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2

 少女の姿を見た途端、微かな風が頬を撫でる。なぜだろう。今まで風など吹いていなかったというのに。


 その微かな風で少女の黒髪がさら、と揺れた。暗いせいで少女の顔はよく見えないが、身長からして中学校一、二年だろう。

 少女は、ベンチの背もたれに寄りかかる夏希の前に歩み寄り、静かに問いかけた。


「お前は、ここで何をしているんだ?」


 ……何で見知らぬ人に『お前』って言われなきゃいけないのだろうか。


 敬語を使うのが普通だと、夏希は思う。そのお陰で少女の第一印象は『無礼なやつ』だった。それに、位置的に見下されているような気がして不快感が増した。

 少女から見ると夏希が無視している様に見えたらしく、少女は少し怒り口調で言った。


「おい! 聞いているじゃないか。無視するつもりか?」


「す、すいません……」


 少女はすごく短気のようだった。


「謝るのはいいから早く答えろっ!」


 軽くムカつく少女だが、どこか必死な様子を感じさせる。

 なぜこんなことを聞くのかと疑問に思いながら、自分でも分からないこの現状を言葉にした。


「知らない間にここにいた。だから、あたしにも分からない」


 少女が動揺したのが分かった。さっきまでの威勢はどこへいったのか、今では俯いている。目は確かに地面を見ているけど、地面を通り抜けてどこかちがう所を見ているようだった。


「そっ……それは本当、なのか?」


 少女が弱々しく尋ねる。開かれていた手はいつの間にか握り締められていた。少女の様子の変わり様に夏希は少し動揺してしまった。が、すぐに答えないと少女がうるさくなりそうなので慌てて答えた。


「う、うん……」


 もう敬語じゃないが、あっちだって敬語じゃないのだからいいだろう。

 すると少女は目を伏せ、悲しげに溜息をついた。


「そうか……」


 なぜこの少女はこんなにも、悲しそうな瞳をしているのだろうか。見ていると胸が苦しくなりそうだ。


 ふとした、ズキ、と頭の中心に響く様な痛さに夏希は思わず顔を歪めた。


「あたしが、何かした?」


 夏希がここにいる事で少女に悲しませる事があったのなら、良く分からなくても謝りたかった。だが、少女は「いや」と首を横に振り、白く長い手を夏希に差し出した。


「私の家に来い」


「……え?」


 夏希はぽかん、と間抜けな顔をしていたと思う。

 少女は恥ずかしそうにふいっと顔を横に背けた。暗くて見えなかったけど、きっと頬は赤くなっていただろう。

 急かすように少女は三回ほど、夏希に差し出していた手を揺らした。

 少女が横にしていた顔を前に向けると、口がへの字に曲げられている。


「早く決めろ。早く決めないと私は行くぞ」


 なんて下手くそな誘い方だろう。誘う時にも命令口調だ。


「ぷっ……。いいの?」


 なるだろうとは予想していたが、暗くても分かるくらい少女の顔がみるみるうちに真っ赤になっていった。


「なっ……何だ! 折角人が親切にしてやってるのに笑うとは!」


 もういい、と引こうとした手を夏希がぎゅっと握った。


「あははははっ。じゃあ、お言葉に甘えて泊めてもらうね?」


 夏希のその言葉に少女は返事をしなかった。代わりに「行くぞ」と言い、夏希の手を引いて来た方向へ歩き出した。

 その時、夏希は変化に気がついた。真っ白だった柵の外に、いつの間にか住宅街が立ち並んでいたのだ。おまけに、小さいが人の声、機械の音、水の音などが聞こえた。

 その間にも夏希は少女に手を引かれ、こんな所にあっただろうか。一ヶ所だけ柵のない所があり、そこが出入り口のようだ。そこを抜けると、



「わぁー……」



 夏希は思わず感嘆の声をあげた。一斉に様々な音が耳に飛び込んでくる。うるさいくらいだ。

 光景に見入っている夏希の為に、少女は歩きを止めた。



 高い高層ビルや、ぐるぐるした螺旋階段状の滑り台のようなもの。五段くらいある。そこで走る、不思議な形をした、三角形を丸くしたような形のもの。軽やかに滑っている、と言ったほうが近いかもしれない。その中に人が二人乗っていて、ただ乗っているだけで喋っている。夏希達が立っている真ん前の道路にも、滑るように走っていた。


 それだけでは終わらない。

 L字型のバイクのようなものも走っている。バイクのようだが、タイヤは無いしスマート。        ・・・・・ 

 乗り物はどれも全て、少し浮いていた。


 ここまで見ると機械ばかりだが、自然もある。

 道路の端には緑色の葉が茂った木が立ち並んでいるし、プランターに植えられた植物も至る所にあった。

 そして、見ていて清々しくなる大きな噴水もある。その噴水がこの都市中心の様な感じがした。


「気持ちいいな」


 少女が噴水を見つめながら呟いた。


「だね。ちょっと蒸し暑いから涼しい」


 スゴい光景に気分が上がって分からなかったけど、少し蒸し暑い。青々とした葉が茂っているのを見ると、夏なのだろうか。

 そんな時に大量の、綺麗な水を見るとやはり涼しく、心地良くなる。


 夏希の様子を見ながら、少女が声を掛けた。


「行ってもいいか?」


 あの少女が気を使っている。いや、でもこの少女、根は優しいのかもしれない。口調が特殊で、生意気なように捉えられてしまうのだろう。


「うん!」


 いい笑顔で、大きく頷いた。


エールのキャラが上手く表せたでしょうか?

ちょっと不安です……。


後に出てきますが、(ネタバレ)エールと夏希のいる“時”。

何か見知らぬものが出て来ましたよね。

三角形を丸くした乗り物とか、バイクに似てるけどタイヤがなくてスマートな乗り物とか何だ?! って感じですね。


もう読者にうまく伝わるか不安でしょうがない。

難しいんだよー。

分からなかった方、すいませんごめんなさい。


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