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2.5

***

 

 少しは楽になったが、まだ頭痛と身体のだるさが残っている。それを分かっているのか、少女はゆっくり歩いてくれた。


「ねぇ」


 夏希は歩きながら少女に声を掛けた。


「何だ?」


「名前は何て言うの?」


 雰囲気が良くなったと思ったのに、少女の眉がぴくっと動いた。


「名を尋ねるのは自分の名を言ってから、だろう?」


 あまりの子供っぽくなさに何歳か疑わしくなってきた。見た目は子供、中身は大人とかじゃないだろうか。


「ごめん。……あたしは夏希。苗字は、分かんない。……何か、記憶喪失みたいなんだよね」

 

 言ってから、あはは、と笑う。

 少女は一瞬動きが止まったが、それを隠す様に言った。


「そうか……。そういう人も世の中にはいる。珍しい事じゃない」


「へー……。珍しく、ないんだ……」


 ちょっとビックリ、安心した夏希だった。


「私は、竹内・エール・(タケウチ・エール・アズサ)


「えっ、ハーフなの!?」


「まぁ、一応な」


 どう見ても日本人にしか見えない。日本人の黒髪だし、黒髪ぱっつんの前髪は日本人形を思わせる。ジャパンの雰囲気がバンバンするというのに。

 自分を救ってくれたエールの事がもっと知りたくて、質問を投げかけた。


「ね、「家に着くぞ。ほら、アレだ」」


 何だか話しの変え方が不自然だった。疑問に思ったが、夏希はエールの指差した家を歩きながらじっと見つめた。

 何だか、至って普通の家だ。灰色のコンクリートが多い都市に、エールの家は木製の大きな家だった。煙突などは付いていなく、本当に普通。

 明かりは2つの大きな窓のある、恐らくリビングだろう。そこだけについていた。母親だろうか。

 夏希は身元も分からない。拒まれないか心配になった。

 


 ガチャッ

 


 エールが手をかざすと、ドアのガラスに幾何学模様が現れ、ロックが開いた。

 その光景にビックリしながらも、ゆっくりと家の中に入った。


「お邪魔しまーす……」


 夏希は玄関に入り、目を疑った。


 靴が一つもないのだ。母親の靴はどうしたのだろうか。よほど綺麗好きでなければ、靴の一つか二つはあるはずだ。それとも、両親は仕事中で、エールが電気を付けっぱなしで家を出たのか。分からないことだらけだ。


「ねぇ、エー」


 夏希はエールに質問しかけて、ぴたりと止まった。


 なぜなら玄関に、メイド姿の少女が立っていたから。

 少女は薄い金髪を高い位置でお団子に一つにまとめ、前髪を横にしたヘアスタイル。メイド特有の、服に揃えた白いフリルのカチューシャ。外国人のようで、瞳も綺麗な、澄んだピンク色をしていた。白黒のメイド服については、コスプレをしているのかと思った。長い靴下に黒いスリッパを履いている。

 少女は夏希に向ってにこりと会釈すると、エールに頭を下げた。


「お帰りなさいませ、エール様」


 夏希は愕然としてメイドの少女を凝視した。

 メイドもといお手伝いさんが居るとなると、もしかしてエールはお嬢様なのかもしれない。それに、様付もされていた。そう言われても納得してしまいそうなオーラを、エールは持っている。


「こちらのお客様は……エール様のお友達でございますか?」


 そう聞かれたエールは一瞬止まり、夏希とメイドの少女から目を逸らしながら答えた。



「まぁ、な」

 


 気のせいか、頬が赤みを帯びていたような気がする。

 そう言われ夏希は心が温かくなるのを感じた。口角も上がってしまうばかりだ。ついさっき知り会ったばっかりだというのに、昔からの友達のようだと思った。

 ふと見ると、メイドの少女もエールを見つめながら微笑んでいた。我が子を見つめる母親のようにも見える。 

 エールはメイドの少女に、


「二人分の夕食を作ってくれ、アフティ。頼む」


 メイドの少女は『アフティ』と言うようだ。

 少女は微笑みながらはい、と頷いて明かりのついている部屋に戻っていった。

 エールは履いていた靴を脱ぎ、玄関の上で夏希を待っていてくれている。夏希は喋りながら靴を脱ぎ始めた。


「エールんちってお金持ちなんだなね。メイドさんとか雇ってるし」


 夏希がそう言うと、エールはいつもの無表情で夏希を見た。



「アフティは人間じゃないぞ」



「……え? どう見ても人間でしょ」


 あの少女を人間ではないという方がおかしいではないか。ちゃんと血も通った、血行の良い綺麗な肌だった。目も光があったし、瞬きだってぱちぱちしていた。どこからどう見ても生きてる人間だ。

 夏希は靴をやっと脱ぎ終え、階段を登りだしたエールの背中に付いて行く。


「アフティは自動人型メイドロボット、『AFTY』だ。家の家事を助けたりする」


「ロ……ロボットっ!?」


 あれがロボットだということが信じられなかった。どう見ても生きている人間だったのに。頬だって赤みがあったし、髪だって造り物の様には見えない。瞬きだってしていた。


 階段を登り終わり、Tを左に90度回転した形の廊下の端で止まる。

 驚く夏希に、まぁ、とエールは言葉を続けた。


「世間にあまり広まっていない代物だしな。知らないのは当たり前だ」


「へー……っ」


 世間に広まっていない物を持っている時点でお金持ちだ。夏希は明日肌を触ってみよう、と思ったのだった。

 この縦廊下の奥の壁には、何の変哲の無い時計が掛けられている。その左側にはドアが一つの大きな部屋。縦廊下の真ん中から伸びた横廊下は長く、七つのドアがあった。

 エールは大きな左側部屋をに顔を向けた。


「ここは私の部屋だ。大体はここにいる。何かあったら来い」


「うん……」


 少しまた、だるくなってきた。頭を何かで叩かれているみたいにガンガンする。さっきアフティに夜ご飯を頼んでいたけれど、食べたいという食欲は無かった。

 頭を押さえつけながら頷くと、エールが顔を覗いてきた。


「おい、夏希……大丈夫か? 顔が青ざめてるぞ」


 (……やばい、かも)


 心配そうな声調のエールの声が、どんどん遠ざかっていく様に聞こえる。

 くら、と今までで一番の激痛が走った。



「おいっ、夏希!? 階段に――――――」



 そして、夏希を呼ぶ声は、途中で聞こえなくなった。

 


 この時代は今より未来の時間となっている為、自動人型メイドロボットというのを出してみました。未来感を出す為?

 ちょっと読んでたラノベにちょっと似ちゃってるんです。アフティ。影響受けちゃうんですよ~~~~~~! ご理解頂けたら嬉しいです。嫌な人は悲しいですがUターンを……。

 そして次話ではエールについてちょっと触れていきます。夏希が質問! この、2.5で疑問に思った事を。




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