アレルギー
アレルギー
エ「それじゃあ…ヘビィメテオ!」
空から家ほどもある巨大な岩が一つ。いとも容易く城門を砕いた。
オ「やっぱり一撃の威力はエメラルドのほうが上だな。」
エ「タメは長いけどねぇ。」
城壁に囲まれた都市を攻める軍はたった二人。
オ「おイタが過ぎる子にはちょっとばかしお仕置きが必要だな。」
エ「アンタ、子供にお仕置きなんてできないでしょ?」
オ「どうしても必要なときにはするさ。子供を人道に導くのは大人の仕事だ。」
首をグリグリと回し、手足首の柔軟をする。
オ「さて、『お仕置き』の時間だ。」
エ「腕がなるわぁ。」
圧倒的な小数による圧倒的な蹂躙が始まる。
――――…
卯「やはり伯爵家内部への公式な進入は困難か?」
菜「ふむ…落とすことも可能だが、始めは平和的にいこうか。」
卯「ならばどうする?」
菜「ふふ、それこそ私たちの専門分野じゃないか。方法が無ければ…作るのみだ。」
――――…
卯「と、言うわけでだ。」
オ「はい?」
オニキスは完全に包囲されていた。
「なーなー!その角取れんのかー?」
「黒いお洋服、かっこいい!」
「あの魔法、もっかいやって!」
獣人の子供たちに。
「ほら、オニキスさんはお仕事の話をするんだよ。」
「邪魔しちゃダメじゃないか。」
「すみませんねぇ、ウチの子が。」
親たちにも馴染まれていた。
子供たちが親に連れていかれると、菜真理が不機嫌そうに言う。
菜「…随分と仲が良いじゃないか。」
オ「まぁ、託児所代わりだよ。少しでも早く落ち着けるようになればこっちも楽でしょ?」
菜「それはそうだが…」
卯「どうした、嫉妬か?」
菜「ち、違う!そんなのじゃ…」
卯月の言葉に泡を食って否定する菜真理。
エ「あらぁ?アンタにも萌え幼女耐性がついたのぉ?」
不思議そうに言うエメラルド。
そう、オニキスは穏やかな笑顔を浮かべたまま、鼻血を出していないのだ。
と、エメラルドが違和感に気づく。
エ「…ねぇ、どうしたのよぅ?」
オ「…」
オニキスが返事をしないのだ。
エ「ねぇ、ちょっとぉ!無視しないで…え?」
そして、エメラルドが肩を叩くと
オ「…(バタッ)…」
エ「…これ、気絶してるわぁ。」
そのまま地面に倒れたのであった。
オニキスの幼女耐性はマイナスに振り切れていた。
――――…
オ「それで、なにが『というわけ』なんですか?」
オニキスが言った。
ちなみに、爺が持ってきた気付けのための強い酒によって、オニキスの意識は戻った。
卯「ふむ、獣人と伯爵家の対立を解決しようと思ってな。始めは平和的に交渉を、と決めたのだが…如何せんいきなり本丸に入れるほどの伝もない。
かといって、地道に人間関係を作っていくのも時間的に厳しいモノがある。
よって、その方面に特価したモノを作ることにしたのだ。それが…」
パチン、と卯月が指を鳴らす。
と、次の瞬間にはその背後に一つの影がいた。
卯「現地製改造生物、コードネーム『ストーンズ』。第零号試作型『クォーツ』、元となったのは狗頭だ。」
狗頭、分かりやすく言えばコボルトだ。
オ「…なんでわざわざ高いところに隠しておいたんです。」
卯「…私は正義を愛するものであり、未知の世界を求める探求者でもあり、演出家でもある。
もとの世界なら選択の余地なく空間転移を使ったのだがな。」
ようするにカッコつけたかったのだ。
卯「…話を戻そう。戦闘面に関しては私たちはオニキスという切り札がある。だが、工作という面ではあまり有利ではない。
私やなーちゃんなら可能だが…この体なのでな。」
ちなみにだが、工作とはつくってあそぶ方ではない。
卯「そこで、このクォーツだ。能力は精神干渉系。躁鬱病の治療から洗脳まで能力は幅広い。その上、元が魔物故に身体能力も低くはない。完全な環境ではなかったので試作型としたが…万に一つも『想定外のケース』というものは無いだろう。」
それは世間一般ではフラグという。
と、エメラルドが『クォーツ』から目をそらさずにオニキスに話しかけた。
エ「…ねぇ、オニキス?」
オ「…多分考えていることは同じだ。むしろ、実際に見てるだけあって俺のほうが強く感じてるはずだ。」
そして、一息ついて同時に言った。
「「いかつすぎない?」」
そう、圧倒的にいかついのだ。
そもそも、狗頭はそこまで大きく強い魔物ではない。見た目も柴犬などの中型犬を少し人間よりにした程度だ。
だが、この『クォーツ』は違う。
身の丈は2mを越し、首から上は巨大な狼そのものだ。
体もそれと同じく、腕部分以外はほぼ狼を二足歩行にしたものである。
卯「そ、そうか?可愛いと思うのだが…」
だが、天才の感性は常人とは異なるのだ。卯月は仲間にするなら、と可愛く改造したつもりなのだ。
菜「私もこれはないと思ったのだがな…隠密行動向きではないしな。」
卯「そこに抜かりは無い!」
再度卯月が指を鳴らすと
エ「…うわぁ…」
ゴキリゴキリと骨がなる音と共に、『クォーツ』は姿を変え、完全な狼のモノにした。
卯「どうだ!格好いいだろう!」
再度言う。天才の感性は常人とは異なるのだ。
卯「コイツの名はウルフだ!女の子だからウルフちゃんだな!」
そして、その場にいた全員が思う。
「「「(コイツ、メスだったのか…)」」」
――――…
卯「さて、それでは今回の作戦を発表する。」
時は過ぎて、翌早朝。日も昇りきらないうちにオニキスたちは一堂に会していた。
卯「まずは第一段階。私となーちゃん、そしてウルフちゃんで伯爵の館に入り、会話による交渉を試みる。基本的に平和的に進めるつもりだ。」
と、エメラルドが手を挙げていう。
エ「伯爵ってほどだからぁ、絶対警備の人とかいるでしょ?どうするのぉ?」
卯「精神に干渉し、私たちを敵、もしくは部外者だと思わせない。そのためのウルフちゃんだ。」
卯月が自信満々に言う。
卯「そして、交渉が決裂した場合は第二段階、オニキスとエメラルドによる威嚇的な攻撃だ。
爺に聞いたところ、この辺りには大して危険な魔物はいないらしい。そこで、まず始めに伯爵家のある都市を囲んでいる防壁を破壊しろ。
その後、脱出した私たちと合流、伯爵を脅迫する。獣人には私たちが味方についているのだ、とな。」
エ「わかったわぁ。」
オ「それだったら俺の出番はないと思いますけどね。」
卯「なに、お前はエメラルドの護衛だ。伯爵がどんな人物かは知らんが、攻撃されて反撃しない訳があるまい。
なんにしろ、出きる限り殺すなよ?命は貴重だ。」
その言葉に二人は頷く。
エ「出きる限り、ねぇ。」
オ「善処します。」
と、つまらなそうに聞いていたセンが言った。
セ「センはすることあるのかー?」
卯「いや、今回は特に無い。強いて言うならここの防衛を頼みたい。」
セ「仕方ないな!センは偉いからやってやるぞ!」
そして、そのまま遊びに出ていく。
それを見て、ため息を一つすると、卯月は表情をガラリと変えた。
卯「本来なら私たちが口を挟むことでは無いのだろうが…私たちは正義の味方なのでな。悪は見過ごせない、それだけだ。」
クツクツと笑う卯月。
それを見ていたエメラルドがポツリと言う。
エ「伯爵ってのがどんな人かは知らないけどぉ…お気の毒に、だわぁ。」
こうして、たかが猫アレルギーのために正義の味方たちは戦いを始めるのであった。
――――…
菜「私は正義の味方じゃないんだがなぁ。」
――――…
伯爵の館の奥深くまで進入する卯月、菜真理、ウルフ。その命運は!?
次回、『説得』
エ「星の輝きをアタシに!」
間が空いてしまい、すみませんでした。
今後も何日か間を空けたりしてしまうことがあると思うので、温かく許してやってください。




