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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
白河騒動
15/72

名前

名前


幼女とオニキスが見つめあっている。


?「(じーっ…)…」


オ「…うーん…」


卯「どういう状況だ?」


エ「考え中、だそうですよぉー。」


――――…


龍たちが酔い潰れていた頃、依然として睡蓮の背中から出てこない幼女。

睡蓮が困ったように笑って言う。


蓮「申し訳ございません。どうにも人見知りな娘のようでございます。」


菜「別に構わない。子供というものはそういうものだ。」


卯「それもまた、その子供の個性だ。気にすることはない。」


と、どこからか足音が聞こえてきた。段々と近づいて来る。


卯「やれやれ、やっと来たか。」


と、部屋の前辺りになると、足音が静かになった。しばらくすると音をたてずにドアが開いた。そして、そこから顔をのぞかせるオニキス。


卯「てっきり駆け込んでくるものだと思ったのだがな。」


オ「赤ん坊がいるでしょう?」


周囲を見ながら足音を忍ばせて入ってくる。


卯「そうか、お前は知らないのか。見てみろ、どうやら我らの常識は通用しないようだぞ?」


卯月が顎で幼女を指す。


オ「…まさか、その娘が?」


卯「あぁ、龍の娘だ。」


オ「…生後一日なのに?」


卯「生後一日なのに、だ。人間の子供と同じに考えない方が良い。野性動物の赤ん坊だと思えば納得もできるだろう?」


菜「まあ、かなり大人しい娘だ。静かに入って来たのは正解…ん?」


と、今まで睡蓮の後ろに隠れきりだった幼女がスタスタとオニキスの正面に歩いていった。


蓮「まぁまぁ!やはりオニキスさまは特別なのでございますね。」


睡蓮がとても嬉しそうに笑う。


オ「えっと…こんにちは。」


?「…ん。」


オ「お名前は?」


?「…ん。…ん。」


オニキスが聞くと、幼女はフルフルと首をふってからオニキスを指さす。


オ「んー…名前はまだつけてもらってない?」


?「ん。…ん。」


今度はうなずき、またオニキスを指す。

と、睡蓮がオニキスに近づき、言う。


蓮「オニキスさま。オニキスさまにこの娘の名前をつけていただきたいのです。」


オ「…そういうのは親の仕事なんじゃない?」


いぶかしそうな表情でオニキスが言う。その表情にはほんの少しの怒りが混じっている。


蓮「それでも、です。この娘にこの世への扉を開いたのはオニキスさまなのですから。」


オ「どういう意味かな?」


オニキスの表情が疑問一色になる。


蓮「龍の子は産み落とされただけではまだ産まれたとは言えません。相応しい者が祈りを贈り、子に生きる道を示して、初めて殻を破り、真にこの世に産まれるのです。そして、この娘に祈りを贈ったのはオニキスさま、貴方さまでございます。」


オニキスが龍の卵に贈った『美しく』という祈り。それがこの幼女をこの世に迎えたのだ。


オ「この娘の産まれた理屈はわかった。でも、どうしてそれが『名前をつける』なんてことに?」


睡蓮が微笑む。


蓮「私も龍主さまも、この娘の生きる道を存じ上げません。そして、オニキスさまだけがそれをご存じです。

子の名前は未来を願ってつけるもの。ならば、それをなさるのはオニキスさまだけでございます。」


オ「それでも、だ。これからどんなことになろうとも、この娘にとって一番大きな存在は親である龍と睡蓮さんだ。例え二人が許そうと、俺はそれをないがしろにする気はない。」


キッパリと言い切り、睡蓮を見据みすえるオニキス。

と、幼女がオニキスをつついた。


オ「ん?どうしたんだい?」


?「…ん。ん。」


自分を指さし、オニキスを指さす。


蓮「この娘もそれを望んでいるのです。」


?「ん。」


幼女が睡蓮の言葉にうなずく。


オ「…だけどなぁ…。」


卯「良いではないか。そこまで言っているんだ、やってやれば。

幼女の頼みを断るなど、お前らしくないぞ?」


なおも渋るオニキスに卯月が言う。


オ「でもですね、名前ってのは…」


?「…ん!」


そして、幼女がオニキスの脇腹を強めに突く。


卯「ほら、催促が入ったぞ?」


オ「…俺は止めましたからね?」


そして、オニキスが折れる。渋々、といった様子で言う。


オ「やるんだったら、適当には決めない。もっとこの娘のことを知るべきだ。」


そして、オニキスと幼女が見つめあって座り、冒頭のシーンになる。


――――…


長かった見つめ合いの末、ついにオニキスが口を開いた。


オ「よし、君の名前を考えついた。聞いてくれるか?」


?「ん。」


オ「不満があれば言って。せっかくコミュニケーションができるんだから。」


?「ん。」


オ「いついかなる時も、美しい君に平和があるように。美和、っていうのはどうかな?」


?「ん!」


幼女が大きくうなずく。


オ「良かった。俺は父親になったことはないからね。もちろん自分の子供に名前をつけたこともないから、上手いこと考えられるか…ふぅ。」


美「ん。」


大きく息をはき、椅子にもたれ掛かったオニキスの頭を、美和と名付けられた幼女がポンポンと撫でる。


美「…ん。」


オ「いえいえ、どういたしまして。」


苦笑いしながら美和にいうオニキス。


菜「その娘、美和は『ん。』としか言っていないのだがな?」


オ「何て言うか…分かるんだよ。以心伝心?」


美「ん。」


蓮「それが名付け親というものです。」


睡蓮がニッコリと笑いながら言った。


――――…


蓮「はぁ、そんなことに。申し訳ございません、オニキスさま。どうかお許しください。」


オ「仕方ないさ。初めての子供が産まれた父親だからね。酔って騒いで、周りを巻き込んで。夢の中でも喜んでいるだろうさ。」


しばらくして美和が寝てしまうと、オニキスは龍たちの状態を睡蓮に説明した。


オ「後片付けも守主がやってる。問題ないと思うけど…」


蓮「守主さまには後でお礼を言わなくてはいけませんね。私も少し様子を見て参ります。しばらくこの娘をよろしくお願いいたしますね。」


そう言い残すと、睡蓮は龍の元に向かった。

そして、残されたオニキスたち。

眠る美和を起こさないように静かにオニキスたちは話を始めた。


卯「それで?これからお前はどうする。ここに残るか?」


卯月が聞くと、オニキスは首をふる。


オ「いえ。むしろ、できるだけ早く出たいと思います。昨日まで当たり前にいた人物が突然いなくなる、子供にも良くありません。」


エ「もう手遅れな気もするけどねぇ…。」


エメラルドが呟く。


オ「それでも早ければ早い方が傷は浅い。」


美和をチラリと見て、言葉を続ける。


オ「それに、卯月さんと菜真理も守らなくちゃいけない。美和ちゃんはここにいる限り安全だけど、こっちはそうじゃない。エメラルドだけだと何となく不安だ。」


エ「ちょっとぉ!アタシだってそこらのには負けない程度にはできるんだからねぇ!」


オ「しっ!美和ちゃんが起きるだろ!


エ「…オニキスが悪いのよぉ。」


納得できない、と言いたそうにしつつも静かにするエメラルド。


卯「よし、方針が決まった。準備ができ次第ここを出る。そして、当初の考え通りセンに聞き、川沿いに進む。異論はないな?」


菜「問題ないな。」


オニキスたちが旅を続けることが決まった。


――――…


旅を続けることを決めたオニキス一行。出発する彼らを待っているのは!?


次回『再出発』。


美「…ん。」





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