孵化
遅れました
孵化
卯月たちがオニキスを迎えに河の外に行った。幼女組とブリキ、江は観光にもどった。
龍「何と言おうか…随分と呆気なく終わったものだな。」
蓮「何もなく終わったのでございましたら、良かったではございませんか。私は嬉しゅうございます。」
疲れたような顔をしている龍に、睡蓮が優しく微笑みかける。
蓮「お伝えし忘れていましたが、私たちの子が温められました。」
瞬間、龍が顔を跳ね上げる。その表情は驚愕と歓喜が入り交じったもの。
龍「真か!?誰が…黒き断罪人か!」
蓮「えぇ、あのお方です。
…そうでございます!龍主さま?あのお方に御名前をお聞きしなかったでしょう?ブラックオニキスさま、オニキスさまと仰るそうでございますよ?」
龍「そうであった…うむ、黒き断罪人、いやオニキス殿は我らの救い手であり、我らの娘のもう一人の親である御方。最上の礼をもって感謝申し上げなければな。」
江「渟~、生まれたよ~。」
龍「何!?」
――――…
卯「ふむ、魔物にも家族の概念があったか。」
オ「はい。いやぁ、戦闘中に魔物から父親の気配を感じたんで、もしかしたらとは思ったんですけど。戦闘不能で止めておいてよかったです。」
それを聞いたエメラルドが菜真理に言う。
エ「オニキスって超能力か何かあるのかしらぁ?」
菜「…何かの境地に至ったのではないか?」
エ「ロリコンの境地ぃ?」
と、オニキスを見る。
卯「ふむ…お前がそう言うのであればそうなのだろう。これ以上の追撃はしないこととする。」
オ「ありがとうございます。いやぁ、幼女を悲しませるのは俺の正義に反しますからね!」
正義の味方=幼女の味方、ということである。
――――…
河's「「お帰りなさいませ、オニキスさまご一行さま!」」
卯「む?どうした、お前たち。」
龍の城に戻ると、門番の河童がやけに丁寧になっていた。
河1「龍主さまより最上の礼をもってお出迎えするようにと仰せつかりましたクァ!」
河2「どうぞ中へお入りくださいませクェ!」
菜「うむ。」
若干戸惑いつつも城に入っていく一行。そして、目にしたのは…
龍「我が娘の生誕祭だ!祝え、祝え!」
お祭り騒ぎだった。
中心となって騒いでいる龍に話しかける。
オ「これは何が起きてるんだ?」
龍「おぉ、オニキス殿!さぁ、こちらへ!」
オ「は?お、おい?」
異様にテンションの高い龍に上座に引きずられていくオニキス。
龍「皆の者!我らが英雄が戻ったぞ!」
オ「は?…娘の生誕祭って言ってたよな?ってことは…生まれたのか!?」
龍「おぉ、その通り!さぁ、まずは一杯、さぁさぁ!」
オ「いや、それよりも!会わせろ!まずはその娘に会わせろ!」
龍「いやいや!オニキス殿は主役にも等しい!抜けてもらっては困る!」
オ「いやいや!おっさんに囲まれて喜ぶ趣味は俺には!おい?どこに連れてくんだよ!?幼女がぁああ!」
龍とその配下に胴上げをされ、酒宴の中央に連れ去られるオニキス。強さゆえに下手に力を使うわけにもいかない。オニキスは連れ去られていった。
江「たはは~、男衆はもう出来上がっちゃってるな~。」
どこからともなく現れた江が困ったように笑う。
江「皆はこっちね~。騒ぐのは男衆に任せて、女衆は娘ちゃんを見に行こうか~。」
と、言うと部屋の外に向かって歩き始めた。
それについていく中、センが言う。
セ「緑色のは女なのかー?」
それは世界の闇に包まれている。
――――…
蓮「あぁ、皆様。お帰りなさいませ。」
子供部屋に入ると、睡蓮がいた。
卯「ふむ。お前の娘を見に来たのだが…どこにいる?」
睡蓮は苦笑すると、自分の後ろを振り返る。
蓮「随分と恥ずかしがりやさんなのでございます。ほら、ご挨拶なさい。」
?「ん…」
睡蓮の後ろに隠れていた幼女が、少し顔を出してまた隠れた。
蓮「まぁまぁ…」
卯「仕方ないだろう。生まれたばかりなのだから。むしろ、私たちにとっては生まれたばかりなのに赤ん坊ではないことが驚きだ。」
菜「そうだな。ハ虫類に近いからこそ、ということだろうか?」
そして、睡蓮に隠れている幼女を見てエメラルドが言う。
エ「オニキスがいなくて良かったわぁ。絶対教育に良くないもの。」
それを聞いた睡蓮が、エメラルドに聞く。
蓮「そういえば、オニキスさまはどちらに?」
エ「龍に引っ張られてったわぁ。」
蓮「まぁまぁ…」
と、睡蓮の後ろに隠れていた幼女が首をかしげる。
?「おに…きす…?」
蓮「そう、オニキス、ブラックオニキスさま。貴女のもう一人のお父様です。」
――――…
一方、そのころオニキスは。
オ「くそっ、離せ!酔っ払いども!」
龍「まあまあまあまあ!ほら、ぐぐっと!」
河's「「「オニキスの!ちょっと良いとこ見てみたい!それ、イッキ、イッキイッキ!!」」」
オ「お前たちは学生か!?それに、一気飲みは最悪死ぬからしない!」
河「ノリが悪いですよ~!」
金魚「はっはっは!主役が飲まなくては誰が飲むのですか!」
銀魚「いかにも、いかにも!はっはっは!」
オ「主役は俺じゃない!龍の娘だろ!あと、お前たちが飲んでれば良いだろ!」
守主「オニキスさま、観念なされよ!我らはオニキスさまが酔い潰れるまで酒宴を止める気はありませぬぞ!」
オ「俺を潰してどうする!龍の娘の生誕祭だろ!もっとこう…ハートフルに祝えよ!」
角力「オニキス!相撲をするぞ!おい、喉袋!なにか景気の良い曲を!」
喉袋「任されよ!この喉袋、喉が潰れるまで歌い上げますぞ!」
オ「おい、お前ら!大分酔ってるだろ!」
混沌のただ中にいた。
――――…
数時間後…
オ「まったく…俺は本来ボケだろうに。お前らがボケたら突っ込むしかなくなるだろ。」
守主「いやはや…まさか皆が先に酔い潰れてしまうとは。情けないですな。」
累々《るいるい》と酔っ払いたちが転がる中、立っているのはオニキスと龍軍軍師の守主だけだった。
オ「お前、散々言うわりには全然飲んでなかっただろ?」
守「おや?気付かれてしまいましたかな?
後始末をするものが必要だと思いましてな、多少加減をしていたのです。」
カラカラと笑う守主。と、ふと思い出したように懐から何かを取り出す。
守「本来ならば龍主さま自らお渡しする筈でしたが…これはお約束の品、使った者に龍の力を授ける龍玉です。」
オ「約束の品?」
身に覚えのないオニキス。
守「おや、主さまからお聞きになられていませんか?勝利の暁には力を与える、と…まぁ、そのような約束があったのでございます。
まぁ、我らが持っていてもどうしようもない品ですのでどうぞお受け取りくださいませ。」
オ「これが力を授ける、ねぇ…」
龍玉はピンポン玉ほどの大きさのビー玉のようだった。違うのは、色が定まっていないというところだろうか。シャボン玉の表面のように動かすたびに様々な色を写す。
オ「まあ、貰っておくよ。」
守「使い方は奥方さまがご存じですので、伺ってみてはどうでしょうか。お姫様もそちらにおられるはずです。」
オ「そうだよ!龍の娘ちゃんに会わないと!じゃあな!」
そういうと駆け去っていくオニキス。
守主は少し楽しそうな表情をした。
守「さてさて、お姫様がどのように反応されるか…楽しみです。」
小さく呟くと、酒宴の片付けを始めた。
――――…
ようやく念願の龍の娘に会うオニキス。そこで語られるオニキスの責任とは!?
次回、『名前』
守「叶うならば永遠の平穏を。」
ありがとうございました。
明日は一回休みです。




