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黒い紳士と幼女(+α)たち  作者: 名無アキラ
白河騒動
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知恵

知恵


オニキスと睡蓮が部屋を出ると、部屋の中の雰囲気がガラリと変わった。場所は違えど、3人とも何かを支配する者たち。それが一ヶ所に集まれば政治が行われる。


卯「それで?お前は私たちに何を求める?何の用もなくここまで連れてきたのではないのだろう?」


龍「…その通りだ。まずは現状を説明しよう。聞けば我の願いもわかるだろう。」


――――…


まずはこの河と我の関係を話そう。

この河はこの大陸でもっとも長く、深く、広い河、白河びゃくが、そして我はこの河の主、渟龍ていりゅうという。


我の生まれは森の中だった。食べ物と水、日差し(ひざし)を求めてさ迷った末、一筋の小さな流れに辿たどり着いた。幾星霜もの時を越え、河と我は共に大きくなっていった。我は龍となり、河には百河と名がつけられた。


そしてある時、この大陸を干魃かんばつが襲った。水という水は涸れ、草木は全て干からびた。だが、この河は我の守る河。変わらず水を湛えていた。

人間どもは誰もが水を欲していた。全ての国がこの河をめぐって争い始めた。己らが欲する河を血で染めてな。

我は一時、この河を離れた。睡蓮や白河の水の精、そして我の配下たちを連れてな。我の行く先に水はできた。我がいる限り、白河は涸れぬ。源の水の精は我と共にいるのだから。


我は方々《ほうぼう》に湖を作った。各々に小さな水の精を置いていった。争いが起これば我の元に戻り、収まれば湖に戻るように命じてな。

初めは水の精は忙しそうに行き来を繰り返していた。しかし、それも次第に緩やかになった。人間も流石に悟ったのだ。争えば水を失う、とな。

そして我は一つ一つの湖に行き、言った。『我は白河の渟龍なり。汝らに水を授ける者』とな。我は神になった。平和と水と英知を司る神として崇められ、奉られた。


そして我はばつを訪ねた。ばつは乾きをもたらす者、この大干魃かんばつの原因だ。元は神帝の娘、争いを好む者ではない。我は大陸の一画をばつに与えた。その代わりに乾きをそこ以外から退かせた。そこは今でも砂漠であろう。だが、水の精も置いている。水には困らないだろう。


干魃かんばつは無くなった。だが、我が白河に戻ってみれば、未だ人間は争っていた。あの美しかった我の土地は血で染まり、また血を注がれていた。呆れたことだ。国に戻れば幾らでも水があるというのに。

我は白河の始まりに行き、大水を起こした。愚かな人間とその血を洗うための大水を。兵は溺れ、馬は流され、砦は崩れ、全て海へ流された。

海神は我よりも大きく、強い。その程度では海を染めることもない。


そして、我は白河を元の大河にもどし、白河は平和と英知の象徴とされた。


そしてまた時は流れた。白河をめぐる争いも歴史に埋もれていた。

我も白河もまた大きく強くなった。我は神としての格を上げ、河には神力が溢れた。白河の神力を浴び、賢い者が増えていった。白河の畔は賢者の故郷、そう呼ばれるまでになった。

それは人間だけには留まらない。知恵少なき者、魔物たちにも賢い者が現れた。先に黒き断罪人が滅したのもこれだ。

そして、知恵を持った魔物はこの河を狙った。過去の人間の道を次は魔物が辿ったのだ。しかし、人間と魔物は攻めるものが違った。人間は人間を攻めたが、魔物は我を攻めた。

我は神、魔物の攻めなど些事に過ぎない。しかし、我の配下たちは違った。魔物の流す毒に犯され、病にかかった。そして、我に子供が生まれた。いかに我の子であろうと、子は子。元来弱くできている。

今は我が毒を清めているが、ここからはどうしようもない。我が攻めれば他方が河を攻める。八方塞がりなのだ。


――――…


龍が話すのを止め、一息ついた。

そして菜真理が口を開いた。


菜「つまり、私たちに魔物を倒す手助けをして欲しい、とそういうことか?」


龍が頷く。


龍「いかにも。我が魔物を誅するには同盟者が必要だ。同盟者には裏切らず、そして強い者のみが相応ふさわしい。そして我が見つけたのが黒き断罪人だ。あの強さ、義憤に燃えるあの姿。かの者こそ我が求めていた同盟者だ。

汝らはかの者の主だろう?ならば、配下の者を借り受けるのに主と談をするのは当然であろう。」


卯「なるほど…それが道理だ。」


頷く卯月。しかし、菜真理がぽつりと洩らす。


菜「…個人的には反対したいところだ。」


卯「なーちゃんはオニキスが死ねば死ぬだろうからな。」


菜「なっ、ななな…なにゅを!?」


卯月の返しにどこかで見たような焦り方をする菜真理。そして苦笑いをする龍。


龍「ふむ…汝らの様に中身と外見が異なるものでも、人並みに色恋沙汰があるのだな。

もっとも、あの黒き断罪人なら魔物ごときには負けぬだろう。あの圧倒的な実力は汝らの方が知っているだろう?」


卯「その通り、私が作り上げた強さだ。並みの者では触れることもできないな。」


自慢げに卯月が言う。そして菜真理に耳打ちをする。


卯「(オニキスの改造にはなーちゃんも参加しただろう。自分の力を信じろ。)」


そして菜真理は決断する。


菜「わかった。私も子供ではない。駄々はこねない。オニキスを貸そう。」


龍「おぉ、感謝する。これで我も…」


卯「…それで。」


卯月が龍の言葉を遮る。


卯「見返りはなんだ?まさか、ただでやれとは言わないだろう?」


菜「その通り。私たちもオニキスに慈善事業をさせるつもりはない。相応の見返りがなければオニキスに危険をおかさせるつもりはない。」


龍「無論だ。結果に関わらず、黒き断罪人には力を授けよう。何にせよ、力は金にも時にも勝る資本になる。そうだろう?」


卯月と菜真理は顔を見合わせ、うなづきあう。


卯「よし、それで手を打とう。」


菜「オニキスに相応の見返りがあるのであれば、私も反対はしない。」


そして、オニキスのいないところで、彼の賃貸契約がなされるのであった。


――――…


オ「…そうか、そんなことが…」


一方、オニキスも同じことを睡蓮から聞いていた。

睡蓮が目を伏せる。


蓮「…龍主さまはご苦悩されております。龍主さまの神力のお陰で、この白河の畔には賢い者が多く、発展しております。

しかし、龍主さまはご自身のお力のせいで私たちが害されたとお思いになっております。

私たちがもっと強ければ、と思うばかりでございます。」


そこで、睡蓮は顔を上げる。その目には強い意思の光があった。


蓮「この娘には何の罪もございません。子は弱く、子を守るのは親の勤め。しかし、私にはその力がございません。

ですので、恥を忍んでお願い申し上げます!断罪人さま、私たちにお力をお貸しください!お礼は何でもいたします。私を求められるならば、そういたします。ですので…どうか…!」


声を詰まらせる睡蓮。そして、その肩に手が置かれた。


オ「お母さんがそんなことを言っちゃいけない。

大丈夫、俺はこの娘の為に力を貸す。正義の味方は見返りなんて求めないものだよ。」


蓮「断罪人さま…ありがとうございます…!」


オニキスが更に言う。


オ「それと、断罪人さまってのもやめない?俺はブラックオニキス。オニキスって呼んでくれ。」


オニキスが正義の味方をしている。驚愕だ。


オ「(お礼だったらこの娘と仲良くなれればいいしなぁ…幼女が見れたら十分だよねぇ、うん、)」


そんなこともなかった。


――――…


その頃、オニキスとも卯月、菜真理とも別に、気楽に観光を楽しんでいる者たちがいた。


エ「わぁ!見て見てぇ!スッゴい大きな魚よぉ!」


セ「む!主さまの方がおっきいぞ!」


そしてそこにはあの二人も。


ラ「たしかに湖の主ぐらいになれば、もっと大きいな!」


フ「このお魚食べられるんですか?」


ライとフーである。オニキスが呼び出していた。

そして、それを案内するのは河童かっぱとは違う人外、龍の配下の魚人である。


魚「あのくらいになると味も落ちますギョ。それに、知能もついてきますから、食べにくいですギョ。」


そして、足を進める。


魚「お食べになるならもう少し小ぶりで旬の魚の方が大きいですギョ。」


その先には食堂があるようだ。


エ「魚人が魚をお勧めしてもいいのぉ?」


エメラルドの問いに魚人が苦笑いをする。


魚「私たちと魚は別物ですギョ。人間もところによっては魚を食べますでギョ?」


エ「それもそうねぇ…なんかごめんなさいねぇ?」


魚「いえいえ、これも仕事ですギョ。おきになさらずギョ。」


と、魚人よりも前を歩いていた幼女組がエメラルドを呼ぶ。


ラ「早く来ーい!」


フ「お魚食べるです!」


セ「早く来ないとお前のも食べるぞー!」


ブ『こらこら、走ったら危ないじゃないか。焦らなくても焼かれた魚は逃げようがないのだから。』


オニキスと卯月、菜真理以外は平和であった。


――――…


龍たちから事情を聞いたオニキスと卯月たちは戦闘に備える。そして、現れる敵たち。オニキスが真価を発揮する。


次回、『河辺』


魚「お客人方に龍主さまのご加護がありますようにギョ!」



ライ、フーとセンの違いは純正か土着か。日本人と日系人の違いのようなものだと思ってください。

ありがとうございました。

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