を高速で撃つ武器、のオモチャなんだが。」


黒く塗られたプラスチックの塊。L字の形。

拳銃の模造品、モデルガンである。

もっとも卯月によって魔改造を施され、使い方によってはそれで人を殺せるような代物になっている。


「スリング、もしくは弓のようなモノですか?」


卯「おおむねその通りだ。もっとも、それよりも威力と速度は大分だいぶ上がっているがな。」


と、卯月はそれをアイロニーに向けて構える。


皮「…なんです?」


卯「避けてみろ。」


と、言うや否や、引き金を引く。


皮「…っ!」


ギリギリでそれを避けるアイロニー。


卯「うむ、悪くない動きだ。やはりアタリだ。だが、それではまだ足りないな。」


皮「なんだってんですか…」


と、ボヤくアイロニー。


卯「私がお前にさせるのは、対害獣戦を想定した軍単位での模擬戦だ。相手をするのは私の部下だ。おい、オニキス!」


卯月がオニキスを呼ぶ。


オ「なんです?」


ア「ヒッ!?」


オニキスが返事をしながら立ち上がると、アルトの肩が跳ね上がる。


皮「これが英雄様ですか。それにしても、アルトさんはビビりすぎじゃないですかね。」


オ「…少しやり過ぎたかな…」


バツが悪そうに頭をかくオニキス。


皮「それで、この人が総大将としてあんたの軍はどこにいるんです?この街にはいないから…伯爵街にでも置いてきてるんですか?」


卯「いや、お前たちの相手をするのはこのオニキスともう一人、いや、アレの場合『一機』と言った方がいいのか?それだけだ。」


それを聞いて、アイロニーの不機嫌そうな顔が更に不機嫌そうになる。


皮「それはちょっと俺たちを舐めすぎじゃ無いですかね?」


卯「いや、そうでもないぞ?」


と、卯月が違うモデルガンを取り出す。先程のモノより大きく、弾もたくさん入っている。

そして、それを唐突にオニキスに向け、乱射した。


絶え間なく吐き出される弾。しかし、


オ「いきなり何するんですか…しかもこれ、大分だいぶいじくってあるでしょ?手が痛い…」


オニキスは全ての弾を一度手のひらで受け止めてから地面に落としていた。


卯「なに、さっきコイツにやったから、お前もやられると想像はできただろう?」


オ「いや、おれはフーの『スイーツ食べ方講座』聞いてたんですよ…アンタも災難だったな。」


皮「…まあな。」


アイロニーを労るオニキス。

その後ろでは、フーがセンに


フ「シュークリームは底の所をとると、お鍋みたいになるです!」


セ「…おー!ホントだぞー!」


などと言っていた。


と、卯月がそのモデルガンをアイロニーに渡す。


卯「地面に撃ってみろ。」


皮「はぁ…はっ?」


バキッ!


アイロニーが地面にモデルガンを撃つと、そこの床板が割れた。


皮「こんなの受け止めてたのかよ…化け物だろ。」


椅子にドサッと座り直す。


卯「と、いうことだ。訓練は明日から始める。詳しいことはその時に話そう。集められるだけ、人を集めておいた方がいいぞ。」


――――…


皮「はぁ…とんでもないのが相手だな…」


と、後ろからアイロニーの前にお茶がおかれる。


『粗茶だが。ゆっくりしていきたまえ。』


皮「あぁ、ありが…っ!?」


アイロニーが見たのは


ブ『どうしたのだね?何か吾輩の顔についているかね?』


万能系家事ロボットことブリキであった。


ブ『君がそちらがわの大将だそうだね。

吾輩はオニキスよりも弱いが…精一杯やらせてもらうよ。』


心の底から勘弁願いたいと思うアイロニーであった。


――――…


オニキスの圧倒的な戦闘力を目の当たりにしたアイロニー。しかし、それはほんの一部に過ぎなかった!


次回、『圧倒』


フ「シュークリームはお鍋みたいになるです!」


ラ「フーばっかりズルいぜ!」

ありがとうございました。


※シュークリームは和製英語なんですね。英語圏ではクリームパフって言うんだそうです。『シュークリーム』って言うと靴クリームのことになるらしいです。

…はじめて知った。

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