街
2章目、開始です。
街
龍たちに見送られたオニキス一行は一番近くの街を目指すことにした。卯月の『現地人とのコミュニケーションをはかる。』という一言によって。
現在、一行は白河沿いの道を歩いていた。
卯「そういえば、オニキス?」
オ「なんです?」
卯月がブリキの上から先を歩くオニキスに話しかける。
卯「お前、龍からの報酬は貰ったのか?」
オ「『龍玉』とかいうのを貰いましたよ。睡蓮さんが飲めば良いって言ったんで飲みましたけど。」
卯「貰っていれば何も問題はない。どうだ?強くなった実感はあるか?」
オ「いえ、これといって。覚醒条件とかあるんですかね。」
卯「ふむ…まあ、今のままでも過剰戦力だということはわかっているからな。暫くは放置で良いだろう。」
――――…
それから歩くこと数時間、卯月たちの眼にはまだ街は見えない。
オ「…すいません、少し先に行っても良いですかね?」
卯「うむ、いいだろう。」
エ「こっちはアタシに任せて良いわよぉ。」
オ「それと、センちゃん。ちょっとついてきて貰っていい?」
少し後ろを歩いていたセンにいう。
セ「いいぞ!ついてってやる!」
オ「それじゃあ、俺の背中に乗って貰っていい?」
セ「わかったぞ!」
と、言うやいなやセンはオニキスの背中に飛び乗った。
オ「(プシッ)ぐっ、グニって…そんな場合じゃない!」
当然、巨大山脈がぶつかることになる。
鼻血を出しながらも、首をふってなんとか邪念をはらったオニキスは、クラウチングスタートの姿勢をとる。
オ「それじゃあ、いってき…ますっ!」
瞬間、爆発音に似た轟音と抉れた地面を残してオニキスの姿はなくなっていた。
――――…
オ「見えたっ!」
セ「なんだか嫌な火のにおいがするな!」
視力までも極悪に改造されているオニキスにだけ見えていた景色、それは街から吹き上がる赤い炎であった。
オ「センちゃん、あの火消せる?」
セ「余裕だぞ!」
センが手を天に向けると、空に黒い雲が集まってきた。
セ「『アメフラシ』!」
すると、瞬く間に雨が振り出し、やがて滝のようになった。無論、火は消える。
オ「油でも使ってたらどうしようかと思ったけど…量は力なり、ってことかな。」
セ「誰かくるぞ!」
それを見てポツリと呟くオニキスに、センが警告する。
?「なんだ、お前たちは!」
そして、現れた人物は全身鎧を着ていた。
オ「騎士さま、ってところか?」
騎「この魔法を今すぐに止めろ!我らの神聖なる進行を妨げるつもりか!」
オ「つまり、この火事はお前たちの仕業か?」
騎「神聖なる浄化の炎である!」
火は完全に消え、雨は上がっていた。
と、一軒の焼けた家のそばに一人の幼女がいた。
幼「おかーさん!どこー!」
そして、それを見てオニキスは絶句する。
オ「ケモ耳ケモ尻尾の猫ロリだと…!?」
その幼女には猫の耳と尻尾があった。
しかし、オニキスが硬直している間に、騎士が言う。
騎「ちっ、やはり炎が途中で消えたのが不味かったか。剣を汚したくはなかったが…仕方あるまい。」
と、剣を抜くとケモ幼女に近づき、剣を降り下ろした。が、その剣がケモ幼女を害することはない。
オ「…騎士さま、ソイツはやっちゃいけない。」
むろん、オニキスが止めたからだ。
その姿勢のまま、オニキスはケモ幼女に言う。
オ「君のお母さんはあとで一緒に捜してあげる。だから、ちょっとだけ離れてて貰えるかな?」
ケモ幼女はコクコクと頷くと近くの物陰に隠れた。
騎「貴様!さっさとどけ!我らは…」
オ「煩い。」
オニキスが剣を掴んだ指を捻ると、剣はいとも容易く折れた。
騎「なっ…!?」
オ「俺の前で未来ある子供を殺そうとするとは…命知らずもいたものだ。」
そのまま、掴んでいる折れた剣を握り潰す。
と、センが近くに走ってきた。
セ「センも手伝ってやるぞ!」
オ「ありがとう、助かるよ。」
そして、騎士に視線を向ける。その視線に込められているのは、絶対的な殺意。
そして言う。
オ「悪も正義も曖昧なもの。絶対正義も絶対悪も存在しない。」
ユラリとオニキスが歩を進める。
オ「悪にとっては悪が正義、正義にとっては正義が正義。正義と悪とは紙一重。判断するのは自分自身。」
立ち上るのは濃密な威圧感。
オ「ならばこの場では俺が正義でお前が悪!俺は俺の道を邪魔する者を悪だと断定する!」
騎士を指差す。
オ「俺は絶対正義!幼女を害することは俺が絶対に許さない!
俺はブラックオニキス!俺の信念において、お前を断罪する!」
瞬間、オニキスの姿が消える。そして、騎士はオニキスを見つけられない。
騎「ぐふっ…!?」
否、消えたのではない。あまりに速すぎるのだ。
オ「幼女に詫びて消えろ!」
あまりに圧倒的な力量の差。すなわち、あまりに一方的な展開。
騎「ぐぼっ…ぐぬっ…がっ…っ!?」
姿を捉えられないオニキスにひたすらに弄ばれる騎士。
オ「手加減はしてやった。仲間を連れてオウチに帰るんだ…なっ!」
騎士の体を爆散させない手加減をしながら、オニキスは騎士を殴り飛ばした。
騎「ぐはっ…っ!?」
オ「次に会うときは傷と一緒に脳ミソの中も治ってると良いな?」
そして、いつの間にか集まっていた同じような格好をした騎士たちを睨み付け。
オ「フンッ!」
全力で脚を踏みしめた。そして、地面がオニキスの脚力に耐えきれず、大きく陥没する。
オ「地面の染みになりたくなければとっとと消えろ!」
騎士's「「「ば…化け物ーっ!」」」
そして、見るも無惨な姿の殴られ騎士をつれて、騎士たちは逃げていった。
オ「まったく…どこの世界にも小物ってのはいるんだな。」
セ「センが出るまでもなかったぞ!」
近くにいながらも何もしなかったセン。だが、胸を張っている。
オ「(プシッ)…そ、そうだね。」
と、隠れていたケモ幼女がオニキスに駆け寄ってくる。
幼「お、お兄さん!血がっ!」
オ「大丈夫だよ。これはその…ちょっとぶつけただけで。」
真実は闇のなかに。幼女はロリコンに捕まった。
オ「さて、と。お母さんを捜そうか!どの辺りにいるかわかる?」
――――…
幼「ここが私のお家…だったところです。」
ケモ幼女が悲しそうな顔をしながら、焼け落ちた家の残骸を指す。
幼「街の外に野イチゴを詰みに行ってたんです。帰ってきたら家がこうなってて…」
母親を探していたところにオニキスが居合わせたということだ。
セ「この下に誰かいるぞー!生きてるから安心しろ!」
幼「本当ですか!?」
セ「当たり前だぞ!センは凄いからな!」
幼「それじゃあ、人を呼んでき…」
と、残骸が持ち上がる。
オ「うーん、と…あ、いたいた。」
そう、オニキスは重力を操れる。重いものなどオニキスの前では意味がない。
幼「お母さん!」
ケモ幼女がオニキスの見つけた女性に走りよる。
幼「お母さん!しっかりして!」
?「…すー…すー。」
幼「お母さん!」
と、幼女が女性の耳元で大声で叫んだ。
?「フガッ…んー…おかえりぃ。あれぇ?外?」
幼「やっぱり!お母さん、お酒飲んでたでしょ!」
?「あはははぁ…」
オ「…そこまで緊急事態じゃ無かったのか?」
セ「そうみたいだなー!」
――――…
街で助けた一人のケモ幼女。そして、知らされる真実とは!
次回、『獣』
セ「優しい雨に包まれて、だぞ!」
ありがとうございました。




